ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

薩摩結城という名前

2009-11-17 22:50:48 | 着物・古布
いえ、別にしょっちゅう眼にも耳にもするわけではないのですが、
昨夜たまたま着物やさんのHPを見ていて、見つけたものですから。

写真は全く関係ないものですみません、久留米絣です。
ちょうどでてきたもんで…。証紙…わかりますか?このお話しはあとで…。

「薩摩結城」と聞いて、あぁ懐かしい、と思われる方もおいでかと思います。
昭和の初めでしたかねぇ、名前は忘れました、なんとかさん…これだわ…
ともかく鹿児島の人が新しく考した織物のことです。(ウロ覚え…)
私なんかは「薩摩」と聞くと「薩摩絣」の方が耳になじんでいるし、
一枚持ちたいものだと思っています。薩摩絣は木綿ですね。
「薩摩結城」は絹物で、今は「大島紬の一種」になっているようです。
ちゃんと調べたわけではないので、確実なことはいえませんが、
大島紬のなかで、結城の技術を取り入れた…という説明が多いのですが…。

そもそも大島紬、結城紬、それぞれの特徴をぱっといえる人が、
そんなにいますかねぇ。でもって「薩摩結城」って、なんなんでしょうねぇ。

前から何度も書いておりますが、大島紬は「紬」という名前が付いていますが、
正確に言えば「紬」ではありません。平織りの絣、です。
またまたおさらいですが、繭からまっすぐ引き出した長い糸は「生糸」です。
紬というのは、くず繭などからでた短く切れた絹を真綿にして手で紡いだ糸を使う。
だから糸に太い細いが出て、節があったりザラついた布になった、コレが基本で
紡ぐのも織るのも機械になったとしても、紬は原則として「生糸」ではないのです。
大島紬も元はそれでしたが、戦争など一時壊滅的な打撃を受け、
それを盛り返す努力をして今に至るわけで、その再生時には生糸を使ったのです。
だから大島紬はスルスルとしています。生糸の平織り布と同じです。
そして大島紬の定義には「紡ぎ糸であること」というのははいっていません。
大島紬の定義は

・正絹
・先染め手織り
・平織り
・締機(しめばた)によるもの
・手機(てばた)であること
(内容まで細かく書いてませんですみません)

この五つです。これに「泥染め」「草木染」などのシールがついて、


     

   
染めの別をあらわします。また「旗印」は鹿児島、「地球印」は奄美大島、です。


     


一方「結城(本場結城といわれるもの)」は
「手紡ぎ糸」を使うことをキマリとしています。

・手紡ぎ糸
・絣くくり
・地機織り
これまたカンタンに書きましたが、細かく言えば、
「経緯共に手紡ぎの真綿糸」とかになります。

ややこしいですね、つまり「薩摩結城」というのは、
「大島の定義にはない」けれど、「結城の定義にはある」紡ぎ糸を使って、
「結城にはない」けれど「大島にはある」織り方や染め方でできている…?。

なんかヘンだと思いませんか?
これ、わかるヒトにはわかる…式のお話しなんですかねぇ。
今の大島の織り方が確立したのはほんの100年ばかり前のことですから、
紡ぎ糸で今の大島の織り方、でやっていた時期は実はそう長くはないわけです。
だから元の紡ぎ糸に戻してみました…ってのを、わざわざ「新しいもの」として
「薩摩結城」という名前をつけたのでしょうか。
それともほかに「結城」とつけて表すような特徴を持っているのでしょうか。

どうも私にはさーーっぱりわかりません。
このあたりのことは、もしかしたら「きもの文化検定」のモンダイにはあるかな?
受けられかたなら、おわかりになるかもしれませんね。
ご存知のかた、ほんとのところを教えてください。

今「薩摩結城」として売られている物に、説明が付いていると、
単純に「大島に結城の技術を取り入れた…」とか、そんなことが書いてあります。
うそはないんです。ほんとのことしか書いてない、
だけど、それのイミが全部わかる人は、そうそういないのが今の時代です。
また中には呉服屋さんでさえ「薩摩結城」と「薩摩絣」を
混同している人もいます。

