吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

貴婦人と一角獣

2013年05月12日 | オルガン

ついに……、ついに、この日が。

観てきました。新国立美術館(美術館というか展示場ですが)貴婦人と一角獣展
思い起こせば19年前。家内と訪ねたパリのクリュニー中世美術館。
工事中で展示していなかったのよ。
あの悔しさ、無念さ。
とうとう、とうとう晴らす日が来たのね。

娘と一緒に行きました。

我が関心はこれです。「聴覚」 画像はWikipediaから
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/20/The_Lady_and_the_unicorn_Hearing.jpg

やっぱこれデスヨネ―。

テーブル・オルガン(英)、ティッシュ・ポジティフ(独)ですね。
この種のオルガンは、絵画や工芸品では非常に例が多いのですが、現物の残存例は非常に少ないというか見たことがありません。19世紀のものならばあるのですが。

パイプの長さは1オクターブで約半分になるのですが、大抵は高音部が長すぎです。
芸術的虚構は認められて然るべきものですが、ある部分は妙に細密でリアルなのに、パイプの長さというわかりやすいところの描写がアマいというのはおかしい、ということで、研究者は様々な深読みをしています。
デザイン上の理由でパイプを長くしている?とか。
音階が違う?とか。
1組のパイプを2列に配置しているのではなく、2組のパイプなのでは?とか。

ちなみに、1組のパイプを2列に配置すると、長さの変化はこんな感じです。
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/fb/1e91a7adcc97c550d7aba0bcb6587fc4.jpg?random=5fd716c3d60f2e0a0a96bb57374a35f1

結構急でしょ。

感じたのは、展示内容で、製作者、発注者を特定したり、図像の意味を推測したりということについてはいろいろやっているのですが、これほどはっきりと描かれていて、しかも一般には馴染みの薄いオルガンについて突っ込んだところが一切なかったことです。
普通、一言は欲しいところでしょ?

思うに、絵画、美術系の研究者と音楽、楽器関係の研究者の間には断絶といって良いほど交流が無いのではないか?

絵は絵、音楽は音楽。さらには音楽でも演奏者と楽器の研究者の間には暗くて深い河があるのではないか?

なんと言っても、圧倒的縦割り国家の日本ですからね。それはあるかも。

所詮この国は……。と嘆いて冷めていたのは昔のこと。
未開拓の領域と考えればこれはフロンティアです。
フロンティアってのは、個人だって2丁拳銃でやっていける世界ってことさ。

うん、良いね。暗くて深い河を飛び越えて、断絶した世界を渡り歩くんだ。
新たな冒険の予感だねっ。


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