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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

再び「ゆかた」のお話し

2009-06-14 16:19:04 | 着物・古布
今年のゆかた、って今年つくったわけじゃありません。
この30年で、たまってるんです、いろいろ。
デブることを予想していたわけじゃないんですが、
これはおおいに「太め向き」柄、はっはっは、どぉだっ!?
カオ、すみません、あまりにひどいスッピンなのでぼかしました。
この着方、どこが失敗か…腰紐緩くて、写真撮るまでに前が下がりました。
というより、階段ですわってカメラいじって立ち上がるとき、
裾ふんじまったんです。後ろさがってるでしょ、これだけでも暑苦しいですわ。


        


毎年、今頃になると「ゆかた」について、ブツブツ言っとりまして…。
それもまた、おんなじことばっかり言ってます。
でもやっぱり今の時期になると言いたくなるんです。
本日「長文」…いつもやんけ…すんません。

とりあえず…色柄のカラフルさについては、私も慣れましたねぇ。
確かに最初のころは、色柄そのものがなんだかとにかく派手で洋風、でした。
どれを見ても「トロピカル~」みたいでしたが、
だんだん渋い色や和風柄が出てきましたし、私くらいの年齢でも
「着たいなぁ」と思うようなものが出てきましたので、これはOK?!
これもまた毎年言ってますが、昔のゆかた、大人はみんな白に紺、
たまに黒、紺地に白が急にはやりだした年がありましたね。
柄行も朝顔、桔梗、萩、おみなえしなどの花、うちわ、虫かご、水の流れ、
とにかく「涼しげ」な柄でした。
当たり前といえば当たり前なのですが、当時クーラーなんてものがない時代です。
涼もうと思ったら、タライの水に足突っ込んでるか、
うちわでパタパタやるか、それしかない…。
そんな中で着るゆかたは、やはり「眼にも涼しい」柄であることが
一番自然だったわけですね。

世の中がかわり、生活環境も変わった今、色柄に多様性が出るのは、
コレも当然のことですから、自然な流れだと思います。
でも「多様性」というところを「好きにせい」にしてもらっては困ります。
かわいさ追求が先になって、暑苦しい帯やゴテゴテの飾り、
なぜか「レース」の衿に伊達衿なんてのまであります。
ファッション的に「デザイン」はよくても、見た目暑苦しい…。
「帯」だけ見てかわいかったり、しゃれた飾りだったりしても、
それは「夏向きじゃないなー」なわけです。
クーラーきいてるんだからいいじゃん、でしょうか。
そうではなくて、そもそも「ゆかたってなんなんだ」ということなんですね。

ゆかたの始まりは「湯帷子(ゆかたびら)」、これはよく耳にしますので、
ご存知のかたも多いと思いますが、じゃ湯帷子ってなんでしょう。

ちと脱線して「風呂のおはなし」…
日本の「おふろ」は、始まりは「蒸し風呂」、つまりサウナです。
平安時代にも「湯につかる」おふろはありましたが、
ほとんど「行水」のセカイです。今のようにたっぷりしたバスタブはありません。
そもそも「湯」と「風呂」と「温泉」がひとつのことではありませんでした。
「湯」はまぁ行水のようなもの、「風呂」は今の銭湯のような感じ、
「温泉」は「治療=湯治のためのもの」でしょうか。

元々「風呂」も仏教からきたもので、リラックスのためではなく、
修行や禊といった意味合いをもつものでした。
それがやがては「公衆浴場」の始まりとなりましたが、
一日の体の汚れを落とす…のではなく「施療」のため…、
つまり当時の病院施設ですね。びわや桃の木を植え、その葉を湯に浸して、
その湯で体を洗ったり、腰湯や足湯をしたんでしょうね。
有名な光明皇后が、ライ病患者の体を自ら洗い膿を吸ったという逸話もあります。
元々日本人が最初からみんな家におふろがあって、毎日入って、
なんてことはないわけで、そういう場所を作ることのできるヨユウのあるものが
「蒸し風呂」を作っていたわけです。京都八瀬の「かま風呂」は、
1300年前からあったりします。

