義父の形見の「とんび」です。ちと大きめですが、お福ちゃんに着てもらいました。
長さが身丈分ありますがな…。
ブログのお友達から「寸法を知りたい…」というお話しがありまして、
ここへ引っ越してきてから10年ぶりくらいでひっぱりだしてきました。
まずシワシワ、でもって…重い!ほんとにこんなの着ていたのかと思うくらいです。
義父は背は160あるかないかだったと思いますが、体格はガッチリ型、きっと似合ったでしょう。
これを実際に着たのかどうかはわかりませんが、いや着て歩くのも重労働??だったのでは…。
とんび、と呼ばれるのは男性用和装コート、の部類に入りますが、
元々「西洋」のものが基本形ですから、和裁ではない…のです。
それで和裁の本には、ほとんど載っていません。
わずかに70年代の大塚末子さんが書かれた「和装コート類の本」のなかに
載っているのはわかっているのですが、この本がまた手に入らない…のです。
今はもう男性が着物を着ませんから、コートなんて更に需要がありませんしねぇ。
ただ、元々は「洋装」ですから、洋服で着たって、かっこいいのですよ。
専門に作るテーラーもまだあります。
最初は「インバネス」と呼ばれるヨーロッパのコート。
これがですねぇ、私もつい「慣習」の方に流れて「インパネス」つまり「ハに半濁点」で言ったり書いたり、
してしまってまして…反省です。つい「通っているほう」で言ってしまう…。
インヴァネス、といえばわかりやすいですね。正確には「インバネス」です。きをつけなくちゃ…。
インバネスは背広の背中にケープがついているもの。シャーロック・ホームズが着ているアレです。
女性の和装コートにも「へちま衿」とか「千代田衿」とか、いろいろあるのと同じで、
ケープのついた背広、といっても、取り外しできるものがついていたり、縫い付けだったり、
袖があったりなかったり…「定番」といえるカタチはなかったらしいです。
着る地方の天候(気温)や目的、富裕の別などで作り分けられたのでしょうね。
それと先に「ケープ」と「マント」の違いなんですが、
どちらも肩先にかけるようにして着用するもので、袖のカタチになっていないもの…。
長さの規定はないのですが、マントといえば普通はそれだけでコート代わりになる長さのあるものが普通です。
ケープは長くても腰のやや下くらい。
これを踏まえて私はインバネス等についているのは「ケープ」と言いたいと思います。
これが明治時代に日本に入ってきたわけですが、和装にするには洋服の形の「袖」がジャマ。
というわけで、袖を取ってしまったわけです。
それから、まず袖のないコートを作って更にそれにケープをつけたものが「二重回し」と呼ばれるもの。
背中が二重なるので、より暖かいわけです。
袖なしコートの後ろ身頃に脇から前だけケープをつけたのが「とんび」。
だから「とんび」はうしろにケープがひらひらしないのです。
まず、前をあけてみますと…これはおそらく昭和初期のものと思われますから、
ボタンも大きく昔の作り…という感じです。
ボタンのついているところが本来正面に来ますから、前の重なりも深いですね。
脇を跳ね上げてみるとこんなです。男物の着物は、袖付がほとんど下まであって、
「振り」はわずかに「人形分」しかありませんから、これくらいあいてないと、袖が引っかかってしまうわけですね。
女性用に作るとしたら、もっと脇を上まで合わせないと、風が入って寒そうです。
そしてカンジンの「脇から後ろ」ですが、こんな感じ。
黒くてわかりづらいので少し白っぽくしました。
前から見ると、ケープをかけているように見えますが、脇のところで縫い合わせてあります。
だから「とんび」は後ろにケープがヒラヒラはしないのです。
後ろ向きで、ケープを左右に広げると「とんび」みたいだから「とんび」と言うんですね。
コートにケープを更につけたものが「二重回し」、と上にも書きましたが、
需要がなくなって、呼び名やモノもあいまいになって、どれもこれもごちゃ混ぜで呼ばれています。
さきほどある和服屋さんで見てみたら「インパネス マントタイプ とんび 格安」…いったいどれなんだ…。
呉服屋さんからしてこれですから…。
元々防寒着ですから、日本では衿に毛皮などをつけたものがはやったそうです。
私は普通のマントに憧れていまして、いつか着て見たいものだと思っていましたが…。
例によって母はちゃんと持っておりました。こげ茶だったと思います。
前の左右に手を出す切り込みがあって、なかなかステキでしたが、
ちょっと借りて着てみたら…なんというか…てるてる坊主のよーな…。
母が、マントが歩いているようやし、やめとき…と。
それに、と母がボソボソと付け加えたのは
「それでのうても、そそっかしいねんから。これ着て転んだら、オマエ、顔からいくし…」
あぁなんという暖かい親心…なんて思うかいっ。
最近、女性でもあのとんびの形のコートを希望する方がいらっしゃるそうで、
あるサイトでは洋装和装、どちらでもいけます…と。なるほど。
私はやっぱり「マント」に憧れます。
ミシンで縫えますからねぇ…ホラまたヘンな欲がフツフツと…。
見るぐらいですが、マントの下は
そんな風になっているんですね。
なかなか見る機会のないトンビを
見せて頂けて嬉しいです。
父のものをもらって持っていたのですが、んんん、、、どこにいったかなあ?
