ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

ゆかたの季節

2011-06-28 17:51:41 | 着物・古布

 

まだ6月、梅雨明けもしてはいませんが、蒸し暑い日は、夕方ちょっと風がふいてきたりすると

あっゆかたでそぞろ歩きなんていいやねぇ…(と言いながら、半パンツだったりしますが)と、

季節の移ろいを思います。

今年もまた「バラがこってり」なんていう浴衣を見るんでしょうなぁ。

 

ゆかたは昔からのものがたまって(ためて?)ますので、今年は仕立てるつもりはないんですが、

反物のままおいてあるものがあります。

トップ写真は「竺仙」の「松煙染め」です。樹脂分の多い、つまり松ヤニってものですね、

その松を燃やして煤にしたものを「豆汁(ごじる)」に混ぜて、染めたもの。

地色がこんな感じの茶味を持ちます。

 

       

 

こちらは、江戸ゆかた「六歌仙」です。こちらは綿紅梅。

 

    

 

柄の部分アップです。

 

        

 

綿紅梅は、もちろん糸の選別によって、出来上がりも違います。これは薄くてハリがあります。

裏から見るとこんなです。

 

        

 

水をくぐればくくるほど、ケバはなくなりしなやかになっていきます。

この江戸ゆかたの染元「高常」さんは、あと息子さんの代でおわりかな…です。

江戸時代からの30000枚の型紙から、染めてもらえるところです。

注文すると「これからとんぼ様の江戸ゆかたを染させていただきます」とメールがきます。

時間はかかりますが、うれしいものですよ。オリジナルみたいで。

二反とも年齢がいっても着られる色柄ですから、仕立てをあわてることはないのですが、

最近の安いゆかたを見ていると、ゆかたを買い求める理由や状況もずいぶん変わったものだと思います。

 

ゆかたというのは、着古したら家着(外には出ずに日中から家で着る)、更に着古したら寝巻き、

更に古くなればオムツ…と、最後まで使い切ることを当たり前としていました。これはほかの着物とかわりません。

でも、今のお若い方の場合は「今年の一枚」といいますか、まずは「オシャレ着」のTシャツ感覚で、

ワンシーズン着たらおしまい…みたいな。まぁ実際には2~3年はきるのかもしれませんが、

そのあとは誰かに上げるか捨てるか…。

だいたい既製品のゆかたの場合はミシン縫いですし、解いてみるとカギおくみになっていたり、衿もカットしてあって、

つなぎ合わせても反物にはもどらないものが多いようです。

つまり、全く繰り回しは考えられていないわけです。

日常の生活も、着古しのゆかたが子供のじんべになったり、おとうちゃんの汗取りになったり…

ましてやオムツにするなどありえないのが現状です。

「そうしないから、そう作らない」なんですね。でも、いつも思うのですが、最初に「そうしないから、そう作らない」で

そのままいったら、いずれ高い浴衣なんてなくなります。それは「ゆかた」というものの品質をおとすことにもなり、

伝統的なゆかたの染めの技法も存続が細っていくことになります。

別に安いゆかたを作ってはいけないというのではなく、こういうものとこういうものがある、ということを、

もっと知ってほしいと思うのです。お金が気になる若いうち、ゆかたもファッションのひとつ…

そんなTシャツ感覚の時期があってもいいけれど、ほんとは黒地にバラとリボンのペラペラ浴衣なんて、

洋服でいえばメーカーもわからないような大量生産品なわけです。

それの是非をいうのではなく、それでいい時期もあるけれど、

洋服ならブランドにこだわったりあこがれたりしてますよね。

着物の場合のブランドは、洋服とはちょっと意味が違いますが、

少しおとなになったら、そういう意味でのホンモノのよさも知るべきだと思います。

高いと思うかもしれませんが、高くしたのは実は私たちです。需要があれば量は増え、

結果的に安くなるはずなんです。絹を入れた紅梅のゆかたなどは、今20万位します。

たかがゆかたに20万もだすなんて、というのが、今の庶民の感覚です。

私もそこまではしないと思いますが、3~4万の浴衣、一度くらい着てみたいもの、

そういう感覚も同時に育てていけないものかと思うのです。

教えないことは伝わりません。これもあるけど、こういうのもね、ということを、

ゆかたが身近にあるヒトが、着たいという人に、教えて伝えていかないと…と思うのです。

 

まだまだ「ゆかたはやっぱり藍よね」とか「やっぱり紺白がゆかたらしいよね」という声はたくさん聞かれますが、

今、黒地にバラとリボンのゆかたを1年着たら終り…と着ている人たちが、そのまま30代40代になったとき…

それを考えて「ゆかたを育てる」ことをしないと…この江戸ゆかたも、100年先には

博物館に行かないと見られない…なんてことになっちゃったりしないかと…。

いつもいいます「いいものを見ましょう」。買わなくても買えなくても「ある」ということを知って、

あるものを手に入れるという「ステキな欲」を持ってほしいものだと思うのです。

 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (陽花)
2011-06-28 20:19:20
どちらも素敵なゆかた地ですね。
ゆかた地もピンキリですね~
こういうよい物を着ると、ペラペラは
着られなくなりますね。
だてにお値段が高いだけじゃなく、身に着けて
みて分かるものってありますよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-06-29 00:37:22
陽花様

ありがとうございます。
安いゆかたは、やっぱり「それなり」で、
暑さといいますか、それが違います。
それとあのペラペラ感はねぇ…
いかんともしがたいです。
私は30代の大柄のゆかたをやっとウチ着にして、
最近は母から譲られたのを着ますが、やはり長く持つものって、
身に着けるとわかりますね。
返信する
浴衣地 ()
2011-06-29 23:37:13
高常さんの浴衣地
欲しいなぁと思っているのですが
反物幅が38CMとの事。
男物でも同じ幅の様で
私の様に裄が70CM欲しいとなると
ぎりぎり?
でも娘達は私よりもっと裄が長いから・・・
なんて考えたら決めかねて
思案中なのです
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-06-30 19:51:17
惠様

今、40センチもありますが、めったにみませんねぇ。
最近のお若い方は、体格いいんですから、
もっとたくさん出てもいいと思うんですけどねぇ。
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