かつては住んでいる地域の美容院で髪を整え、着付けをしてもらう人がほとんどでしたから、
毎年1月15日は、朝から家の前を晴れ着で通る娘さんの姿も見られたものでした。
礼装に緊張し、履きなれない履物に緊張し、カチカチに固まったような…またそれが初々しくて…。
最近は「現場近く」というのが多いみたいで、あまり見られなくなりました。
横浜駅あたりに行ったら、たくさん見られるのでしょうねぇ。
さて、また別のサイトのニュースから…
「成人年齢」が2022年から「18歳」になりますね。
そのことについて、和装業界が「たいへんだ!」と騒いでいるわけです。
「18歳成人式になると、きもの文化の衰退につながりかねない」と。
そのため、全国の自治体に「成人式は20歳でお願い!」と要請しようとしているのですと。
全国の事業者が加盟する「日本きもの連盟」が音頭をとって、
地元の自治体の主張とか教育長とかに、要望書をだしているのだそうです。
ニュースの中では…
昨年秋開催の和装業界関係者が集まる「きものサミット」で、
成人年齢の引き下げによる成人式への対応をめぐって議論になった結果、
今後も「20歳での成人式を継続することを求める」という方針をきめたのだそうです。
理由として…「18歳だと、高校生は制服での参加が予想され、振袖を着る機会が失われる」
「大学受験の直前で開催時期として現実的でない」
ということで、きもの文化の保護・継承のため、引き下げ後も「20歳のお祝いごと」として
20歳で成人式、ということの継続を求める方針を決めたというわけです。
まぁなんといいますか、いろんなことがみえてきますねぇ。
確かに私も、受験や就職を間近に控えた1月は、時期的にねぇ…とは思います。
でもそれは解決策のあることで、国の決まりで「1月の○○日に成人式をやらなければならない」と
いっているわけではないのですから、その日はタダの祝日として、考えればいいわけで、
現実に地方では、みんな都会へ出ているから夏休みに…など、変更している都市もあります。
20歳でやってください、ではなくて「18歳でも受験等落ち着いた時期に」…でいいのではと思います。
またこれは私も着物にかかわっているから言うのですが、月や日はともかくとして、
18歳でするとなると、親の経済的負担が…と思います。今も身近に受験生を持つ親御さんがいますが、
受験校の数プラス「受験料」…1000円2000円の話しではありません。
さらに受かれば受かったで、入学に関するお金がかかります。
これまた1万2万ですむ話しではありません。その上さらに「振袖一式」…となったら大変でしょう。
まぁ男性はスーツの一揃いか、着物レンタル代ですむかもしれませんが、
それとてもこれまた1000円2000円ですまないことです。
一度にアレもコレもの負担がかかることを考えたら、親のほうこそ「20歳でやってよ」ではないかなと。
そのへんを考えたら、業界の問題提起の内容も変わるのではないかと思います。
「着物そろえるのは大変なんです。親のお財布事情も考えてあげてズラしてくださいよ」、って。
「業界」の言い分、「制服参加がきもの文化の衰退」につながる、これってまったく業界の身勝手で、
「今の時代、振袖売れなきゃ商売にならんのよ」という、自分たちの都合をさらけ出してることです。
振袖を着ないと、着物が廃れる…それはほかにするべき努力をしてからの結論でしょうか。
確かに、着物離れが激しく、その動きが止まらない現代では、振袖に力を入れないと
呉服屋が商売上がったり…という事情はよくわかります。
でも、元々きもの離れなんて、今にはじまったことじゃありません。
戦後すぐから始まっているのです。その後の呉服業界は何をしてきたか、何をしてこなかったか…。
それを考えると、なんとも情けない限りです。
攻めの姿勢ではなく守りの体制だけで、努力の方向を狭め、方法を間違え…。
その結果が、職人さんたちの廃業、大手の倒産と、さまざまなことを引き起こしてきました。
確かに、当たり前に着物が着られ、商売が成り立っていた安穏とした日々が、
戦争というバカげたことのために、大波小波が押し寄せるような状況になってしまったことは、
本当に大変なことであったと思います。
一番大変だったのは、戦後やっと盛り返してきたころの呉服屋さんだったでしょう。
昭和30年後半から40年代、実は訪問着等の礼装の売り上げが伸びた時期があります。
つまり「戦争で何もかもなくしたけれど、やっと余裕も出てきた。なくしてしまったものを取り戻そう。
着物もまた買い揃えよう」…の時期だったと思われますが、実はそのとき、
すでに日常的に着物が着られる状況ではなくなっていましたから、売れるのは礼装が多い。
それはとりもなおさず「なんかあったら着物だから、とりあえず訪問着、留袖くらいは」…というキモチ。
更には物価、懐具合もあったわけで、なんでもかんでも買えるわけではない、
だから必要のないものは買わない…で、礼装が爆発的に売れたというわけです。
実際、着物が廃れた原因は、実は消費者側にもあるわけです。
戦後の社会の状況もあり、「敗戦」のあとどっと入ってきた「あめりか~ん」な文化に、
心奪われたのは、ほかでもない消費者です。
これは人に聞いた話しではありますが、あまりにも悲惨な戦争であり、着物など着ている場合ではなかった、
戦争が終わったとたんに「日本が間違っていた」になり、今まで日本の正しいやり方とされていたことが
すべてひっくり返されて、アメリカのやり方にかわっていった…。
よく耳にしました「真っ黒に塗りつぶされた教科書」とか「敵性語」とされた英語がどんとん使われたりとか。
確かに、民主主義のほうが軍隊が支配する社会よりはずっといいです。
それでも、必要以上に「日本の文化」を否定的に見る風潮もあったと聞きます。
そんな中で、着物を生き残らせる工夫…そのへんがねぇ…まぁ書き始めると長くなりますのでやめます。
とにかく、今の「振袖だけが頼みの綱」なんて現状を作り出したのは、
呉服業界にも、われわれの親の年代にも、責任があることです。
誰もそのときは気づかなかったのですね、「なくなるということは『伝わらなくなる』ということ」だと。
いまや着物は、それを好きな人だけのなにやらマニアックな衣装になっていたりします。
「振袖着なけりゃ、日本の文化が衰退する」などという、こじつけみたいなことを本気で言って、
要望書を出す、なんて業界、気をつけないと、あなた方が衰退するんでないの?と思いました。
そう、元々「成人式ってなに?」のところに来ていますよね。
私のころは、イベント化もいまよりはまだマシで
「行ってもおえらいさんたちのオハナシばっかりだからつまらないよ」でした。
いつのまに大騒ぎするイベントになってしまったのでしょうね。
なにやらタレントさんとか歌手とか呼んだり…。
そういう意味では、私もなくてもいいよね、のほうです。
ハタチの自覚と、ご挨拶…はわすれてほしくないんですけどねぇ。
私なんか、戻ったら近くの親戚に「ご挨拶」に
連れて行かれましたよ。今後ともよろしくって。
業界が、イベント化に手を貸してるというのも、きがついてないんですよ。
なんでも「今はそういう時代だから」で、片付けちゃってる…。
この風潮は、もう少し続くのでしょうね。