50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「やはり、おじさまは・・・

2015-03-25 20:00:00 | 小説
「やはり、おじさまは失礼でしょうが、年齢の差はどうしようもありませんでした。だって片や曽根崎心中なんだし、ぼくも彼女もミュージカルのファン・・・・・・今度二人でご招待します。身内が何ていったって外に求めようもない彼女なのです。パッと明るいミュージカル好きなんですよ。揃って楽しみたがってました」
と彼はうまく話をもっていっていた。こう、
「初夏って本当にいいですよね」ともいった。でそれから彼は得々として、以下のように話した。

(つづく)

皮張りのドアを開けて・・・

2015-03-24 20:00:00 | 小説
皮張りのドアを開けてロビーへと年増女がしゃなり現れる。トイレだろうか。しかし辛抱できない女もいる・・・・・・。クモはその和服姿を見送ると、今度は熱心に耳を傾けて始めた。観劇が挫かれても、なお妻の姪にかかわる若者に、砂漠のオアシスでまる裸の美女に出会うような態度を望んでしてやろうではないかとも思った。

(つづく)

独白めかすと嘘が・・・

2015-03-23 20:31:22 | 小説
独白めかすと嘘がで易いらしく、若者は平気でそうだが、クモはうっかり信じていて、
「それが筋だろうな。しかしまあまじめな君のようだから、君のおとうさんも安心だろうね」
筋違いな悟った風なクモのそのものいいに、若者がすっかり調子に乗りだて、
「体だけは丈夫だな。なんてよく皮肉いわれてます。お嫁さんは都会も田舎もない、体が丈夫ならいいなんて」

(つづく)

【閑話】父の言葉から・・・

2015-03-22 20:00:00 | 小説
芸は過去、未来へと向く現代人の表現。そのフィーリングとスタイルにあるでしょう。思うに肩の力を抜いて、と言うよりは肩の力を抜き過ぎないようにと申し上げたい。そうしてなお、言葉の発展がなくては、文化政治経済のそれは基本において難儀でありましょう。国の発展に言語が森厳に関わってきたように。折角の自由と民主主義を謳歌いたしましょう。自分(エゴ)に閉じこもらない。例えば金銭的に釘付けされ続けるのはその逆の典型かも知れません。表現とは他人に伝える生のようである。

ぼんやりとクモは・・・

2015-03-21 20:00:00 | 小説
ぼんやりとクモは彼の目線をたどる。艶めく初の絵姿。それが何とも遠い先妻を忍ばせている。その一方で耳に若い男の声がしきりに届く。クモは頭の中でその回想の部屋をでて閉じ、彼が聞こえる一方のその部屋に急いできていた。逃げてきている。
「お会いしてること、彼女は知らないのです」

(つづく)