劇場の出入口に・・・ 2015-03-20 21:45:49 | 小説 劇場の出入口に曽根崎心中のポスターが見え、独白めかしてぶつぶついっている若者で、 「ぼくはなまいき、少し高慢ちき、おじさまといって甘えているわけじゃありませんが、このロビーがお話しよいと思ってきてました」 と若者がいった。 (つづく)
クモにすればこの先首都で・・・ 2015-03-19 21:24:19 | 小説 クモにすればこの先首都で生きなければならない。もう一人の女との生活を思う時、負けてみじめになって別れたくもない思いが先だった。一方では恋愛が始まっていたばかりだからだった。 「勝手なのよ。都会ってあなたのような人間が、うじゃうじゃいるところ。こちらからおことわり。明日の朝故郷へ立つわ」 (つづく)
テーブルをひっくりかえし・・・ 2015-03-18 19:17:34 | 小説 テーブルをひっくりかえしかねない彼女の勢い。もともと見るからにやさしげなクモだったので、彼女が当然なエピローグを演じていたものだった。バラがヤケに赤く見えた。 「レベルの違いというか」 と棘には棘をとそういった。 (つづく)
「後悔すればいいのよ・・・ 2015-03-17 20:20:07 | 小説 「後悔すればいいのよ。先らで。あの女なら目に見えてます」 彼女の捨て台詞に、 「ほっといてくれ。知りもしない癖にさ」 「連れ子は男の子、でしょう。ちゃあんと知っているんですから。先週の日曜日、あの女と劇場に、いやねえ、あなたはでれえんとしちゃってまあ。私に対しては気どって・・・・・・恋愛論だの、価値論だのとごまかしばっかり。どうして?・・・・・・田舎者だからごまかせると思ったん?」
あっけない幕ひきを・・・ 2015-03-16 20:28:24 | 小説 あっけない幕ひきを知らせる風だ。クモとしてはこの窓のバラのように、いつも生きたがっていた。 「ぼくは今も変わらないさ。お互いさまじゃないのかな?」 クモはそう言って微笑、高慢ちきな若さの怖さとかが少しも胸にきていなかった。 (つづく)