ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

サイズの合わない着物・・

2006-08-13 20:43:44 | 着物・古布

夏といえば花火・・土日の開催が多いですから、
今日もどこかでやっているでしょう。
本日の一枚、花火に見立てて「菊」柄のはぎれです。

さて、自分の着物を最初から仕立てるなら問題はないのですが、
アンティークやリサイクルの着物、或いはレディメイドの着物を買う場合は、
サイズについてのことをいろいろチェックする必要があります。
シミやヨゴレは今日はこちらに置いといて(へぃ やっこらしょっと・・)
今日はサイズに関すること、です。

実はこれについては以前に書いているので「再放送」になっちゃいますから、
以前お読みになったかたはダブる部分はスルーしてください。

身に合う着物かどうか、まずは身丈、これは着たときの長さ、
次は身幅、着たときの横幅、あとチェックは裄丈、袖丈・・です。
身丈については、長くなりますので後にして、まずは身幅について。
着物はかなり融通が利きますから、よほど大きな着物小さな着物でなければ、
それと本人が特別大小のない人なら、だいたいは合うことが多いのですが、
それでもできるだけ「身にあった幅」のほうがいいのは当然です。
特にアンティーク着物の場合、昔は小柄な人が多いですから・・。
数字的なことを覚えていれば一番いいのですが、いつもメジャーを
持ち歩くわけではありません。それでカンタンな「許容範囲」の見方ですが、
これは着物を着るときの約束事・・でもあります。

着物をまとい手を通して、まずは右の前を先に左に巻き込み、それから
左の前を右に持ってきます。実はここで間違える人がいるのです。
ちょっとやってみて大きいとあら大きいわ・・と右を更に奥に巻き込む、
当然着物は右にひっぱられ、左の前もちゃんと納まる・・ように見えるのですが、
実はこれではきちんとわかりません。
着物を着たときは、左の脇が太ももの真横に来る・・と言うのがお約束。
右側が足りても足りなくても、とにかく左のモモの真横に脇線・・です。
これで左の前を重ねてみて、ちゃんと右までくるようならOK範囲です。
あんまりいきすぎて、右の脇まで届いてしまうのは身幅が大きすぎ、
逆に右足の真ん中あたりまでしかこない・・なんてのは見幅が小さい・・です。
着物を着たとき
背縫いは背中の真ん中、左脇縫いは左モモの真ん中
この2点が基本です。背縫いの腰から下と、右の脇線は、
どちらかに寄っていてもかまいません。
とまぁこれが基本なのですが、ほんの少しなのよねぇ・・というときは、
左脇線を少し前後にずらしてみて、それでいければヨシとする・・、
これはその人の気持ちです。

ちなみに、大きすぎる着物は巻き込みが多くなり着物が全体的に前に来ますから、
前身ごろがダブリ加減になります。帯を締めるとき、全体的に、
余り部分を脇でたたみこんでしまう・・これがコツです。
逆に身幅が狭いときは、左身頃を少し前に持ってくるようにしますが、
あまりちいさいものを無理に着ると、まず胸元が重ねの浅さのために
広がりやすくなります。もうひとつは、座ったときに前がはだけやすくなります。
着て、一度しゃがんで、前が浮いて開いてしまう場合はあきらめましょう。
もちろん「縫い直し」の手間をかければ、解消する確立は高いです。

次に身に合わない着物で一番目立つのは「裄丈」です。
つまり裄が短いと「ツンツルテン着物」になります。
長すぎるより短いほうが、より「目立ち」ます。
こればっかりは「裄だし」をしないとどうにもなりません。
まぁわずかでしたら、できるだけ手を引っ込め気味に??
「裄だし」の作業は、それほどむずかしいことではありません。
和裁ができなくても「針仕事」ができればOKです。
筋消しなどのテクニックは必要ですが、袷でも単でも要はやる気と努力!

