ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

こうなると・・・

2006-04-05 21:43:58 | 着物・古布

我が家には、柳行李がいくつかありますが、もう古いものなので、
入れるものも、つい古いもの・・。これはかなりふる~~~い羽裏です。
元々羽裏と言うものは薄いものですが、これはもう磨り減って??
向こうが見えるくらいです。触っただけでもピリッといきそうなので、
裏側に布の接着芯を貼りました。もう真ん中と、武士の笠の部分が切れています。




こんな感じ・・・。こうなると使いようがありません。
柄がおもしろいので、額に入れて飾るような、或いは台紙に張って
色紙のようにするとか・・。それくらいしか思いあたらないのですが・・。

それにしても、昔の羽裏の多種多彩な図柄には、いつも驚かされます。
江戸時代、羽織は男の人しか着られないもので、しかもやたらと脱ぐものではない
にもかかわらず、コッた色柄の羽裏をつけるようになったのは、
お上の「奢侈禁止令」に対する「ひそかな抵抗」だったのが始まり・・
と言われております。表はジミで目立たない縞や無地の羽織の羽裏部分だけに
豪奢な絹や織物染物をふんだんに使って、お上の知らない「ゼータク」を
楽しんでいたわけです。そういう気遣いをすることがなくなり、
自由に何でもきらるようになってからも、しばらくはこういう
「粋」とか「洒脱」と評される柄が多く使われました。
しかし、だんだんと額裏、と呼ばれる形に加えて小紋柄の羽裏が増え始め、
図柄も単におめでたい、つまり吉祥柄などありきたりの柄や山水画、などが増え
見た目に「おっ!」と言わせる柄がなくなってきました。
要するに、見つかっても文句言われるわけじゃなし、
羽裏としてついていれば・・というような風潮になってしまったのでしょうか。
シャレとか粋ということが、一部の着物好きだけの楽しみに
なってしまったような・・。ちょっと残念です。

商品と言うのは、何でもそうですが「売れる」ものが作られます。
着物が当たり前の暮らしの中では、オーソドックスなもの、粋なもの、
地味なもの、きわもの・・などさまざま作られ、それなりに需要と供給が
あっていたと思います。しかし、着る人が少なくなると同時に、
着物を知る人が少なくなり、着物を選ぶときに、
どういうものを選んでいいかわからない・・。
洋服とは違うから、自分に似合うものもわからない、
結局、呉服屋さんのいうとおり・・になってきて、呉服屋さんは
個性的なものやかわったものを作るより、勧めやすい、だれにでも似合うもの、
華やかでみばえのいいもの・・を大量に作ったほうが、利益があがりますから
似たり寄ったりのもの、同じ傾向のもの、が並ぶようになる・・。
なんだかもったいない気がします。

ファッション関係の本などを見ると、よく「個性的」と言う言葉を眼にします。
個性が大事、人とおなじじゃなくて・・、自分だけの・・、
そういう言葉もよく耳にするのに、実際今のファッションを見ると、
なんとなくみんなおんなじ・・に見えるのはどうしてでしょう。
若い人ほどそういう傾向があるのではないかと、思うのです。
女子高生の定番だった「ルーズソックス」、ネコも杓子も・・でしたね。

本当にオシャレかどうかは「ファッション」に敏感なのではなく、
それをどこまで自分のものとして個性的にできるか、と言うことだと思うのです。
着物は、その感性を磨くのに最適なものです。
なぜって、全部おんなじ形だから・・・。色や柄、その組み合わせ、
帯の締め方、襟の抜き方、半襟の分量、帯揚げの見せ方、小物の使いよう、
「同じ形」のなかで、それを磨くと、同じ着物なのに、
人とは違う着方ができるのです。

誰の手によって染められ、どんな人の背中で時をすごしたのか、
かつて、見たひとに「へぇ~~」といわせたであろうこの羽裏、
最後にもう一花、咲かせてやりたいと思ってしまうのです。



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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ほんと、もったいないですね、 (ぶり)
2006-04-05 23:01:58
羽裏の図柄をファイルに蓄積すれば、いろいろと使えそうですね♪

例えば、紙にプリントするばかりでなく、布地にプリントすれば、手ぬぐいや、風呂敷、Tシャツなど、作れそうですが、どうでしょ。 布地に印刷は、ちょっとした投資が必要でしょうけれど。。。



若い人のおしゃれが画一的に見えるのは、雑誌の影響もあるのかなーと思います。 でも、30年くらい前の猫も杓子もミニ・スカートの時代、流行に乗り遅れまいの頃に比べれば、最近は、かなり個性的になったと思います。



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武士の情け・・・? (陽花)
2006-04-05 23:14:29
とんぼ様

この羽裏、擦り切れるまで使ってもらって

本望でしょうが、別のものに生まれ変わって

もう一花咲かせてもらえたら幸せですね。
返信する
なるほど! (とんぼ)
2006-04-05 23:47:07
ぶりねぇ様

ぐっど・あいであ、ありがとうございます。

そうですね、Tシャツの背中にこれを入れて

「羽裏」じゃなくて「シャツ表?」、

これはいただきです。いろいろかんがえられますね。

投資分、これから稼ぎます?!



陽花様

自分が着たものではなくても、

なんか、いとおしいんですよね。

桜はもう終わりですが、

これから花をさかせましょう!

わたしゃ喜んで「花咲ばーさん」になります。

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馴れた絹の行方 (蜆子)
2006-04-06 09:26:35
こんな風に磨り減って馴れた絹、道具、特に漆塗りのものをしまうのに艶出し、あるいは包みにまことにいいのです。

道具をしまうのに包むのに、帳崩しなんてのがいいのですが、なかなかなくなりました。

これほどに解けてしまったような絹がいいのです。

昨日使った茶入れ、袋、もうきれが溶けてしまってさわるのもこわい、お出しするのに別の袋を用意してそれを使いましたが、本当の洋服は歴史の中で、もうほとんど命をしまったもの、一会のお客さまでその道具の歴史を偲びました。

着るものとしてはもう用済み、どこかの蔵の中で眠っている布も多いかも~。
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すみませーん (とんぼ)
2006-04-23 00:20:30
蜆子様

お返事書き忘れていました。

もう解けたような絹・・ありますよ。

触るのも怖いような・・・。

羽裏、胴裏、子供の着物・・もうそぉ~~っとしか

触れないようなのが。いとおしいですね。
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