ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

おまじない

2013-07-05 15:34:45 | つれづれ

 

「お呪い」…おんなじなんですね「まじない」も「のろい」も。

「のろい」の方は、人に仇を成すもの、悪いもの、ですが、

まじない、というと、逆にわるいものを避けたり振り払ったり…そんな使い分けでしょうか。

時には良いことを招く…「恋愛成就のまじない」なんてのもありますよね。

人は、人にない力を「呪(しゅ)」の力と称して、自分ではどうにもならないことや、

理解できないことを、その力によるもの…と考えてきたのでしようね。

ちなみに呪詛の「詛」も、のろいの意味です。こわっ。

 

なんだか怪しげでキミの悪い話になってきてしまいましたが、そんなお話ではありませんで

単に「おまじない」の話です。

久しぶりに針を持ってチクチクと、至福のひと時を過ごしたわけですが(おおげさな…)、

おしまいの止め玉を作るときにナニを焦ったか、指先を針でチクリと刺してしまいました。

血も出ない程度のことでしたが、いつもどおりの「おまじない」を自然とやってました。

「針を刺したときは、ハサミのお尻でたたけ」…これ以前も書いたことがあるのですが、

これって誰に話しても「そんなこと知らない」「聞いたことない」と、そういわれるのです。

ひょっとして「私の母の実家に伝わる『個人的おまじない』??」でしょうか。

 

母はめったに指先に針を刺すことはありませんでしたが、たまーにやると、

まず縫っているものをパッと放り出す…放り出すほど痛かったのかとビックリするわけですが、

実は「縫っているものに血がつかないように遠くへやる」…なのだと、少し大きくなって知りました。

血は布につくと落ちにくいですからねぇ。

母はそのあとすぐに「握りバサミ」をさかさまに持って、刺したところをトントンと叩いていました。

「こないするとな、痛いのがのぅなって、はよ治るんやで」と、言ってました。

私もいつの間にかそうするようになったのですが…さて、ほんとにそうなのか…。

気の持ちようでしょうか、痛くないよぅぅなきがする?というより、

科学的?に考えれば、針を刺すと、大げさに言えば皮膚に穴があくわけですから、

深いところまで刺せばばい菌が入って膿んだりします。

ハサミで叩くことですぐに傷口をつぶし、早く治るように仕向ける…なのかなと。

効き目はともかく、習慣のようにハサミのお尻でトントンしながら、なんか他にもあったよねぇ…おまじない。

 

縫い物に関しては、これも以前書いていますが、そのときの都合で着たまま針を使うとき、

例えば出先でボタンが取れたとか、どこかほころびたとか…。

そういう時は縫う前に「脱いだ・脱いだ・脱いだ」と三回唱えてからする。

まじないに使われる短歌もあり、たとえば

「弘法は 旅の衣に急がれて、着せて縫うのも目出度かりけり」、この「弘法」が「西行」だったりします。

これを唱えてから、或いは縫ってる間ずっと…いや、まず覚えねば…ですが。

着たまま縫うことを忌み嫌うのは「死者」への作業と同じ…というのが、まじないをする根源です。

昔は別の意味でも「死」や「闇」を怖がりましたから、そちらに近寄らないように…という思いでしょうね。

そうそう、裁縫がおわって、針の数が合わずにどうしても見つからないとき、

「清水や 音羽の滝は絶ゆるとも 失せたる針の無きことはなし」と唱えるとみつかる…

というのも、先年知りました。

歌から行って関西のまじないでしょうか。音羽の滝は清水寺にある小さな滝ですが、

その流れる音が絶えることがあったとしても、無くなった針が消えることは無い、つまりみつかる…。

昔の針仕事は、畳の上にすわって…が多かったですから、針が見当たらなくても、

落ちたとすればそれほど遠くではないはず。

母は、数が合わなかったり、はずみで針を取り落としたりすると、すぐそばで遊んでいる私に

「動きなや!」と言って、目を皿のようにして探していました。

いまならコンタクトレンズを探すアレですね。大体は「そのへん」に落ちているか、

さしていた待ち針の抜き忘れだったりするのですが、針の怪我は怖いですからね。

今は、私もそうですが、イスに座ってやりますから、落ちる針も高いところからだし、

下がフローリングだったりすると、待ち針のアタマがあたって跳ね返ったり、

畳のようなでこぼこがないから、するーっと滑ってしまったり…。探す範囲も広がったというものです。

そそっかしい私は、小さなマグネットを裁縫箱に入れてます。

落ちた針を探すのではなく、針刺しの横に置いて、縫っている途中は、そこにぺたっとくっつける…。

こんな感じ。例の「おたべマグネット」手抜きもいろいろ進化する?です。

 

         

 

おまじないの話を書いていて「エンガチョ」を思い出しました。子供のころやりましたね。

あの「千と千尋」にも、千がハクの口から飛び出した「まじないのかかった毒虫」を踏み潰したとき、

釜じぃが、「おい、エンガチョエンガチョ!」と、叫んで指を形作る場面がありました。

地方でいろいろあるようですが、私の子供のころは両手の親指と人差し指でそれぞれ丸を作ってくっつけ、

その真ん中を誰かに手刀できってもらう…だったように記憶しています。

エンガチョは「縁をちょんぎる」からきているという説もあるそうで、この場合の縁は「悪縁とか因縁」の方。

あぁエンガチョしたい身内や知り合いが…なんて思ったりもします?