さて、実のところ…ほんとは、んなこたぁどうでもいい…のかもしれません。
ただ昔は、買う側がこの手のことを、たとえ大雑把であっても、
例えば「大島ってのは」とか「結城はね」とか、知識として持っていたわけです。
以前言いました「選択肢」と「選択眼」、
これで「大島がいいのは知ってるけれど、高価だから村山にしておく」とか
「本物紬は高いから、安い銘仙で楽しもう」とか、そんなことができたわけです。
でも今は、証紙に惑わされたり、名前に惑わされたりします。
おまけに、その証紙をつけるほうも、買う人のことを考えているよりは、
自分たちの立場優先です。だからややこしい証紙が一杯あったり、
勝手に自分たちの解釈でつけてしまったり…もあるのです。

実は、結城の証紙などは非常にややこしくてわかりづらいです。
こちらに「本当の結城紬の見分け方」というページがあります。本当ってことはうそもアリ?
実は、結城には石毛紬というものがあります。
「いしげ結城」とか「石毛紬」とか…古いと名前も違ったりします。
大本は木綿でしたが、こちらも結城紬の台頭とともに、絹に変わりました。
また、元々「本場結城…」と証紙をつけていたものは
文化庁から「重要無形文化財」の指定を受けていながら、
その規定に反するものにも、その証紙をつけていたということがあり、
そんなトラブルから、お国からの「無形文化財」の証紙を返上し、
新たに「自分たちの組合」で作った証紙(とその条件)をつけて
販売するようになった、という経緯があります。

結城紬についての資料を見ていると、頭がこんがらかってきます。
やたら「本場」「本物」と言われ、証紙が付いています、といわれると、
証紙がないとニセモノみたいに思ってしまうけれど、
「本場」というのは、本物か偽物かの区別をつけることではなく、
どこの土地で作られたか、を表すものでなければなりません。
例えば「大島紬」でも、定義を守っていれば、韓国で織られたものでも
本物の大島」…だけど、大島鹿児島で作られていないから
本場大島」にならず「メイド・イン・コリア」がつくんです。

またその「本場」とかなんとかいろいろ考えてくっつけるのは、
その土地の「織物組合」とか、そういうところですが、
技術の流出や、品質の保持、品物への責任ということで、
そういうことを決めるのは、悪いことではないと思います。
ただ、それ以外の同じものを知らない人は、証紙がないと
「にせもの」と思ったりするんですね。

選択肢があり、選択眼があるということは、
本物と、また近いけれど証紙はもらえないランクの本物と、
ただ同じ場所で作られたという本物と…更にその地方のものに似せた「フェイク」と
そういうものがハッキリわかるように存在するということで、
売るほうは、もっと柔軟に商品を考えてほしいし、
買うほうは、証紙やオウムのくりかえしみたいな「本物ですー」という言葉に
惑わされずに、自分の目的には「どれがいいか」をちゃんと考えて
選ぶことができる…ということだと思うのです。
そして、宝くじが当たって、よーし300万の結城買っちゃるっ!
なんてことがあったら、しっかり証紙のイミとその確認をして、買ってください。


最初の久留米絣、これにも「証紙」があります。


    

 
現在のものはこちら。


              


久留米絣のなかでも「藍染手織絣」には、伝統的工芸品の証紙が貼られています。
一番上の写真の左端の赤い○のシールのことです。
「藍染・手織り」でないと貼ってもらえません。
でもね、これが決まったのは、昭和も50年になってからです。
また無形文化財のシールがありますが、これはそれより前、昭和30年初めです。
つまり、その前のものには、たとえ「藍染・手織り」でも、
どっちも貼ってないんです。古いものを手に入れた日にゃ…
そこのとこまでわからんのですよ。ははは~いいのよ柄が気に入ってんだから。

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10 コメント

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Unknown (とんぼ)
2014-06-07 17:29:34
あぼ様

