普通は原作を読んでいると映画はつまらない物になっている事が多いが、これは非常に楽しめました。新潮新書、磯田道史著「武士の家計簿」は家計の記録の古文書から著者が経済学史上から読み解いている書で史実です。ですから脚本家と監督が、切なくも笑えるが温かく品格のある物語に仕上げて良かったと思う。特に猪山直之を演じた境雅人が生真面目であるが、心の底にある優しさが滲み出ていて良かった。それは彼の持ち味のマイルドな顔の表情にあると思う。ある映画評論家が息子の祝いの時、絵に描いた鯛を使った事を監督、森田芳光らしいウイットと誉めていたが、原書にはちゃんと「絵鯛」とあるのですよ。「貧乏を苦労と思わず、工夫と思えば良い」…身に沁みました。