月曜日の深夜、ひっそりと静まったとんぼ家の台所から、ぼんやりと蛍光灯の灯りがもれている
家人はもう寝ているし、外も静まり返っている。
「だいじょうぶ、今なら誰にもきづかれない…」
とんぼはひとつ深呼吸をすると、しっかり握り締めていたこぶしをやっと解いて、
大きな引き出しの取っ手に手をかける。あけるのに勇気がいる…やらなきゃ!
もう一度深呼吸をしてから、とんぼは一気に引き出しを引っ張り出した。
「ぎゃーっやっぱり…」
あぁまたやっちゃったよ、これはなに…元はピーマンだな、すっかり乾燥しきっとる。
コッチは…なんでネギのシッポがころがっとんねん。あーちぎれちゃったのが奥にいっちゃったんだ。
えーとこれは、ありゃー生協で安売りのかぼちゃ、ちょっと残しててんぷらにするつもりが…。
それとなにこれは…
そう、深夜のとんぼ家のスリラーは、冷蔵庫の野菜室引き出し…。
いやぁ我が家の冷蔵庫は、前に戸棚があるので、まん前に立つと、
野菜室の引き出しが一番奥まで開けられないんです。
つい半分くらいまであけて、手前だけ出し入れするものですから、
いつのまにか袋から出ちゃったピーマンが、一番奥で乾燥しちゃったりするんです。
気をつけてはいるんですがねぇ。時々横にすわりこんで、こうして確認作業しないと…。
何で月曜の夜かって?火曜日が生ゴミの日だからです。
そうです、明日の深夜…またやるのです。今日やりゃいいじゃん…だからゴミがね…。
農家の娘だった母に育てられていますから、お米をムダにするな…は、叩き込まれました。
今でもお米をお釜に入れるときに一粒こぼれても、しっかり探すほうです。
でも…母は農家の生まれのくせして、ほかのものについては割りと鈍感…でした。
元々料理が好きではなかったからだと思いますが、冷蔵庫の奥に、
賞味期限切れのつくだになんてのが、すっかり干からびてたりしました。
父が細かい人ですから、時々「点検」しては「これさ、食べちゃわないと…」なんて。
それをすると今度は母が「アンタはどーしてそう、こまいことばっかし気にしはんねん。
台所は女の領域や、ほっといてんか!」と始まる。不利だとわかっていても、負けない母でしたねぇ。
さて、私はというと…やってますね。冷蔵庫の上段の手の届かないところとか奥の方とかに、
「あれっ、あのビン、なんだっけ」なんてことがあります。
主人は背が高いので、冷蔵庫を開ければ上も奥も見えるはずなのですが、
自分の飲みたいものにしか興味がありませんので、毎度ドア・ポケットしか見ない…エガッタ…。
あぁ買い物に行かないからと、ついネットスーパーであれもこれもと買い足して、ダブらせたりしてるアタシ。
元々家計簿も三日ともたない私ですからして、主婦を名乗るのもおこがましいのです。
今日は、寒いのでシチューねぇ…と息子に言った後で「にんじん」が見当たらない…なんで?
あったはず…最近これが多い…。結局にんじんなしで、かわりに残り物のえのきとキャベツもいれて、
なんか色目のしろっぽーいシチューになりました。
あぁ寒いときは、キモチも体もピリーッとするもんだけど、
おかーさんの場合、アタマの中だけは、いつもはるぅ~~、でオツムあったかいのですー。息子、ごめんちゃ!
考えて買いますが、何処かへ出掛けて
外食すると段取りが変わって無駄にな
ったり、作るのが面倒で簡単なおかずに
変更したりするとダメにしてしまいます。
ゴミ当番さんに分からないように処分
しなければなりません。
そうなんですよ、ちょっと予定をかえると、
なんか材料がおせおせになったり、
使い忘れたり…。
始末するゴミの日は、うしろめたーいキモチで
捨てに行きます。
バチあたりなんですけどねぇ…。