余談ですが「袖付け」、リサイクル着物でも最近のものはほとんどOKですが、
アンティーク着物の、特に戦前のものは袖付けが短いものがあります。
これは、大正から昭和初期にかけて、既婚者でも帯を胸高に締めた時期があり、
帯を高く締めるということは、袖付けが下まであるとまずいわけですね。
それで袖付けの寸法が短く、今風に帯を締めると身八ッ口がヤケに大きく開いて、
中が見えそうになります。あまり短い場合は少し縫ったほうがいいでしょう。

袖丈については、昔のものほど「長め」です。シブい紬や小紋でも、
つまり「既婚者」が着ていただろうと思われるものでも、長いものがあります。
最近では、振袖以外はだいたい50センチ少々というのが多いので、
極端に長くなければいいのですが、大切なのは「襦袢の袖の長さ」と合うこと、
袖の「振り」の部分は、中の襦袢が見えるところです。
そこで袖の中で襦袢が短く浮いていたり、逆に長くて底で折れていたり・・。
これはいいとかわるいとかではなくて「見栄えが悪い」のです。

人間の眼と言うものはフシギなもので「当たり前」のものは
あまり「見え」ていません。意識しないのですね。
たとえば男性のスーツの袖口から見える「ワイシャツのカフス部分」、
当たり前の寸法だと、全体的に違和感ありませんから、
カフスがシングルだったかダブルだったかも覚えていなかったりします。
ところが、スーツの袖口からワイシャツのカフスが丸々見えていたりすると、
「あら、袖長すぎじゃない?」とか「スーツ借り物?」なんてすぐ気がつきます。
着物の袖も同じことで、ちゃんとあってれば何も目立たないのに、
長さが違うと「あら襦袢の袖ちいさいんだ・・」なんて眼がいっちゃう・・。
本人が気にならなければそれでもいいんですが、やっぱりそれは
着物を着る上での「スキ」になってしまう気がします。
うそつき襦袢の袖丈を変えたものを、何枚か用意して「この着物にはこれ」と
分類しておくと便利です。本来絹物はちゃんと絹の襦袢を着る・・
と言うのが着物のルールですけれど(夏物は別)、礼装でなければ、
「着物をラクに着る工夫」としてかまわないと、私は思います。
うそつきなら作るのも楽ですから、古い襦袢を壊して作るのも
いいんじゃないでしょうか。昔は襦袢も「袷」でしたが、
最近は暖房も完備しているし、単でも胴貫きでもうそつきでも、
着心地よく着られれば普段着物は「なんでもアリ」で着たいものです。
つまり「本来はこうだけど、私はこの方がラクだから」と
自分でわかっていればいいと思うのです。

この「袖付け」をちょっと長くする、とか「裄丈」を長くする。というのは
和裁ができなくても、とりあえず「縫うこと」ができれば、自分でも直せます。
袷の場合はちょっとたいへんですが、単ならまずゆかたで練習して
「直し」でできるようにすると、合わないからあきらめる・・というのが
少しはへりますね。この「直し」については、長くなりますから、
また別の日に・・と致します。

さて、最後に残った「身丈」ですが適度な「おはしょり」の分が必要です。
適度なおはしょりをプラスした長さにならない場合、
これも「縫い直す」のが一番いいのですが、今回は本格的な和縫のほうは、
ちょっとこっちへ置いといて(へぃ やっこらしょっと・・・)
カンタンな方法と言うお話です。
まず「身丈」が長い場合、これは適度なおはしょりをして余る分を
帯の下にたたみこんでしまうというのがひとつ。
これはかなり長い場合ですが、図のように、まず着物の丈を合わせて腰紐で結び、
ちょうどいいおはしょりの丈を決めてそこでもう一本、紐を結びます。
次に胸元の押さえに紐を結びます。
その間に残るのが「余分」、これをうまく畳み込んだり寄せたりするわけですね。





この方法は、着るたびにやらなきゃなりません。これが面倒な場合は、
子供の「揚げ」と同じように、つまんで縫ってしまうこと、です。
これはできれば誰かに手伝ってもらったほうが無難です。
上の方法で着てみて余る分、これを平らにつまんで待ち針でとめていきます。
脱いで待ち針どおりに縫ってとめてしまう・・細かく縫う必要はありません。
「止め」ですからザクザクの粗い縫い目で十分です。
ハンガーにぶらさげた状態は人に見せられませんが、便利です。
気をつけるのは、必ず帯で隠れるあたりをつまむこと。
特に衿のところは衣紋を抜くので上に持ち上がります。
帯の上からつまんだところが見えないように、
衿の近辺は「つまむ場所」に気をつけてください。

