ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

家での着物メンテ

2011-02-28 16:12:49 | 着物・古布

 

昔の和装本には、必ずといっていいほど「シミや汚れの落とし方」が載っています。

こんな感じ。

 

     

 

母なども何も読まずとも、よくあれこれ道具を使っては、小さいメンテをしていました。

今のようにどこにでもクリーニング店がある時代ではなかったし、また頼むと高かったわけです。

また「メンテ」は、別に特別汚れたとき、だけでなく「着たらする」のがその始まり、

まずは着物は脱いだらつるして湿気を飛ばす…これは今でもやりますね。

それからしまう前に、大きな汚れやシミを点検する。みつけたらその場で対処。

別に訪問着などでなくても、です。それが着物を長持ちさせる方法なんですよね。

母もよく、何回か着ると、衿汚れをベンジンで落としていました。

するのはお天気のいい日に窓や縁側を開けて…始める前に「こっちへ来(こ)んときや」と、私に声をかけるのは、

においがきついし、吸い込んだら体にいいものではなかったからでしょう。

そういえば…小学校で習字の時間に衣服に墨をつけてしまうと、

母はまずはぬるま湯につけて指先でつまむようにモミモミ、それからご飯粒を塗りつけてまたモミモミ…

今のような漂白剤はありませんでしたから、辛抱強くこれを続け、重曹のお世話になってささらでたたいて…。

必ず「なんでこんなとこに墨がつくねん!」のおこごとつき…専用のスモックきてやってたのにねぇ。

 

ただ、昨日もたまたま呉服屋の奥さんとその話になったのですが、

どうしてもクリーニング屋に出したようにはならない…のよね、と。

確かにそうなんです。もちろん、つけたばかりのしみを手早く的確に処置すれば、

本当にきれいにはなりますが、なれないと輪ジミになったりします。これは慣れとしか言いようがないのですが…。

古いものは余計に落ちませんし…それと、なんといいますか「感覚」の違いとでもいうのでしょうか。

今の時代は何でも「カンペキ」志向です。8割がた落ちたけど、残っちゃった、これもうだめだ…

どうしてもそういう感覚ですよね。昔と「きれい」感覚が違いますからしかたないんですが、

それでも自分で手をかけて…というメンテはやれたらやって「慣れ」てほしいものだと思います。

 昔は着ているものに穴があいていることもシミがついていることも、それ自体は恥ずかしいことではなく、

それの「手当て」をしていないことが恥ずかしかったのです。

今の時代、何でも「機械」があって、いろいろな洗剤や漂白剤があって素人でもかなりきれいにできますし、

入浴洗髪毎日は当たり前です。そんな今は、シミがとりきれない、全部汚れが落ちない、となると

もうそれで「ダメだー」になるのは仕方ないことだとは思うのですが、

自分の持ち物について、自分の手や指先でこまごますることは、大事だと思うのです。

面倒なこと、たいへんなこと…「手間をかける」と、いとおしくなって大事にしたくなるものですしね。

 

こちらはめんどくさい人用(つまりあたしも)の「おやじブレンド」しみぬき剤

いろんなしもみや汚れお年のノウハウ冊子もついてきますよ。

シミ落とし汚れ落としに最適な「ささら」も同じところで販売しています。

高いですが、こういうの、たまに「物産展」とかででたりします。合羽橋に行かれたら、一番いいんですけどね。

私はこのサイズですが、手が小さいので、もう一回り小さくてもいいかなーと思っています。

ささら、とは元々は竹や木を細く割ったり割いたりして、それを束ねたものの総称です。

衣服の汚れ、もちろん着物は特に、落とすのに「こする」のは厳禁。「たたく」のが一番です。

つまり、布の細かい折り目に入りこんでいる「汚れの元、シミの元」をたたくことで、下に押し出すわけですね。

だから「シミ洗い」といわずに「シミ抜き」とか「シミ落とし」というわけです。

 

実は…先日の「白い着物」、さっさと解いたのですが…こんなに白かったのに、シミに気がつきませんでした。

こちらです、ちょうど右の脇、下から30~40センチくらいでしょうか。あららとびっくり。

赤く囲ったところに広範囲に…写真ではうまく出ていませんが、かなり「濃い」です。

 

      

 

ちょっと暗くしてみました。ここが一番大きくて、手のひらで隠れるくらいの範囲です。

 

      

 

広げて並べてみましたが、衿肩あきがありますから、左右を入れ替えることはできません。

それをやっているときに呉服屋さんがきましたので見せますと、まず「こりゃ古いしみだよね」…。

プロでもこれを全部落とすのは大変だし、なにより「お代金」が…。シミ落としのほうが高くなっちゃねぇ。

で、自分で少しでも落とした後、前後を入れ替えて仕立てれば、この脇汚れは左脇から後ろに行きます。

右脇の前だと、いすに座っただけでハッキリ見えちゃいますが、左の後ろ脇なら、目立たないでしょう。

そんなこんな言っていて、ひょいと裏返したら「あら薄いじゃない」

あらら、裏まできっちり通っていませんでした。かなり範囲が狭まってます。

じゃ裏返しちゃえばいいね、と決定。裏返して、念のため左脇に来るように仕立てることになりました。

じゃ持って帰るから…まてっまず自分でやってみるっ、そのあとお仕立て代をへそくってからっ!

