建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

中山間地域における今後の地域の持続に関するアンケート調査 福島県・水舟集落における地域の現状把握と今後の地域のあり方について

2021-07-15 16:45:28 | 書架(その他)

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地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会

建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会

Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021

 

 

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中山間地域における今後の地域の持続に関するアンケート調査 福島県・水舟集落における地域の現状把握と今後の地域のあり方について Report on Questionnaire Survey of University Students from Urban Areas and Residents on the Future Sustainability of a Mountainous Region the current situation of the region and examining the ideal way of future living in the region Keywords : Regional revitalization, multi-site residence, awareness survey, community development,mountainous area キーワード:地域活性化,多拠点居住,意識調査,まちづくり,中山間地域 In this study, we reported the actual situation by the attitude survey of the residents based on the workshops and exchanges between the residents in the mountainous areas and the university students from the urban areas. We conducted a problem-solving workshop in 2019 and a questionnaire survey in 2020. From the results, it is meaningful for local activities for residents, visitors and corporations to share goals and problem solving, and from various perspectives of each region, grasp the characteristics of the region, the intentions and interests of the residents, and such activities. It is considered important for each inhabitant to understand the area. ○森野耕司*,荻原雅史**,村川真紀***,佐藤 栄治****,山田あすか***** Koji MORINO , Masashi OGIHARA, Maki MURAKAWA, Eiji SATO and Asuka YAMADA 1.研究の背景と目的 1.1 研究の背景  中山間地域では急激な少子高齢化や人口減少により, 現在継承されている生活・文化が維持されない状況が起 こる可能性が高く,都市地域にはない中山間地域独自の 生活・文化の途絶が危惧されている。中山間地域の人口 減少は数十年にわたって問題視されており,国土の保全 や水源涵養等の視点からその重要性の指摘と共に,限界 集落の支援や集落の再編等が課題と認識され続けてき た。直近の既往研究では,中山間地域に人々が住みたい と思える要素として,経済的基盤の確立,主観的幸福度 の向上,移住・定住による地域及び住民自身への影響の 可視化が主要な柱として指摘されている。各地で,関係 人口や移住人口の増加を目指す取り組みが行われ,例え ば,中山間地域の生活に興味のある都市居住者に向けた 長期インターシッププログラムや都市部と中山間地域 の多拠点居住など,暮らし方の多様化を踏まえた取組事 例が見られる。 1.2 研究目的  本研究では,ある実例をもとに中山間地域住民と都市 部出身の大学生でのワークショップや交流などを踏ま えた,中山間地域の現状把握と意識調査を実施し,住民 の考え方や外部からの客観的な視点から地域の問題点 などを整理する。今後の中山間地域のあり方の1事例と して示すために,地域外部との関わり方や地域活性化方 法,中山間地域の将来の方向性を地域住民とともに検討 した経緯・状況を報告する。 2.