身分の高いかたがおふろにお入りになるとき、やけどや怪我防止に湯帷子を着、
後年は、入浴後のバスローブになりました。
これをシモジモの者が使うようになったわけです。
シモジモの方は、内風呂はお金持ちのもつもの、で公衆浴場は、
室町ぐらいからあったとおもいます。(記憶定かでナイ)
やがて江戸に入って「湯屋」が大流行しました。
この湯屋も細かく分けると「サウナ→サウナと足湯→今のお風呂」と、
形を変えています。そしていずれも混浴。そんな中での湯帷子は、
最初は「湯屋」でのエチケット着、今でも露天風呂で水着着用ってありますね。
アレと同じです。「公序良俗に反する」と、アレコレ規制がかかりましたが、
今のような男女別で湯船…になったのは、江戸もだいぶ後期になってからです。
そのころは、ゆかたびらではなく「湯ふんどし」、女は「腰巻」のことです。
このアタリの「下着のお話し」は、過去記事でどうぞ。

で「入浴のために着ていたもの」が「入浴後」つまり風呂上りに着るもの、
に、変化していったわけです。
お風呂のないものは、夏場、庭や井戸端にタライを出して「行水」をしましたが、
そうやってさっぱりしたあとに、ゆかたを着たわけです。
蒸し風呂にしろ、湯屋にしろ、行水にしろ、とにかく湯水を使って
さーっぱりしたあとに身につけるもの、だから「ゆかたびら」の言葉に、
「浴衣」という水浴びの字をあてたのでしょうね。

てなわけでぇ…ゆかたはどこまでいってもゆかた…というのは、
元々は「湯上り着」なのだよ、ということで、あくまでリラックス・ウェア、
日常の暮らしに着る着物より、さらに枠が違うわけです。
ゆかたは日が落ちてから着るもの、と言われるのは、そのためで、
昼間っから風呂に入るヤツはいない、いたらそいつは怠け者…ってことだから。
つまり、今で言うならお風呂上りにパジャマを着るまでのハウスウェアなんです。
そういうものだから「じゅばん」も要らなかったのです。
結局、その後、その利便性や、夏の暑い時期に涼しく着られるということで、
ちょっと外まで…の外出も含むものになっていったわけです。
だったら今の時代にあわせて、どう着ようといいじゃない、と
思うかもしれませんが、そこが「多様性」と「好きにせい」の違いです。

たとえば、いまや年寄りでも穿くGパンですが、
元はゴールドラッシュ時代の「金鉱堀」の労働着、です。
それゆえ、今でもタキシード代わりには着られませんし、
スーツで通勤が当たり前の会社に、はいていくわけにはいきません。
それが「出自」と「経歴」の結果です。
ゆかたも同じで、風呂上りからはじまった襦袢も着ないで羽織れる気楽な着物、
は、どこまでいってもかわりません。
むしろ、そういう点を大切にして着ることが、ゆかたのもともとのミリョクを
最大限発揮できることなのだと思うのです。

簡単に「ゆかたでも襦袢を着れば、普通の着物のように着られます」というのは、
「Gパンでも、ネクタイとブレザーをきればスーツがわりに着られます」と
言っているようなものです。確かにそれで通る場合もあります。
但しそれは、Gパンの場合は、TPOが引っかかりますし、
ゆかたの場合は、その色柄と素材が引っかかります。

ゆかたも木綿の着物ではありますが、いわゆる今「木綿着物」と呼ばれるものとは
また別の「袷にはなりえない木綿着物」です。つまり湯上り着だから。
今、木綿着物、と呼ばれているものは、裏をつけて袷で着ることができます。
元々はそうやって冬は裏をつけて袷にして着ていたものだからです。
絹物やほかの素材が自由に着られるようになって、
木綿は「単」の定番になっただけのことです。
ゆかたは、どこまで行っても単です。そういう「着物」なのです。
だから、襦袢をきたら、タビはいたら…というのは、
ゆかたの中でも「木綿着物」に近いものをもっているもの、に限られます。
それはどんなの?と言われても難しいのですが、
あのトロピカルがそうなることは、まずないと思います。

