ある時、あちらとこちらがある事に気づく。私はこちら側に来てしまったので、あちら側にいるままの知人や周囲の人は、もう、もう、どこかで遠い人。
こちら側は静かだ。そうして今までの私は、あちら側にいた昔の私は、こちら側の人を、自分とは隔たりある人と見てきた。そして、自分がそうなっている事に茫然としている。人の間を歩きながら、私以外はあちら側を生きているのだなと思う。その間には、越えられない、どれだけの深さがあるのかわからないような靄が立ち込めている。違うところに来てしまったのだな思う。
それは事実であるのだけれど、私はもう一度あちら側に戻りたいのだと思っているのだな、やっぱり。