調査概要 2.1 調査対象である水舟集落と地域の維持に係る大 学連携事業の概要   福島県二本松市木幡地区水舟集落は人口84 人,人口 *東京電機大学未来科学部建築学科 学部生 **東京電機大学未来科学部建築学科 講師 ***東京電機大学未来科学部建築学科 研究員・博士(工学)  ****宇都宮大学建築都市デザイン学科 准教授・博士(工学) *****東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) * Student, Dept.of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. ** Teacher, Dept. of Architecture,School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. *** Master Student, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. **** Associate Professor, Department of Architecture and Urban Design, School of Regional Design, Utsunomiya Univ. ***** Professor, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ. − 305 − 地域施設計画研究39 2021年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.39, Jul., 2021 分布は図2の通りで,世帯数27 世帯の集落である(2020 年現在)。過去7年間にわたり,当該集落では宇都宮大 学と協働で地域活性化に向けた活動を行っている。過去 の活動(表1,図1)では,農家民宿の営業開始や歴史・ 郷土料理の冊子作り,集落の外部者向けのパンフレット 作成などが行われている。これらを通して地域の活性化 への意欲はかなり高まっているが,人口減少や高齢化の 進行は止まらず,「地域の担い手」や後継者不足の状況 が続いている。 2.2 調査概要  2019 年度は,農家民宿プログラム2日目の午後に, 宇都宮大学と,ワークショップの趣旨により都市部から の被招聘大学生をファシリテーターとする住民との問 題解決型ワークショップを実施した(図3)。短期間で 様々な意見を聞き出すため,現在の集落内で起きている 問題をテーマとして設定した(表2)。また,CO V I D -19 の流行下にあった2020 年度には全国的にインバウンド や旅行者など移動を伴う経済活動を前提とする地域づ くりや仕組みづくりにはバックラッシュも生じたこと 図1 福島県二本松市水舟集落で行われる活動 :女 :男 N=67 現在の住民:84名 年齢年齢 単位:人 N=104 96~100 86~90 81~85 91~95 76~80 71~75 66~70 61~65 51~55 56~60 46~50 41~47 36~40 31~35 26~30 21~25 0~20 96~100 86~90 81~85 91~95 76~80 71~75 66~70 61~65 51~55 56~60 46~50 41~47 36~40 31~35 26~30 21~25 0~20 2013年 2020年 11 33 5 6 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 3 8 2 2 0 00 0 0 0 0 2 2 2 3 3 1 1 1 1 0 55 3 3 7 6 3 3 1 3 22 5 4 2 3 7 333 00 3 2 6 ※常在居住者のみ N: アンケート 4 4 5 6 6 男:36 人 女:31 人 男:53 人 女:51 人 (2020.12 時点) 判明人数 図2 水舟集落人口分布 表2 2019 年のワークショップ内容 図3 2019 年のWS 活動の様子 表3 アンケート調査概要 表1 これまでの集落と大学生の活動年表 A,B 班「空き家の活用方法」 「空き家の入居者に守ってほしいルール」「法人の使用上のルール」 C,D 班「耕作放棄地の活用方法」 第1 回(2019/10/19-20)【大テーマ「集落内の資源の利活用について」】 第2 回(2019/11/31-12/01)「空き家・耕作放棄地の使用上のルール」 調査内容 調査対象 調査期間 調査件数 調査項目 (個人) (世帯) 回答率 福島県二本松市水舟集落への地域活性化アンケート調査 水舟集落住民(18 歳以上の方) 2020 年11 月下旬~ 2020 年12 月下旬 個人用アンケート43 件*1 / 世帯用アンケート*2 23 件( 民宿世帯:4 件) 個人用アンケート60.5%(46 件/18 歳以上の住民数76 人) 世帯用アンケート85.2%(23 件/27 世帯) 1.これまでの宇都宮大学の活動について 1-1 宇都宮大学の取り組みは,水舟集落の活性化につながったと思いますか 1-2 宇都宮大学が行った以下の活動の評価してください 1-3 2019年度の活動は参加しましたか 2.