ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

羽裏のリメイク

2010-05-10 21:33:10 | 着物・古布
先日来、羽裏に埋もれております…ははは。
写真は、実家のジャスミンです。いつもデジカメを忘れる…。

羽裏はいつの間にか溜まってしまいました。
自分の好きなものはもちろんなんですが、以前は手芸材料としてほしい、
というお客様もいらしたものですから、
それもあって自身の好みじゃないけど…もあるわけです。
そういうかたのお話を伺うと、素材感を生かしてブラウスやスカーフ…
というリメイクが多いように思いました。
中には、おにーさんが、皮ジャンやGジャンの背中にくっつける…というのもありまして。
そういう時はやっぱり「龍」とか「鷹」とかですよねぇ…河童だっりたした日にゃ…。

とまぁ、洋風リメイクはそんな感じなのですが、着物好きとしては、やはり和装で。
で、よく「帯にしたら…」というようなことをカンタンに書いてきたのですが、
着物を始めたばかりの方などは、どうやるのかしら…と思われるかも…。
というわけで、今日は、羽裏を素材にして帯に繰り回しをすることについて…。

まず素材ですが、羽裏は絹物の場合は「羽二重」か「緞子」が一般的です。
羽二重は撚りのない糸を使って織ります。
つやがあってしなやかで、薄手に仕上がりますので、羽裏や胴裏、襦袢、紋付など
広い用途に使われますが、用途別にその生地の厚みなどは当然変わります。
白生地に織り上げて、あとから染めて柄をつけます。

緞子は、カンタンな説明ですませますが、羽二重と大きく違うところは、
「諸撚り(もろより)」という撚った糸を経に使うことと、
糸から染めて、織りで柄を出すこと、です。
繻子織りにしますので、表側がつややかになります。

さて、帯にしようというときのポイントですが…まず、羽二重の場合は素材の薄さです。
これは、品物によっても当然いろいろで、しっかりとしたものもあれば、
ペランペランでむこうが透けて見えるものまであります。
どちらにしても普通の着尺などと比べれば、当然薄いですから、
そのままでは頼りないですし、帯にするには裏になる生地や、帯芯との相性もあります。
あまりに薄いと表地だけが浮いたりヨレたりしてしまいますから、
そういうときは、裏に布製の一番薄手の接着芯を貼って使うといいです。

また元々の素材の良し悪しと同時に「古さ」による弱りというのも考慮しなければなりません。
柄部分はなんとか大丈夫でも端の方の折ったところや縫い目部分が切れたり
すれたりしていることもありますし、特に真ん中の背縫いにあたるところは、
表地に止めてありますから、動かないままこすれて部分的に弱っていることもあります。
また広幅のもの(倍のサイズ)の羽裏を使うときは、真ん中をわざわざつまんで
背縫いと同じように縫う場合があります。
その場合は縫い目部分に弱りがきていることもあります。
柄にまぎれてわずかなヒケや小穴、シミななどを見落とすこともありますから、
明るい方に向けて裏側から確かめるなど、羽裏全体を良く見て、
傷んでいるところをよくチェックします。

緞子の場合は「繻子織り」であることで摩擦に弱く、部分的に擦り切れていたりします。
たとえばこちらなどがそうですが、柄はきれいなのに折り返して縫い合わせてあった部分、
柄の織りで、厚くなっているところと柄のない薄手の境目部分などが傷んでいます。


   


こんな感じになっていると、右側の何もないところは引っ張ってもなんともないのに、
左側の経が切れてしまったアタリは、ちょっと引いただけでビリッといきます。


   


こんなふうに、同じ一枚の中でもいろいろなんですね。
結局この柄は、使えるところだけに区切ってみると、真ん中の絵だけになりました。


         


まずは使える状態かどうか、使えるとしたらどれくらいの範囲か…を把握します。

次に羽二重の染め柄の場合には「総柄」と「額絵」があります。
総柄は着物でいうと小紋柄、これは背縫いで縫い合わせますので、
ほとんどが普通の反物のように反幅で必要な長さ分で売られます。
こんな感じ。これで身頃二枚と袖分。
(すみません、色が濃すぎてわかりづらいので、赤い線を入れましたが、
 下に身頃を二枚突合せ、上に袖分を畳んでおいてあります)


   


額絵は「額裏」とも言います。
文字通り「背中部分をキャンバスに見立てて一枚の絵」になっているものです。
絵ですから真ん中は切られておらず、だいたいですが反幅の二枚分の幅で売られます。

羽二重も緞子も、通常「袖裏」には同じものが使われます。
羽二重で総柄の時は、袖裏も総柄(上の写真)、
額絵の時はそのままの無地か、額絵のバックと同じ柄、
緞子の場合は、額絵の地の色と同じで無地…がほとんどです。

この場合、きれいだと思ってよく見たらシミがある…というのがよくあります。
男物は袂にモノを入れても、女物の袖のようにあいていませんから落ちません。
それでポケット代わりにつかうからでしょうか、なんでこんなところに、
と思う大きなシミがあったりします。また袖口は袖口布で守られてきれいなのに、
袖山アタリの袖付け部分がいたんでいることがあります。

こんなふうに、解いてみて、調べてみて、並べてみて
その中で「使える部分がどれくらいあるか」を見るわけですね。
羽裏はだいたいこんな感じの大きさです。
多少の差がありますので、大体の大きさと思ってください。





