totoroの小道

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石走る垂水の上のさわらびの萌え出ずる春になりにけるかも(3)

2010-05-20 06:37:28 | 詩・短歌・俳句

ここまで学んできたところで、今度はこんな課題が出されました。
①作者はどこからこの情景を見ているのか?です。

これが出されると続けていくつか疑問点が出されました。
②教科書の解説文には「滝」と載っているけれど、どんな滝なのか。
③さわらびは、その滝のどこにあるのか?

今まで「作者の喜び」を探すために、とりあえず上の句を「切り」下の句の内容のみをとりあげました。今度は、逆に「上の句」を取り上げることになります。


つまり、下の句に作者の「喜びの感情」が読まれていますが、その喜びの対象が上の句に描かれているのです。

まず①です。
a 滝の上なのか、
b 滝の中頃なのか、
c 滝を下から見上げているかです。

これを解決する手がかりは
①石走る/②垂水の上の/③さわらびの
のどれかに入っています。どれでしょう?

②垂水の上という言葉が手がかりになるのだと思います。
教科書には「垂水=滝」となっていますから、その上が見えるのですから、少なくてもその上の部分が見える位置でなければなりません。

それから、早蕨を調べてみて、こんな文を見つけました。
さわらびは「早蕨」と書くのが普通になっているが、元来「さ」に「早」の意は無い。田に移し変える頃の苗を「さ苗」と言い、神を降す神聖な場所を「さ庭」と呼ぶように、この「さ」は聖なるものに讃美や畏敬の心をこめて冠した接頭語のようだ。
やがて1メートル近くまで伸びる葉の生命力を小さな芽のうちに詰め込んだ若い蕨は、春の聖なる食物でもあった。平安時代、貴族たちも蕨狩を楽しんだことが数多の和歌によって知られる。

ということは、ほんの小さな芽でなく、讃美や畏敬の心をこめて蕨を「さわらび」と呼んでいると考えてもいいのです。どちらにしても、蕨はわらびですから、それほど大きなものではありません。

だから、あまり遠くからでは見えないのではないのかという意見が出されました。

a 滝の上なのか、
b 滝の中頃なのか、
c 滝を下から見上げているかです。
も大事ですが、白糸の滝や、常連の滝や、華厳の滝みたいに大きな滝だと、とてもじゃないけどそんなに近くに行けないということが分かってきました。遠くからでは、早蕨は見えないからです。

ということは、滝のすぐそばで、岩肌を垂れ落ちる水の一滴一滴がみえる距離に作者はいるのだと分かります。
つまり、滝のイメージは、すぐそばまで行ける、谷川のちょっと急な部分、川が岩を滑り落ちるような部分に変わってきます。

近くから見える急流部分、だから上も下も見える規模と考えていいのではないでしょうか?

谷川と言えば、山奥だよね。
谷川の流れる岸にちょっとした崖があって、よくそこから水がしたたり落ちているよね。
そんなイメージの方がこの歌にあっているね。
そんな水滴がポタン、ポタンと滴る崖や上に蕨を見つけたんだ。作者は。

だんだん、メンバー皆のイメージがわき、それが重なっていきます。

そのとき、私の脳裏に浮かんだことがあり、こう話しました。
あのね、私は西浦という静岡と長野の県境の小さな山の学校に勤めていました。(ここは静岡県で唯一寒冷地手当の出る、山奥の学校です。)そこに、翁川という谷川が流れているんだけど、冬になると水がないのです。
冬は雨が少ないし、上流の水が凍るから水がないのです。
この翁川が、暖かくなると少しずつ水量がもどり、どこからか山女ももどってきます。春になるのです。
おそらく、この作者の蕨取りをした川もそんな山奥の谷川だと思うのです。
今までは、雪が降り、干上がっていた冬の谷川でした。
それが、春になり、雪が雨に変わり、谷川に水が戻ったのです。
谷川に水がもどると、その谷川の周りに生気がよみがえります。
そして、待ちに待った、蕨も顔を出したのです。
ああ、やっとこの山深い谷川も、蕨の芽吹く季節、すなわち本当の春が来たんだな、そんな気持ちで読んだんじゃないのかなあ。
と。

短歌や、俳句はきわめて少ない文字数で、情景や心情を読み表します。ですから、言葉を追求して意味が分かってもそれで終わりではありません。そこから、自分の経験に照らし合わせてかえって自由に想像してよいのだと思います。

ここで河島先生が、こう教えてくれました。
扇子って、中心に要があるでしょ。
普通の文学作品は、こう扇子の周りのひだひだ部分から勉強し、
次第にこの要の部分に迫っていくでしょ。
つまり、作者の思いや主題を読み取っていくよね。

でもね、短歌や俳句は、初めからこの扇子の要の部分しか無いわけよ。
だから、この要の部分から、いかに言葉を手がかりにして、イメージをこう扇子の周りに向かって広げていけるかってことが大事なんだよね。

納得です。

 

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
さずがですね。 (Mrヒデ)
2010-05-21 14:24:56
 前回のブログでは、辞書の有効性が大いに発揮されました。つまり15人で考えても解釈できないものがたくさん残りますよね。そのときに役立つのが辞書ですね。これでずいぶん正確に豊かに読み取ることができました。ただし、辞書にあることを酒井先生ように使えないとダメですね。辞書を使って文章に当てはめて解釈することを何回かすることによってできるようになると思います。また、今回のブログでは、想像力の豊かさが鍵になります。しかも言葉や文に表現されたことを手がかりにする想像力ですね。よい勉強になりました。
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Unknown (まろきち)
2014-07-12 22:35:37
実際にこの歌が歌われたとされる場所です。
ttp://www.geocities.jp/taruminoyashiro/index.html
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まろきちさん ありがとうございます。 (totoro)
2014-07-13 05:19:05
まろきちさん ありがとうございます.
大きなお社ですね。
古来、雨乞いが行われていた由緒ある聖地ですね。
次回、この授業を行うときに、このホームページを子どもたちに紹介しようと思います。
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