大学との交流について  2-1宇都宮大学の活動で交流は増えましたか 2-2学生との交流以外でどんな活動が増えましたか 3.2020年の変化3-1 2020年は住民や外部の方との交流の変化はありましたか 3-2 2020年は祭礼などが中止になり住民同士の関わり方は変わりましたか 3-3 祭礼や集会を実施するのが難しいなかで,どの活動が重要だと思いますか 3-4 暮らしの面で不便になったことはありますか 3-5 暮らしの中でどのような場所がほしい・必要だと思いますか 4,空き家について  4-1 今,現在の集落内の空き家は何軒ありますか 4-2 空き家が原因で困っていることはありますか? 4-3 4-1で回答した空き家はどこにありますか4-4 空き家をどうしたいですか 4-5 -6 空き家は誰が管理をしたらいいと思いますか 4-7 新規入居者(移住者)は水舟集落の住民の感覚のズレは感じますか 5,耕作放棄地について 5-1 今,現在の耕作放棄地はどこにありますか? 5-2 あなたは耕作放棄地をどのように活用したいですか 5-3 耕作放棄地で農業再開する場合どんな農業をしたいですか 5-4 農業でで大変なこと,やることが難しいことはありますか その他ご意見 1,家族構成 1-1一緒にお住まいのご家族について教えて下さい 1-2 離れてお住まいのご家族について教えて下さい 1-3 コロナにより家族の関わり方は変化ありましたか 1-4 家族内で不便になったことはありますか 2,仕事について 2-1 コロナにより仕事への影響はありました 2-2 どんな変化がありましか 2-3 収入の変化はありましたか 2-4 どんな職業についていますか 3,農家民宿について  3-1 農家民宿を始めた時期はいつで, 延何人来てますか 3-2 2019年と2020年は何名の宿泊者が来ましたか 3-3 現在,民宿は経営していますか, 収益はありますか 3-4 最近宿泊客はいつ来ましたか 3-4-1 農家民宿再開で心配ことはありますか 3-5 2019年WSで相互理解が大変ということでしたが,解決のために何か工夫 はしてますか  *農家民宿を実施してにいない世帯には, 今後の民宿の実施についての アンケートを実施した 4,位置関係 4-1 自宅と所有の土地(農地)がありましたら教えて下さい *1:回答総数は46 件,有効回答数は43 件になっている。 *2:世帯用アンケートは、主に住民の家族構成など個人情報について調査している。 *3:空き家・耕作放棄地・自宅・所有の土地の位置関係ついてはアンケート用紙内に 配置してある対象地域の集落地図に記載していただいた。 アンケート調査概要 2013 郷土料理発掘WS 看板製作WS 地域カレンダーWS 集落の目標WS 体験プログラムWS 歴史WS 集落に関するWS 水舟集落の歴史WS 集落の未来を考えるWS 集落の未来を考えるWS 散策MAP 作成 活動報告 活動報告 活動報告 活動報告 活動報告 巨石散策MAP 作成 宇大学祭の出店 郷土料理レシピ本作成 看板制作 集落の歴史冊子作成 過去のWS についての考察 ↑体育館等の改修案 農村講演会 夏季冬季 2014 夏季冬季 2015 夏季冬季 2016 夏季冬季 2017 夏季冬季 2018 夏季冬季 2019 夏季冬季 WS調 査 民 宿 集落活動 集落のフィールド調査 住民へヒアリング調査 フィールド調査 住民へヒアリング調査 フィールド調査 住民へヒアリング調査 集落周辺視察集落散策 住民へヒアリング調査住民へヒアリング調査 アンケート調査 住民へヒアリング調査 実測調査 アンケート調査アンケート調査 農家民宿ガイドライン作成 民宿の提案 企画を提案 交流会(昼食会) 交流会(昼食会) 交流会(昼食会) 幡祭り見学幡祭り体験 ☆花木年間100 本植樹 ☆東屋を設置 ☆体育館等の環境整備 交流会(昼食会) 交流会(昼食会) 交流会(昼食会) グランドゴルフ大会グランドゴルフ大会グランドゴルフ大会グランドゴルフ大会グランドゴルフ大会グランドゴルフ大会 バーベキュー いも煮大会 農家民宿体験農家民宿体験 野菜収穫体験農業体験体験プログラム実施 ☆民宿開始 農家民宿体験農家民宿体験農家民宿体験農家民宿体験 WS:ワークショップ ☆:集落住民のみで行った活動 民宿感想報告会農家生活体験 から,主にこれまでの大学の活動評価,地域の変化, 2019 年度のワークショップ内容への関心についての個 − 306 − 人・世帯(世帯アンケートは農家民宿実施世帯用と実施 していない世帯用の2 種類を用意)アンケート調査を実 施した(表3)。 3.2019 年度ワークショップによる意識調査の結果 3.1 1回目:集落内の資源の利活用について   表2の「集落内の資源の利活用について」のテーマに 基づき,住民と大学生で4つの個別テーマの班に別れ て,住民の考え方の意識調査を兼ねたワークショップを 行った(図4)。この結果から,住民は,空き家・耕作 放棄地を自分たちで利用拡大するのではなく「人(法人) に来て使ってもらいたい」という共通意識があり,農地 の活用と生活者の呼び込みに対する意識が一体化して いる,と整理できた。しかし,この段階では,例えば, 空き家・耕作放棄地の使用上のルール,環境整備費用の 準備など多くの問題点が存在する。 