弁護人を務めていた裁判員裁判で判決の言渡しを受けました。
「懲役4年」
事実関係(有罪か無罪か)に争いがなく、量刑のみが争点の裁判でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/07/127c6786b0a35f4d72e4bd4c5037c294.jpg)
最高裁判所が、裁判員裁判の対象罪名については裁判例を集積して「量刑検索システム」を作成しています。
弁護人、検察官、裁判官もそのシステムを利用して過去の裁判でどのような量刑になっているかを調べることができるのです。
さて、今回の裁判。
裁判の前に「量刑検索システム」で調べたところ、珍しい罪名だったため5件しか裁判例がありませんでした。
そのうち4件が懲役4年、1件が懲役5年
但し、懲役5年の事件は、他の事件も一緒に裁判しているのでちょっと前提が違う事例でした。
こんなの見たら、懲役4年にしかならないじゃないか!と思いつつ、
それでも所詮4件だけで統計的価値は低いし、今回の事件の個別事情からすれば執行猶予付きの判決で十分ではないかと弁論で挑んだのですが、結果は冒頭のとおりです。
裁判員裁判では、一般市民から選ばれた裁判員が量刑も判断します。
(アメリカの陪審裁判では、陪審員は有罪か無罪かのみを判断し、死刑以外の量刑は裁判官が判断します。)
裁判員が量刑することで、犯罪に対する不安感、被害者への感情移入から厳罰化が進み、検察官の求刑以上の重い判決が言い渡されたりしてしまうことがありました。
しかし、それでは裁判の公正さが失われるというので、裁判所は量刑判断の手法を指定し、量刑検索システムの活用を薦めるようになりました。
私は、量刑は犯罪事実の行為と結果に基づき決めなければならず、感情的に行ってはならないと思いますし、他の事案との公平性も重要だと考えています。
ですので、基本的には裁判所の今のやり方は正しいだろうと思っています。
とはいうものの、そういうやり方で量刑判断をすると、量刑は裁判をするまでもなくほぼほぼ決まってしまっています。
今回の裁判は事案そのものを見れば、必ずしも刑務所に服役させなくても、執行猶予にしてその間保護観察にして社会内で更生する機会を与えても良いと思える事件でした。
しかし、今の量刑判断の仕組みでは、量刑検索システムの枠組みを超える量刑判断を求めることは極めて困難です。
裁判員なら前例にとらわれずに、実質を見てくれるのではないかと訴えたのですが、壁は高かった....残念です。
今年は裁判員制度が始まって10年、裁判員が量刑判断に加わる制度を被告人のために活かしていかなければ!