吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

ANA機事故に思う

2007年03月16日 | 思うこと
ANA機の事故は、被害が最小で済んで本当に良かった。
冷静な行動をとれた機長をはじめとするクルーはエラい!
ただ、このクルーに対する賞賛がBBCの報道がきっかけのような気がするんですけど。
マニュアル通りの行動が出来ていたとすれば、これは最上の評価となりますね。

危機管理というのは、人間の能力を低く見積もった上で組み立てられます。
つまり、人間はいざという時マニュアル通りに行動出来ないという前提で、マニュアルを構築するのです。
練習や訓練の通りに本番で行動出来れば、それは大概の場合、成功です。
(今日、漫画の「ドラゴン桜」を立ち読みしたら同じようなことが書いてあって驚いた)
そう、練習通りの力を本番で出すのは実に困難なものなのです。
まして、自分や大勢の命がかかった状態で冷静に行動するのは不可能に近いと想定されます。

よって、マニュアル通りの行動がとれたということは、想定外に優秀なことであり、それを達成した者に対して与えられる賞賛は、罰と等しく、危機管理のプログラムの一部なのです。

まあ、マスコミによる賞賛は極めて情緒的ですけどね。

危機管理の基本は「リスクヘッジ」です。
損失があることを前提とし、いかに損失を最低限にするかという、非情な計算の積み重ねです。
日本人は伝統的にこれが苦手なようですね、言霊だの、縁起をかつぐだのと、不吉なことを考えたり、言葉にすることでそれが現実になるという観念がかなり心の深いレベルにまで根を下ろしてます。
それも確かにあるんですけどね。
でも、リスクを想定しながら、それを最小限に抑えるという考え方は大事です。

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2 コメント

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ヒーローを求めているのでしょうね (tosi)
2007-03-17 09:24:22
航空機は「事故は起こるもの」「トラブル」はあるもとして設計されています。操縦免許も事業用や路線免許などは事故・トラブル対応の訓練・試験がぎむずけれれています。
 航空機には航空法により「チェックリスト」と言うマニュアルの搭載が義務図けられていて離発着から通常飛行、事故トラブルに対するものもまであります。
 今回の事故も機長・コ・パイはこのチェックリストに従った対処をした結果人的被害が無かったと言う事です。つまり特別な能力をもってして対処したわけでは無く訓練通りの対処操縦を行った結果だと思うのです。
 賞賛されるべきはその操縦ではなくチェックリストには無い乗客への対応であり機長だけでなく全クルーであるべきだと思うのです。しかしヒーローを作りたがるマスコミにより機長だけがクローズアップされることに違和感を覚えてしまいますね。
 
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それが特別なんです (ひろなん@風琴屋)
2007-03-17 10:49:41
tosiさん、ようこそ!

>つまり特別な能力をもってして対処したわけでは無く訓練通りの対処操縦を行った結果だと思うのです。

緊急時に、訓練通りのことが出来るというのが、特別なことなんです。
十分な研究のもとに作成されたプログラムを、忠実に実行することが出来れば、人生のほとんどのステージで「勝ち組」(好きな言葉じゃないけど)側に入れます。
でもそれがなかなか出来ない。
訓練で優秀でも本番にからっきし弱い人も多いです。
人間なんてそんなものです。

飛行機の場合、機長=主操縦士ですからね、賞賛が機長に集中するのもやむを得ないところはあります。

正しく賞賛なり表彰なりはされるべきですが、タレントのような扱いはしないで欲しいものです。

プロがプロらしくないことばかリの昨今、こういうニュースは、うれしいです。
僕もある種の仕事のプロなので、気をひきしめていきたいものです。
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