その辺の感覚は、これはもぉ経験値、ですかねぇ。
竺仙ゆかたの「奥州小紋」なんかは、着物としてもいいなぁと思いますが、
バラにユリに、リボンがひらひら、赤と黒とのだんだん畑ぇみたいな
そんなゆかたなら、やめときなはれ、です。

伊達衿も半幅帯も、それがそうなるまでには、そうなる理由の流れがあります。
この前も書きましたが、ゆっくりと変えていくには納得がありますが、
勝手に急に…は、必ずムリが生じます。
私には女の子がいません。いたらどれだけ毎日「よう聞きや」と、
ありったけのうんちくを伝えたことかと思います。
世の中の着物を本当に経験してきたかたや、ずっとそれを作る立場売る立場の人が
ゆっくりと伝えるために、もーちっと腰すえてもらいたいものと思うのです。

ちなみに「ゆかたにレースたび」…冷え性のかたはクーラー効いてる中、
見逃しましょう。でも、単なるオシャレなら、暑苦しく見えてるということ、
感じてください。
元々ゆかたは素足でゲタ、ですが、そうでなければならない…ではないのです。
昔は、ある程度の身分や裕福な家庭の女性は、一年中タビを履きました。
逆に遊女や芸者は「タビをはかない」がルール、
というより意気地でもありました。
一般の女性にとって、毎日襦袢、着物、でタビをはく暮らしのなかで、
夏のほんの短い間だけ、襦袢もタビも身に着けなくていいゆかたは、
どんなにか開放的だったことでしょうね。
柴田錬三郎氏の「眠狂四郎」の中に、武家の女性が波乱の運命の中で、
ある日ゆかたに素足にゲタででかける、というくだりがあります。
長く「日見ず」できた足は真っ白で、その爪につけた爪紅が鮮やか…、
そんな描写だったと思います。読むだけで涼しげです。

いつでも何でもあり、夏でもいくらでも涼しくすごせる。
今はそんな時代です。ゆかたは日が落ちてから着るもの、と言ったって、
今、歩いていける範囲で、どこでも盛大なお祭りや花火大会をやるわけじゃない、
いやでもまだ明るいうちから、電車に乗っていかなければならない…。
そんなことも「時代の流れ」、だから私は、明るいうちから着るのも、
仕方ないことだと思っていまです。
ただ、普通に考えれば、もし地元の、家のすぐそばのお宮さんで
夏祭りがあったら、ちょっと歩いた先の川べりで花火大会があったら、
それに洋服で出かけるとしたら、アナタはスーツやドレスを着て行きますか?
Tシャツに短パン?おにーちゃんおとうさんははジャージかもしれません。
ゆかたは「そのくらいのレベル」なのです。
それがゆかたの本来のミリョク、なんですね。
だから「ゴテゴテするだけ、暑苦しいよ」と思うのですよ。

あっさり着る、あっさりを楽しむ、それができたらねぇ、いい女…。


おまけ画像、セルフをかけたのに、たまたま出窓の外で何か音がしたので、
つい見てしまいました。子供が缶を蹴っ飛ばして遊んでました。
すごい「油断画像」です。後ろから見るとこーなんだー…、
で、ちっとゴマカシの「モノクロ加工」です。
みなさんもこんな感じで見られていること、イシキしましょーねぇ。


          











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14 コメント

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Unknown (陽花)
2009-06-14 21:04:16
とんぼ様、少しほっそりされました?
浴衣の本来の着方をこれだけ分かりやすく
教えてくれる所はありませんよ。
私も浴衣にレースや飾りをゴテゴテ付けて
仮装行列に出るんじゃあるまいしと内心
思っていたのでスッキリしました。
返信する
「浴衣」と「着物」の違い (登夢)
2009-06-15 00:49:44
「浴衣」と「着物」の違いがわかってないのだと思います。

そしてそれを煽っているのがきもの業界そのもの、ってのが嘆かわしい・・・

私は「なんでもあり」は破滅への道だと思います。

よく末期症状の患者に「もう好きなことやらせてください」と医者が言うのと同じ。

そうなったら、もうお終い・・・

現に今年はついに浴衣ブームも下火で、どこも売り場縮小だそうです。

返信する
Unknown (りのりの)
2009-06-15 01:58:10
浴衣を着てみようかなと思わせてくれました。
夕方犬の散歩の後、ひとっぷろ浴びて浴衣に着替える・・・いいですよね。

