花がすみ
2021-04-26 | 詩
花がすみ
満開の桜の下をひとり
いつもより
ゆっくりと歩いてゆく
ふりそそぐ花びらの中に
久しく会わない人達の顔が浮かぶ
いつか笑ったことも
あの日泣いたことも
花がすみの中では
やわらかな光にかわる
心はなやいで
誰か誘ってみようと思ったり
ひとり
追憶にひたろうと思ったり
夜(よる)ふけて桜の下を皆と
肩並べ
なごやかに歩いてゆく
舞いおどる花びらの中に
大事にしている人達の声が響く
いつか語ったことも
あの日悔いたことも
花がすみの中では
まどやかな実りにかわる
心ときめいて
愛を打ち明けようと思ったり
皆と
余韻を楽しもうと思ったり
ツカノマレーベル 春の詩 特別賞受賞