クモには、安らげる場は劇場だった。今日の舞台をひとしきり思いうかべながら佇んだ。宝飾店には根っから興味がなく、雑踏に愚痴るように、クモは耳目を殺したがった。
「日曜日だから仕様がない。早い目に家をでてきてよかったよう。開演に間にあえばいい」
とぼそぼそいった。劇場を遠く感じさせた人波を、クモはためいきまじりに憎みすらして、右耳にジャズをガンガン聴いて入った。
(つづく)
「日曜日だから仕様がない。早い目に家をでてきてよかったよう。開演に間にあえばいい」
とぼそぼそいった。劇場を遠く感じさせた人波を、クモはためいきまじりに憎みすらして、右耳にジャズをガンガン聴いて入った。
(つづく)
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