逆に短い場合、ギリギリの方法として、腰紐を結ぶ位置を下げる・・
と言う方法があります。個人的にはあまりオススメじゃありません。
特に今の若いひとはスタイルがよくて腰のくびれが大きいですから、
いくら下に締めても、腰紐があがってきやすいからです。
短い場合で「縫って直す」場合は、布に余裕がある場合は結局仕立て直しです。
もし丈を出す余裕がない場合は真ん中に布を足す・・と言う方法もあります。
これも昔の人の知恵です。これもプロに頼んだほうが無難ですが、
つまり、帯で隠れる部分に別布を足して丈を伸ばすわけです。
そうまでしなくても・・というなら、逆に短くして「対丈」で着る・・、
これが最終手段ですね。
「対丈の着物」、これについては別に書きたいと思います。
明日書けたら・・・。

というわけで、ずいぶん長くなっちゃいました。






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8 コメント

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Unknown (とんぼ)
2006-08-15 17:02:47
百福様

母も裁縫は当たり前・・の年代ですから、私が初めて浴衣を縫ったとき「むこうとこっちがくっついてるし、ええんとちゃうか」・・ほめ言葉とは思えん・・。でも、何かひとつできるとうれしいですよね。

「サッカー」ですか、わざわざお調べくださってありがとうございました。サラサラと気持ちのよい生地ですが・・汗かくこと考えるときられなーい!!さくらこ様にも、お礼させていただきます。
返信する
Unknown (百福)
2006-08-15 10:41:47
この場をお借りして。

以前、単の童子が網を曳いている柄の訪問着で、東雲のようだけど生地が何かわからないと仰っていたのがありましたね。さくらこさんが西陣の問屋さんや白生地やさん、悉皆さんなどに聞いて調べてくださいました。昔「サッカー」と呼ばれていた生地だそうです。洋装生地のサッカーととても似ていますね。同じ織組織なんでしょかね。



返信する
Unknown (百福)
2006-08-15 10:28:54
ほんと、やってみるものですね。考えてみたら、母は、単から袷にする位のことは、一晩でやってたような気がします。裄と身丈直しできたんだよ!と報告したら、よかったねえカラカラと笑われました。新しく仕立てたものよりも、なんだかずっと、ずっと嬉しかったです。
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Unknown (とんぼ)
2006-08-14 20:55:24
りこ様

昔の人って細身多いですって自分がデブなのか・・。

あんまり合わないと着づらいし、

見た目もってことになっちゃいますもんね。

でも、思い出の詰まった着物、

ぜひ、直していっぱいきてください。

返信する
Unknown (りこ)
2006-08-14 20:22:00
随分前に亡くなった祖母の着物をもらいました。昔の人にしては身長がありまして、どうにか身丈は足りるので、裄だしして着てみましたが、いまひとつ着にくいと思っていました。



犯人は、身幅でしたー。細い人だったので。着付けの先生はちょいと工夫して着るのよーと仰いましたが、やはり直して着た方がいいなぁと思いました。



仰るとおり、宛ててみて、夏休みの課題として直すことに致します。
返信する
Unknown (とんぼ)
2006-08-14 11:03:59
陽花 様

袖丈の直しは、りくつはカンタンなんですが、

作業は面倒ですよね。私も「目分量」なんてやって

間違えたり、ひっくり返しているうちに、

どこにヘラつけたかわからなくなっちゃったり。

もとがいいかげんなもんで、ヒトの倍かかります。



Fujipi様

実際には普段着が多かったですから、

着物人口が少ない今、見ませんねぇ。

母は、私に教えておきながら、

自分は嫌いで着ていませんでした。

返信する
対丈 (Fujipi)
2006-08-14 08:47:41
 「対丈の着付け」、話には聞くのですが実際にそうやって着ている人を見たことがありません。

 記事UP,楽しみにしてます。
返信する
Unknown (陽花)
2006-08-13 22:07:39
別布を足した着物は1枚も持っていませんが

袖丈は若い頃の着物、1尺5寸のがあったので

1尺3寸に直しました。袷の場合振りを解くまでに

袖丈の寸法のヘラと合印のヘラをしてから解かないと

大変だったような記憶があります。
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