「裏返して着てみて、それでも気になったら、それから羽織とか帯とか考えればいいじゃない」と奥さん。

その場合の仕立て代は、ダタにしてくれるんですかいっ。

 

帰った後、とりあえず「おやじブレンド」でやってみました。古いしみでしたが、小さいところは薄くなり、

裏からは完全に見えなくなりました。せっせとできるだけ落としてみます。 


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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とんぼ)
2014-04-08 08:13:21
真心クリーニング マツミヤです。様

そうでしたか。こちらは横浜です。
桜もあっという間に散りましたが、
また少し肌寒くなったり、忙しい春です。

お洗濯しても、触るのに手がつめたーい…が
やっとなくなってきて、ヤル気になってます。
返信する
ごめんなさい。他の着物好きさんのブログと間違えてました。 (真心クリーニング マツミヤです。)
2014-04-08 08:09:17
全国の着物好きさんのプログ等でも、良く、おやじマイブレンド液のことをご紹介いただくので混乱しておりました。

大変失礼しました。衣類や人肌にも優しい洗剤のブレンドや漂白の処理法を日夜考察してます。FBでも情報を発信してます。真心クリーニングでページに辿りつけます。

今後ともよろしくお願いします。
返信する
Unknown (とんぼ)
2014-04-07 21:38:05
真心クリーニング マツミヤです。様

コメントありがとうございます。
でも、こちらは鹿児島ではありません。
もしかして、別の方のブログとお間違いでしょうか。

お洗濯のこと、情報ありがとうございます。
返信する
そろそろ、春の衣替えの準備ですねー (真心クリーニング マツミヤです。)
2014-04-07 08:14:22
いつも、お世話になってます。鹿児島の方はお天気の様子はいかがでしょうか? 芦屋の方は少し曇り気味で

花粉やPM2.5の微粒子の影響でしょうか どんよりとした日々が続いてます。

そろそろ、春の衣替えの季節も到来ですねー
お洗濯のことで、何かご相談があるときはお気軽に
お問い合わせくださいねー  お友達にも水洗い洗濯のことを教えてあげて下さいねー  失礼します。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-02 15:07:59
さえ様

言い切ってしまうことはできないのですが、
ぐしじつけは、
和裁の先生や地域などにによっても
考え方が違ったりするんです。
とりあえず、礼装でなければ、大丈夫だとおもいますよ。
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Unknown (さえ)
2011-03-01 22:04:43
ありがとうございます。
知らないで取って後悔したらどうしよう、と悩んでいました。
好みでいいんですよね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-01 20:22:30
りのりの様

はい、お願いします。
5年くらいで効果は薄れると思います。
あらっても大丈夫なんて触れ込みもありますが、
永久ではありませんので、そのときまたお考えください。
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Unknown (とんぼ)
2011-03-01 20:21:15
さえ様

留袖などの礼装用はついてて当たり前ですが、
そうでなければかまわないと思います。
元々は布をおちつかせたり、なじませたりするものですから。
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Unknown (とんぼ)
2011-03-01 20:18:17
たま様

それなんです。
呉服屋さんが「万能」のように説明しちゃったり…。
いつもの呉服屋さんのお話では、成人式で振袖を作っていただいたお客様には、
終わったら必ず持ってきてください、とお願いして、
サービスで汚れやシミを点検するのだそうです。
それをしないと、そのままさっさとしまわれて、
何年もたってから汗ジミがとか汚れがとかと、
いわれたりするそうで。
もう汚れても大丈夫なようにしておこう…なんですかね。
それと、5年保障とかつけるとそれをきっかけに
また足を運んでくれる…というようなことも
あるのだそうです。
悲しい話ですが過信されては困りますし、
ちゃんと説明してほしいですよね。
返信する
Unknown (りのりの)
2011-03-01 19:34:46
とんぼさん、たまさんありがとうございます。
ガード加工を過信せず虫干しはちゃんとやって湿気には気をつけます。
返信する
Unknown (さえ)
2011-03-01 08:32:05
たぶんぐしじつけと言うものだと思います。
取るのも大変そうなのですが、取っても構わないのでしょうか?
黒字に白い糸で、どうしても古い感じがしてしまうので。。。
返信する
ガード加工 (たま)
2011-03-01 03:37:07
柔らかものだと呉服屋さんが必ず勧めますね。
でも消費者にちゃんと説明してないようで、気になります。
私の手持ち柔らかものには、冠婚葬祭用だけかけてますが、水関係の飛んだものにしか効きません。きっぱり!
カビには気をつけてるので、虫干し必須!
ガード加工しても汚れを付けた時気が付かず、着た後すぐにお手入れに出さないでいて、何のシミか、取れないものもありましたし。
茶道のみなさんとも話ますが、絹はきものになっても呼吸をしてるので、たくさん着る人はガード加工をしない方がいいようだと感じました。
付き合いのある呉服屋さんには、薄い色には保険のようなものだとも言われました。
確実なことはないので、慣れた人には勧めないそうですが。
どうせなら保険をかけて、気後れしないで着てもらえるように…てな考え方なのかもしれませんね。
私が普段着る着物は紬なので、正絹でも、食べ物シミは歯ブラシと食器洗い用洗剤でちょこちょこ洗いします(^^;)
蛮勇かも。
でもオッケー!
シミ抜き剤の名前が笑えます~(^^)
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-01 00:20:00
りのりの様