私の印象もとにかく重いということでした。
主人が同じものを作ろうかとかなり迷っていたのですがいまだ実現しておりません。
こうして中を見せていただくと、凝った形状に感嘆しますねぇ。
うふふふふ
マントの出来上がりを拝見できるのを、楽しみに待っております~。
(プレッシャーかけるつもりはさらさら・・・・)
いらっしゃいました。
談志さんからゆずられたとか。
インパネスは、ヒラヒラから冷気が入るから見た目より寒いのよ~。
都会のものよ~(笑)と、じっちゃんに聞いたのを思い出しました。
でも、かっこいいんですよね。
襟と袖とすそにボアつけて、Aラインで…。
(遠い目)
くびれと縁がない人生です。
とんぼさんの物持ちの良さに脱帽!
調べる方がどんなキーワードで探されるかを考えると、致し方無い部分もあるかなと。
宮崎ではなかなか、トンビが出動する位に寒くなりません。気候と服飾は、改めて密接に関係
しているのだなぁと、記事を拝見しながら考えました。
和裁教室のお姉様(60歳後半)のお祖父様の物だったという「とんび」を
黒と茶色の2着頂きました。
昨秋に電話で
「とんびいらん?」と…
「旦那さんにどうかなってじぃちゃんのやけど」
???です…
理解するまで時間かかりました。
茶色の方は毛皮の付け襟がついてました。
虫食いひとつ無くクリーニング済で本当にラッキーでした。
主人が欲しいと言うので探していたのですが
かなりのお値段であきらめていました。
おっしゃるようにかなり重いですねー
そして、かなり目立つでしょうね。
私もマントが欲しくって、
おととしから探しているのですが全然なく、
去年からブームなのはケープ。
ケープじゃお尻が隠れないから寒いんです(*_*)
で、とんび買おうと思ったら、
きもの屋さんで5万してて、
貧乏な私はすごすご引き返しました・・・。
でも、重いんですね!?
それじゃあ、なぁ・・・・・・
昔、角川映画で金田一耕助が着てたのです。密かに憧れてました(^^;)
先日浅草のたんす屋でディスプレイされてるのを見まして、「浅草は古着でもひと味違う…」そのときじっくり見せてもらいました。
同行の友人がなんと!「とんび」を知らないのでびっくりして、つい「金田一耕助を知らないの?若い子じゃあるまいし!」(怒った)、さすが下町、お店に入ってきたお客さんがいいタイミングで口を出して受けてくれました。。。
そういえば値段を見なかったです。失敗!「もう作ってない希少価値で高い」のか、「もう着る人が居ないので安い」のか…?
ひっくり返して見たときイマイチぴんと来なかったのは、男性の着物袖の付け方が記憶になかったからですね。よくわかりました(^^)/
ほんとに、テレビや映画でないと、
見られなくなりましたね。
私も全種ほしいのですが、古いのはないし、
あっても高いです。義父に感謝!です。
ほんとに重いですね。シッカリしたウール。
きたらゼッタイ「肩こり」になります。
今作っても高いですが、昔も贅沢なモノだったのでしょうね。
衿に毛皮をつけられるようになっていますが、その毛皮の衿はありませんでした。
予算外だったのかも…?。