私も「なんでもあり」は破滅への道だと思ってます。登夢さんの
>よく末期症状の患者に「もう好きなことやらせてください」と医者が言うのと同じ。
このたとえはちょいブラックでとてもわかりやすいですね。

返信する
悩みの反物 (やのめ)
2009-06-15 02:38:14
こんばんは
浴衣と木綿着物の境界線、私も今悩んでいる反物があるのです。
綿紬の生地に、長板染めで、ボタン唐草を染めてある反物、藍染ではなく、多色染め、というのかな?です。もともと安く売られていたものを帯にでも、と思って購入したものの、やっぱりもったいないから着物にしようかと考え直しました。
が、これっていつどこで着られる着物になるんだろうか?ちょっと上等な浴衣程度にあたるならば夏に半襟付きで?それとも今の単の時期にいいんだろうか?とりあえず仕立ててみてから考える?と、反物を前に、首をひねる毎日です。
ところで、先日の襦袢の話ですが。
年齢とともに体型が変わって前の合わせがはだけてくるのは、襟の形の問題というよりは、身幅そのものの問題かと思います。きものの身幅を広くされた場合には、同じだけ、襦袢の身幅も広げるとよいと思います。
もう、広くされてらしたらごめんなさい。襟を直されるとよいのかも・・・
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ガイジン化 (りら)
2009-06-15 08:52:26
本日、道端で会ったアメリカ人に「素敵な浴衣ですねぇ」と言われ、思わず「これは浴衣じゃ無いんですのよ。」と講釈垂れてしまいました。
アメリカ白人が浴衣と着物の違いが判らないのは当たり前ですが、日本人で分からないというのは、やっぱりなんか悲しい気がします。

お稽古事の浴衣浚いでは皆浴衣に足袋着用でした。
それはそれで、着慣れて着慣れて着慣れ尽くした方々ですから、何の違和感もなくすっと受け入れられる姿でした。
でも、お祭りに、花火見にの浴衣に足袋だの半襟だのって、何より本人が暑いでしょうにねぇ。
そういうもんだと思っちゃうと平気なのでしょうか?
返信する
Unknown (ゆん)
2009-06-15 10:05:18
おはようございます。

 いいですね、浴衣姿…。着物や浴衣が着たくなりました~~


 先日の「つけ下げ柄」のお話、ありがとうございました。
 とにかく、「わかんない奴には、売ってしまえ!」と、「わかんないけど、かわいいから いいじゃん!」…の一時的なノリのお商売は 後始末が大変だと思います…。

 振袖浴衣ってのも、なんとかしてください

 そもそも「出先に合わせて 着替える」という感覚がなくなってしまったのが大問題なんだろうな・という気がします。
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おひさしぶりです。 (2猫の母)
2009-06-15 18:11:12
おひさしぶりです。昨今の浴衣事情はすごいものがありますよね。一度着たらインパクトありすぎで2度目は着たくないって感じです。
 色の洪水のような浴衣の中で色を抑えしかもキリっと結ばれた帯を見るとカッチョエエ!と思うのはおばさんの証しでしょうか?
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Unknown (とんぼ)
2009-06-15 22:45:14
陽花様
ほっそり…見えるだけですぅ~~!
ピラピラのゴテゴテ、私もあまり
見たくないですねぇ、なんかため息でます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-06-15 22:47:50
登夢様
カゲキな表現ではありますが、
ほんとに危ない状況です。
「きもの業界」と、ひとくくりに
言ってしまうのはちと無理がありますが、
結局「大手」といわれるところが振り回して
こんなになったわけで…。
ただ、着物離れしたこちらにも、
ある種の原因もあるわけです。
私の年代…だからゴメンナサイなんです。
難しい問題です。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-06-15 22:49:11
りのりの様
ほんとにブラックではあっても、
はははと笑ってられませんね。
ナントカしなければと思う人が、
もう少し増えてくれると良いんですが…。
と言ってる私もゴマメの歯軋りなんですけどね。
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