これにあてはめて、使えるところがどれくらいあるかを見ればいいわけです。  
さて、いよいよ帯にすることを考えると…。
まず普通の帯(昼夜とか名古屋とか)にするか作り帯にするか、です。
どちらにしてもコレだけでは帯になりませんから「あわせる布」がいります。
方法としては、これはどう作るかでも違いますが、
古い帯を土台に使う、帯裏と、合わせる布を別に用意する、です。
ここで別布として利用できるのが、羽裏のついていた「黒紋付」本体です。
もちろん、状態によりますから、あまりに汚かったり、色褪せなどの難があったり、
また布のチカラがなくなったりしていたらダメですが…。
状態がよければ、しっかりした芯を入れれば十分使えます。
もちろんツギハギになりますが…。

たとえば、羽裏の傷みが多くて、部分的にしか使えないなどの場合は、
土台の帯にアップリケの要領で縫い付ける、或いはお太鼓部分と前分だけ、
羽裏と別布をパッチワークして帯幅につくり、それに更に帯地を縫い合わせる…。
これは昔から「裂取り(きれどり)」「裂り嵌め(きりばめ)」などとして、
帯地に使われる手法です。
わかりにくいんですが、この帯が裂取りです。母からもらった普通の袋帯ですが…。
ツタ柄の部分、朱色の部分、水色の部分は、それぞれ別々の布です。パッチワークですね。


      


こんな風にして作ることもできるわけですね。

またなんとかそのままいける、というときは、
この前の「若武者帯」のように、締めたら中に入ってしまう部分に
傷みやシミのあるところを入れて、うまくつなぎ合わせます。
(注/若武者帯は襦袢から作っています)

つぎにこれが一番難しいのですが、額裏の場合、どこをメインのお太鼓柄にするか、です。
たとえばこちら以前アップした「討ち入り柄」、まだ洗ってませんが…。
本来はこのまま全部見えているのが一番いいわけですが、コレでは幅が広すぎる…。
帯にする場合を考えると、どこをだすか、です。


  

  
たとえばですが、ためしにいろいろ「お太鼓柄の感じ」で置いてみました。
上の全体柄を知っていると「あらこんないいところをカットするなんてもったいない」
そういう気持ちももちろんあるのですが、帯にした状態ではダレもしらないわけで、
出ている柄が「いいかわるいか」です。
大石さんメインとか、丸いとり方を生かして真ん中とか、
横に描いてある「名札」も一緒に入れたりとか…それぞれ感じが違いますよね。


   

   

   

   

   

   


さて、これでカンタンに決まるかというとそうでもありません。
たとえば、お太鼓には「柄の出る位置」というのがあります。
帯枕の厚みによっても、柄の出方が違ってきますから、
きれいにお太鼓にはまりこむようにしないと、柄部分がちとゅうでとぎれたりします。
元々が柄部分全体で70センチ内外しかないわけですから、
お太鼓にしたとき、いいところがそこにちゃんと来るかどうかです。
上の写真でいうと、一番下の柄は上の丸いワクの線の、もうすぐ向こうが
縫い代になってしまいます。うまくいれこまないと、お太鼓のテッペンで
ほかの布とのつなぎ目が見えてしまうわけですね。
そのあたりが難しいわけです。

まぁこんな感じで、ひとくちに「羽裏を帯にする」といっても、
そり羽裏によって、柄の出し方や帯の作り方に工夫がいるということになります。

長くなりましたので、また次回に続きを書くことに致します。

実家のジャスミンからだいぶ遅れましたが、タイトル写真につぼみの写真をだしたとたんに
我が家のジャスミンも咲きました。えらいぞっ!


   







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4 コメント

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Unknown (陽花)
2010-05-10 22:56:23
柄の出し方で随分感じが変わりますね。
悩んだり楽しんだり、決めるまで結構
時間が掛かりますよね。

ご実家のジャスミン見事ですね。
とんぼ様の所も愛らしいわ。
返信する
ちょっと難しけど、ジャスミンは...。 (akkomam)
2010-05-10 23:52:36
 いろいろ考えて作業をなさり、オリジナルの帯などを
 仕立てていらっしゃるところは私には難しいのですが、
 ご実家のジャスミンは見事ですね。

 地植えだからでしょうね、鉢ではあまり大きく育っては
 くれません、他所の植木や花ののびやかさに詮方ないと
 思いながらうらやましがっています。

 白い花が自分の香りに染まっていくような終わり方も
 好きなのです。
 とんぼさんのところは鉢植えのようですが、きれいに
 咲きはじめましたね。
 明日は雨になるようです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-11 17:02:54
陽花様

何にするか決めるまでがたいへんで、
さらにそのあと「ほんとにいいのかな」で
ハサミを入れるまでに時間がかかる…。
片付かないわけですわ…。

我が家のジャスミンも、あわてて次々咲いてます。
今日はまた急に温度が下がったので、
玄関の中に避難させてます。
まったくいつまで落ち着かないんだか…。
返信する
Unknown (とんぼ)
2010-05-11 17:07:34
akkomam様

暑い国の花かと思っていましたが、
意外と丈夫なものですね。
実家の地植えからわけてもらったのですが、
去年花が終わってからしばらくして、
十文字の針金に巻きついていた物を、
ちょっとずつほぐして、あちこち切ったのです。
それがよかったみたいで、花が増えました。
大きく作るにはやはり地植えなのでしょうね。
父は、鉢をうごかさなくていいなら、
ネットのように伝えるものを作れば伸びる、
といっていましたが、やっぱり動かせないと
困りますので、我が家でもコジンマリです。
返信する

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