リーガル・ハイの後のフジ火9枠で始まった 「息もできない夏」
それまでの惰性で何となく見始めたのですが、テーマは 「無戸籍」
母親の事情で戸籍のない主人公(武井咲)が様々な生活上の支障を受けたり、夢まで奪われそうになってしまう。
熱を出したときにリンゴをすってくれた母親との思い出まで、健康保険証がなかったからだと気づき、すべて否定されていく。
というとても重いテーマのドラマで、健気な武井咲の演技が涙を誘います。
さて、この「無戸籍」 法律の盲点ともいうべき欠陥で生じてしまいます。
民法772条は、妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定し、また、婚姻解消の日から
300日以内に生まれた子も婚姻中に懐胎したものと推定しています。
子の福祉のために、早期に父子関係を確定させようという規定です。
しかし他方で、離婚成立前から夫と別居し、別の男性との間で子を懐胎した場合、
生物学的な父親は別の男性であるにもかかわらず、法的に夫の子と推定されてしまうため、
出生届を出すと血縁関係のない夫が父親になってしまいます。
生物学上の父親を、戸籍上も父親とするためには、
(1) 夫を相手方とする親子関係不存在確認の調停(または訴え)
(2) 生物学上の父親を相手方とする認知の調停(または訴え)
をしなければなりません。
(なお、婚姻の解消または取消し後300日以内に生まれた子のうち、医師の作成した「懐胎時期に関する証明書」によって、懐胎の時期が婚姻の解消または取消し後である場合には、前の夫を父としない出生の届出をすることができるので、裁判手続は不要になります。)
ところが、こうした手続をとると、夫に、子が生まれたことや現住所などを知られてしまうおそれがあります。
DV被害を受けていたなどの理由で、夫にどうしても知られたくないという場合には、手続をとることが怖くなり、結果として出席届を出さずに「無戸籍」になってしまうのです。
「息もできない夏」も、そうした原因で無戸籍になったという設定です。
木村佳乃さん演じる母親を見ているとイライラしてくるのですが、DV被害のトラウマというのはそれだけ深刻ということでしょう。
残念ながら、今のところ、このドラマには弁護士が登場しません。
こういう問題こそ、弁護士が力を発揮すべきだと思いますが。
最終回あたりに、突然、古美門登場・・・・なんてことはないですね。
民法772条は、1898年、今から110年以上も前にできた法律です。
近時のDNA型鑑定の進歩からすれば、生物学上の父親を確定させることは難しいことではありません。
いろいろな救済措置があるとはいうものの、今や必要性の薄れた民法772条は、見直すべき時期が来ているのかもしれません。
民法772条の問題について詳しくは法務省のHPへ
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji175.html
「息もできない夏」はこちら
http://www.fujitv.co.jp/ikimodekinai_natsu/index.html