 

魔をよけるおまじないや「初物を食べるとき、西向いて笑う」など、いいことを期待するおまじない、

効き目の有無よりも、心の中で、なんとなく思い出の中のはしっこに、そぉーっと綴られている

年寄りや親の言葉、友達との関わりから、細々と今も切れずにとどまっているもの、そんな気がします。

 

裁縫に限らずのおまじない、いろいろ思い出したのですが、例えば長っちりの客がきたら、

ホウキに手ぬぐいをあねさかぶりさせて、さかさまに立てておく…なんて、今の人は知らないでしょうねぇ。

新しい履物を部屋で試し履きしたとき、歩いてみよう…と思っても、そのまま外に出てはいけない…。

新しい履物を下ろすのは午前中、でも、新しいものを葬儀におろすのはいい…。

おまじないとは違うかもしれませんが、日本人って、なんとなくそういうことを気にする民族なのでしょうか。

でも、そのほとんどが「いいこと・わるいこと」を迎えたり避けたり…

とりもなおさず、1分先のことも見えない人間が、少しでもシアワセに、無事で…と願う、

ささやかな知恵のカタチなのでしょう。

さて、今日は茶柱も立たず、けがもなく…何も無いのが好日…ですね。 


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10 コメント

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針を指に刺したとき (りんご1)
2013-07-05 16:42:15
私は針を刺したときは、裁ちばさみ(大きい黒いはさみ)の刃の反対側で針を刺した指をしごきます。(針穴を上から強くこすります)。そうしますと痛みがすぐ消えるようです。昔母に教わったと思います。たたきはしないですが。
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Unknown (陽花)
2013-07-05 18:47:15
私も握りばさみのお尻でとんとん叩きます。
痛みよりも血があまり出ない気がします。
脱いだ!も言いますが3回でしたか。

目にゴミが入った時に「こうや弘法大使、この子抱いて粉ひいてこの子の目に粉入って、今度からこの子抱いて粉ひこまい」と唱えると目のゴミが消えると聞いて子供の小さい頃よく言いました。
おまじない、言い伝え沢山あるんでしょうね。

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ご本のご紹介 ()
2013-07-06 09:08:29
記事に関係ありませんが、楽しい本を読みましたのでご紹介します

「きものは、からだにとてもいい」 三砂ちづる@講談社文庫

ある日、毎日 着物を着ることにしてしまった筆者の体験記。お時間のありますときにどうぞ。
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Unknown (とんぼ)
2013-07-06 13:14:31
りんご1様

友人が、かえって痛そうって言いましたが、
たたいたりしごいたりすることで、
元の刺した痛みを忘れるというか、
そういうこともありますね。
いずれにしても、傷を押さえて潰すことが、
治りを早くしているのでしょうね。
他にもやっておられる方がいて、ほっとしました。
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Unknown (とんぼ)
2013-07-06 13:18:45
陽花様

やっぱり我が家だけでなかったんですね。
関西系なのかな?

「目にゴミが入ったとき」、なるほど、親が子供のことを
大事にしますから…と言って祈る…。
なんだがじわっとするおまじないですね。
これは初めて聞きました。いいことおそわりました。

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Unknown (とんぼ)
2013-07-06 13:21:58
爺様

本のご紹介、ありがとうございます。
着物は体にいいというのは、
着物関係のプロのかたもよくおっしゃいますね。
私も着物を着ているほうが「腰」にいいのが、
よくわかります。
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Unknown ()
2013-07-07 00:45:54
指を針で刺した時に 
鋏の握り部分で叩く事はしませんで
絞って 血と共に毒?を出す事をしました。

脱いだ!脱いだ!脱いだ! の
三回呪文は 今でも使いますよ
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Unknown (とんぼ)
2013-07-07 18:29:35
惠様

確かにぷつっと血が出ると、押してしぼれといわれましたね。
針の先はばい菌ついてるからと。

脱いだ…は、私もやってます。
早口言葉みたいに、だだっと。
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Unknown (青空)
2019-10-08 14:56:36
脱いだ を検索していてこちらにたどり着きました。

我が家では子どもの頃から「脱いだ」は当たり前だったんですが、先日PTAの腕章をつける時に言ったらつけてくれようとしていた友人にぽかーんをした顔をされてしまいました。

そのことをSNSで聞いても、皆さん知らないと…。
代々京都市内にお住まいの方も知らないと仰っていたんですが、どのあたりだと通じるのでしょうね。
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Unknown (とんぼ)
2019-10-08 15:14:37
青空様

今の時代は、地域というより年代…なのかもしれません。
若い人に聞いても、知らないですしね。
それと、なんといいますか「針を使う」ということが、
今なくなってきていますでしょう。
ボタン取れてたら、別の着ていけばいい、みたいな?
着たまま縫う、という場面も、それでなくとも少ないですから、
消えてしまった言葉なのかもしれません。
伝わらないと、なくなってしまうのですよね。
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