totoroの小道

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海雀Ⅱ

2010-06-14 22:03:18 | 詩・短歌・俳句

平野先生の話
ぼくなら、まず次のようなことをハッキリさせ、みなにこの詩の正確な、そしてだれにも共通なイメージを持たせるように指導するなあ。
具体的には次のようなことを指導すると思うよ。
と話され、視点を示してくださいました。

①場所
②天気
③季節
④作者の位置

詩って、少ない言葉しかないので、ある程度読者に読者なりのイメージを持つことを任されていると思うんです。
でも、それでも、それぞれの土俵が全く違ったら、それを互いに共有したり、相手のイメージを想像したりすることができず、学び会う機会が得られないと思うのです。

そんなことを話されました。

この平野先生のお話の内容は、とても大切なので、まず最初の提案通りに、このどこに、この詩を理解するための問題をつくる鍵があるか、変だ、分からないというところを探して教材解釈をし、その後に取り上げることにした。

A ①海雀、海雀、
  ②銀の点点、海雀、
B ③波ゆりくればゆりあげて、
  ④波ひきゆけばかげ失する、
C ⑤海雀、海雀、
  ⑥銀の点点、海雀。

の中の、Bが多数決で選ばれたので、この部分をさらに細かく分析することにした。

③波/ゆり/くれば/ゆり/あげて、
④波/ひき/ゆけば/かげ/失する、

このように、まず言葉を分けてみる。

ゆり=ゆれる=①ある点を中心にして前後・左右・上下などに動く。
くる=①ある場所からこちらに、近づくように動く。
あげる=①ある物を低い所から高い所に移す。
ひく=①物に手をかけたりして自分のほうに寄せる。
ゆく=いく=①ある場所から遠ざかるように進む。
かげ=④目にうつる姿・形。 
失する=なくす。失う。また、あるべきものを欠く。

こうして調べて、それを関連されて調べてみた。

ところで③と④の主語は何だろうという話し合いになった。
その主語を入れて関連させればよりわかりやすくなるだろうと考えたのだ。

③は、波が揺れながら沖の方からこちらに近づいてくると、波は海雀をゆれるように波間の低い部分から高い部分へと押し上げる。あたりの文になることがわかった。
主語は「波」だからだ。

④は、波がこちらから遠ざかって沖の方へ引いていくと、海雀の姿が見えなくなる。そんなところだろう。
こちらの主語は、最初は「波」だけれど、後半部分は「海雀のかげ」ではないかと考えた。

さて、ここでいくつかの考えが出された。
子どもは、かげを、影ととらえてしまう。つまり、日が当たった反対側の黒い影の部分を想像するだろうというのだ。
ここでは、辞書を引かせ、どちらがこの詩のイメージとして良いのか
①姿
②日の光の当たらない黒い部分
で話し合いをさせると良いと思う。

また、波が、ゆったりと上下しないと、「ゆりあげて」、「かげうする」というまったりとした時間の経過ができないことになる。
大きくゆっくりした上下動があるのだ。

ということは、これは海岸にザザ~ッンと打ち寄せる波ではなく、沖合のうねりの部分の描写であることが分かってくる。

だから、ある程度の大きさの海鳥である海雀が、点のように小さいのだ。
実際、運動場にあるサッカーボールがどれぐらい離れると、点に見えるかも話し合ってみた。

また、見えなくなったり、見えたりするということは、作者は、海の水面に対してほぼ並行である所にいることも分かる。
上から見下ろす位置にいたら、波間の海雀も見えてしまうからだ。

こうして考えていくと、先ほどの平野先生の言った作者の位置が分かってくる。
波打ち際か、そこからどれぐらい離れているのかは分からないが、平らな海辺にいて、沖に浮かぶ海雀を見ているのだ。

 

A ①海雀、海雀、
  ②銀の点点、海雀、
を考えてみると、銀の点点は海雀のことだ。点々とせず「点点」と表したのは、点のように小さいけれど一匹一匹が海雀と分かる距離だということ、またかなりの数の海雀が波間に漂っている様子が浮かんでくる。

そうした、一群の海雀が、見えたり見えなくなったりするのだから、うねりは決して小さいものではないだろう。

またこの詩からは、色彩があまり感じられない。銀は、「しろがね色。◇降り積もった雪のたとえにも使う。」の意味であるから、鈍く光っている灰色。影は、黒に近い色を想像する。つまり、色彩豊かな風景を歌っているのではなく、光と影のコントラストを歌っているのだと分かる。
明るい(暖かい)太陽に照らされた海ならば、光をうけて青々として、きらきらして、生気を感じる表現で表されるであろう。
「点点」「かげ」という表現から、光は、あるのだと思う(夜ではない)。銀は光を鈍く反射する色であるし、かげは光がなければできないからだ。

すると、なんとなく、冬の曇った海辺の風景を思うことができる。

そう話し合うと、先ほどの平野先生の出された視点がほぼ具体化できていく。

ここで、河島先生が「分解」という言葉を出して教えてくださった。
文を分解して調べると色々分かるよね。
分解って漢字を書いてみるとよく分かるけど、
分けて考えてみると、よく解るんだ。だから昔から、大事な学問は「分解」することを通して行ったんだね。

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1 コメント

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解説でよくわかりますね。 (Mrヒデ)
2010-06-15 09:39:38
 いつも会の世話をしていただいて助かります。
 今回も研修会の内容を詳しく報告してくれたり、不足している部分を補ってくれたりありがとう。参加した人は、このブログで海雀の詩の解釈がいっそう深まったのではないでしょうか。また、参加できなかった人もどんな勉強をしたのかが分かりますね。
 私が1日研究会を開催するといいですねと言ってしまいましたが、ほんとうにそのように感じます。やることはいっぱいあるように思います。また相談しましょう。 
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