正直なところ、確かに一生に一度はホンモノを着たい…
というような気持ちはわかりますし、
私もいい柄のがあったら着たいものだ…とも思います。
でも、ほんとは「気に入ったもの」が一番の
「自分のほんもの」でいいと思いますねぇ。
返信する
薩摩結城 (あぼ)
2014-06-07 16:55:52
こんにちは、ヤフオクで購入した反物に『薩摩結城』とあったので、これは何だ?と思い、検索していておじゃまさせていただきました。
品物の説明が全く無く、画像の感じから男物の藍大島だろうと思って買ったのがこれでした。
柄行は亀甲では無い男物の大島風で、風合いは結城とは違うと思います。ふんわりした感じではなく、ガサガサした感じ。湯通しをすると変るかもしれませんが。(といっても、本物の結城は触った事は無いです。織糸の一部に結城の真綿糸を使った結城風っていうのならありますが)
証紙は鹿児島産の大島紬の物にそっくりで、旗が交差した所の垂れ幕みたいな部分(通常、大島紬と書いてある)に薩摩結城と書いてあります。
結城とあるのに、大島の証紙・・・
なんだかよくわからない品ですが、軽くて良い感じなので、仕立ててもらって着ようと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-19 18:06:15
みつわ様
それはたしかに本場で織られた大島ですよ。
都喜ヱ門、というブランドです。
「藤絹」という会社が作っています。
ちょっと調べましたら、扱っているお店がありました。
このマークでしょう。

http://www.online-kimono.jp/products/5594.html

つまり「大島紬なんたら組合」じゃないからだと
思いますが、あの証紙が付かないのです。
たぶん、「定義」のうちのどれかが
一部であってもできないということだと思います。
五つの定義を守ることが「大島だ」というのも
確かに大事なことですから、それをしていないと、
「この証紙」はあげられない、というのも、
ひとつの責任だと思います。
要するに「何を価値とするか」は、
こちらが選べばいいのですよね。
おっしゃるとおり、紛らわしいですね。
証紙ってなんだろ…と思っちゃいます。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-19 17:49:27
りら様
だははは、私もそうでしょうねぇ。
まず貯金!とか言って、通帳の数字見て
シアワセにひたる…?!

いつのころからか、安く大量」に扱って、
大量のお客を呼び始めて「きめが粗く」なり、
矜持も誇りも薄れたように思います。
小さいところの方が、信用第一で、
ちゃんとしてますよ。
返信する
Unknown (みつわ)
2009-11-19 17:36:41
今から20年位前、母が安かったからと送ってくれた夏大島があります。ラベルには本場大島紬とあり、織技能者の名前も入っているのですが「太陽印」と印刷されています。その辺の所がどのように説明されたのか今では聞けませんが紛らわしい太陽印はいらないと思いました
返信する
買うぞ!宝くじ!! (りら)
2009-11-19 13:46:34
とは言え、当たっても今物の300万の結城は買えない貧乏性だと思いますが~。
うはははは

私は、お店の信用ということも大事なんじゃないかと思っています。
まかり間違っても偽物なんかは取り扱わないし、妙な付加価値付けて値段を釣り上げる事もしない、そういう着物屋もありますのにねぇ・・・・
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-18 17:08:25
akkomam様
なんていうのか「自分の仕事に対する誇り」
なんて言い方しかないんですけど、
そういうものが失われつつある気がします。
警察官や教師の、とんでもない不祥事も、
政治家のお金地獄も…。
たった一枚の証紙だけど、とても思いものなのだと、
作る側も見る側も、感じたいものです。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-11-18 17:05:40
陽花様
証紙をつけてほんものならいいんですが、
かつて展示会商法などでは、
けっこうニセモノや本場でないものもあったみたい。
売り手に悪意があっては、たとえ本物でも、
何倍も高く売りつけたり…。
高いものも安いものも、お互い信頼できる
かいものがしたいですよね。
私、もしも宝くじあたったら、大島と、結城と、
芭蕉布と、宮古上布と…こらこら…。
返信する
難しいようだけど、大切なことですね。 (akkomam)
2009-11-18 12:40:51
  どっちにしても私は買わないから、着ないから、
  ではなく、そのものの歴史には成り立ちがきちんと
  ある!!ってことはとてもよく判りました。

  <本場と本物>とても興味深く読みました。
  これって、着物の世界でなくても通用することで、
  今、一番失われていることのように思えました。

  
返信する
Unknown (陽花)
2009-11-17 23:46:54
証紙の見方なんて普通は教えてもらえないから
分からないですよね。私なんかは当然本物は
手も足も出ないから証紙の見方が分からなくてもいいような気がしますが、本当に宝くじでも
当たったらとんぼ先生にもう一度教えてもらわなければ、ややこしくて覚えきれませんわ。
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