要するにフッ素加工、ですね。
いろいろな会社がありますから、それぞれにいろんな特性を
もたせています。それによって、成分にも代わりがありますが、
おおむね「防水ガード」と同じです。

何でも守ります…が建前ですが、
防カビは期待しないほうがいいのが普通。
それを足しているのもありますが、
完全ではアリマセン。
それと、油関係はメーカーによるようですが、
だいたい防水ですから、着物の表面に落ちてくる水や
ホコリ汚れをはじくものです。
油性ははじきません。さらっとした油とか
化粧品程度だと「落としやすく」はなるようです。
それと、永久ではありませんので、メンテのときに
相談したほうがいいです。

昔のガードって、なんかゴワっと風合いが変わるとか、
化繊みたいに通気が悪い感じがするとか、
いろいろ欠点をいわれたものですが、
今のものは質が向上していますから、
そういうこともほとんどないようです。
ただ、洗い張りに出したときに、あちらが困るのです。
水気を含んでくれないので、洗いにくいのですね。
ガード落とし、なんて仕事もあるそうですから。
今は昔のように、自分でざぶざぶ洗ったりしませんし、
着る機会が少ないなら、かけておけば安心、だと思います。
ただ、しまっておくのに「除湿」だけはしない
と、
防カビは「ない」か「弱い」かです。
実のところ私はあまり好きではないので、
いい着物ほど、かけていません。
返信する
Unknown (とんぼ)
2011-03-01 00:04:23
さえ様

縫い目がとても細かいシツケでしょう。
「ぐしじつけ」だと思いますが…。
とってしまうしつけ縫いは、製図で言うと、
二点鎖線、長く・短く…と縫い目が大きいもの。
ぐしじつけは、昔のヒトは好みであらゆるところに
やったりなんてこともありました。
それもそうだと思いますが…。

返信する
Unknown (とんぼ)
2011-02-28 23:59:39
陽花様

着物のことは、何でもお金がかかるようになっていますよね。
ベンジンの輪ジミは、だいたいが使用量が少ないから、
ということが多いんです、すぐ揮発しますから、
たーっぷり使ってぬれタオルを上手に使うと
輪ジミもできにくいんですが…。
それがなかなかうまくはいかないんですよね。

この着物のシミは、古いものでしたので、小さいところが、
やや薄くなりましたが、とりきれませんでした。
つけてすぐのシミには、これはたいへん有効と
言われています。
私の持っているのはみんな古いものばかりなので、
シミも古くて、まだきれいさっぱり落ちた、というのは
ないんですけれど、着物着るヒトの間では、知られている洗剤です。
要するに「重曹にとグリセリン」が主です。


返信する
Unknown (りのりの)
2011-02-28 23:36:01
呉服屋さんの勧めで「安心ガード加工」というのを施しています。仕立てたときか、丸洗いしたときに少々お高いですがやってもらうと後は無料でお手入れしてくれます。
食品の汚れや泥やほこりもきれいになって新品のようにさっぱりして、お手入れも楽なのですがなんか今ひとつどういう加工なのか不思議に思います。
着物は三代先まで着られるといいますが長い目でみると生地のためにはよくないんじゃないか・・・とか。
詳しい方いらっしゃいますか?・・・・ってここはヤ○ー知恵袋(今話題!)じゃないって・・・

返信する
Unknown (さえ)
2011-02-28 21:57:28
家でのメンテ、上手になりたいのですが、まだまだウールや小物の手入れがやっとで、大事な着物は手を出せないでいます。
今夏の紗の裄出しをしているのですが、衿の外側だけぐるっと一周、0.5ミリくらい白い細い糸で縫ってあるのはしつけなんでしょうか?喪服みたいに違う糸でかがることってありますか?
袖のところのしつけと同じ糸で縫ってある感じです。
返信する
Unknown (陽花)
2011-02-28 18:24:57
こまめにメンテに出せば一番いいのですが、
何分予算が・・・ですね。
以前のガッカリがありますから尚更出すのを
躊躇します。
ベンジンを使って輪ジミが出来たらなんて
思うと、失敗しても諦められる着物で試して
みてからかな。
便利な物が売っているんですね。
古いシミが綺麗になったらほとんどの物に
使えますよね。
是非結果をお知らせください。
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