3.2 2回目:使用上のルールについて   1回目の問題点で挙がった「空き家・耕作放棄地の使 用上のルール」をテーマとして,2回目のワークショッ プを行った。まず,住民が,集落内の空き家や農地の使 用者・法人に求めるルールについて意見を出す。住民の 意見として代表的なものは,以下の2点である;①空き 家入居者に,集落の常識である区費の支払いをするこ とや行事への参加など,現在の集落で行っていることは 守ってもらいたい。②農地利用に際しては,農業を使っ て観光資源を作って欲しい。また,この地に移住してく ることがなくても,空き家と耕作放棄地をセットにして セカンドハウスとして利用して欲しい。 その後,住民側から提示された内容に対して,潜在的 な外来の移住者(使用者・法人)の立場から,大学生側 が意見を出して,ルールの具体化を進めるという2段階 で,ワークショップを進めた。学生の各班は,住民が使 用者・法人に求めることがらは理解できたが,その求め に応じることは難しいという意見が趨勢を占めた。その 理由は以下の3点である。①集落住民と外来者には,生 活・職業歴や世代などによって常識の差異があることは 図4 2019 年度ワークショップ結果 使える空き家 使えない空き家 :問題 :問題 :問題 ・新規就農者への貸し出し ・集会等に活用する ・空き家自体の安全性はどうなのか ・住民の私有地は守れるのか ・取り壊しをする ・古材を再利用 ・費用の負担はどこからなのか ・古材利用時の所有権は誰になるのか? ・個人の私有地に被害が来ないか 観光者に対してコテージを開く 移住者への貸し出し①集団営農 ②農業を再開・再生 集団で農業を行って土地を再生する ・梅など簡単できるもので再開させる ・それらを加工して販売もしたい ・主体で動くのは誰なのか? ・安全性・獣害対策 など ③放牧を開始する 牛など放牧し,観光農園を設置する 現在,道路などの整備が されていない ・土地の集約化 ひまわりなどを植え,景観を観光資源にする ・広報拡大 ④景観をよくする ①農業をもう一度(農業自力路線) ②農業法人への委託(法人依存路線) ③農業自力・法人併用路線 ④農業以外(農業放棄路線) 簡単な農業を自分たちで再開させる仲間を増やさないと現実は難しい 法人に委託し,農営者に使ってもらう ・市区町村の協力が必要 ・調査が必要 ①②の合体型・できない部分委託 工業団地などして利活用する ・農地転用の問題・環境対策の検討 ・建設会社等への情報提供 など 定住者に来てほしい 農業をやっている人に来てほしい 地域に積極的に入って来てくれる人 求めているもの 人や法人に土地を貸し出している方 法人に貸し出しができてない方 ・手作業が重労働になり機械所有者に頼んでいる ・作業を細分化して委託を行っている ・土地の条件が悪い (畑が山化している,水はけが悪いなどが挙がる) 入居者のルールについて 2019 冬 : 最初に出た大きな要望 :補足 : に対しての住民の声 :大学生の声*1 :補足 ・地域にある程度理解がある人が来てほしい ・集落は入りやすい環境づくりをしたい ・集落として強制はしづらい時代 ・集落の区費の支払いをしてくれる人 ・行事などに参加してくれる人 最低限のことをやってくれる人に来てほしい都市部学生と住民の方々の常識 のズレを感じるのでお互いを理 解しないと暮らしていくのは 時間が必要 ・パンフレットに情報公開 ・入居前にルール確認 ・社会科見学等に使ってもらう ・観光環境整備を行う 問題対策として・・・ ○移住者に事前宿 泊してもらう ○成功事例を参考 にして展開してい く ・コミュニティに入るのが難 しい ・消極的になる可能性がある ・法律の対応が必要になる ・誰が管理をしていくか 理解しあえる機会として, 春:道作り,夏:グリーンアップ 秋:地区運動会,1 月新年会, 会社や団体で移住してくるのではなく 個人で生活をするためで来る人 ・中途半端な入居者はやめてほしい ・本業で農業をやるのは難しいかもしれ ないが趣味でもいいから農業は必須条件 ・集落の常識的なルール(区費の支払い など)は守ってほしい お互いに気分良く暮らせるために地域 つきあいができる人 趣味でもいいので農業に携わっている ・関心がある人 ・集落の受け入れ体制をしっかりして くれないと不安になる ・コミュニケーションを取れる場ない と集落には行きづらい ・空き家と耕作放棄地を セットとして提供する考 え(セカンドハウスとし ての考え) ・空き家と耕作放棄地の 法人は一緒なのかが気に なる ・ブランドつくりがいいのでは ないか ・日本の様々な場所に住んでも らいたい人に数年限定プランを つくる ・集落のパートナー(いつでも 質問できる)がいることで法人 付き合いがしやすそう ・集落のパートナーをだれが務 めるのか ・観光名称・特産物として,ワイン用 のブドウ畑を作りたい ・観光農園,市民農園の設置をしたい ・若い人・法人に来てほしい ・空き家と耕作放棄地をセットとして 使用してほしい ・住民が質問できるような環境作り A班 B班 : 住民から最初に出た大きな利活用方法 ※1:都市部出身の大学生からワークショップで出させれた意見 :大学生の声*1 :住民から最初に出た大きな利活用方法 :補足 :大学生の声*1 :住民から最初に出た大きな利活用方法 :補足 :大学生の声*1 集落内空き家の利活用について 2019 秋集落内耕作放棄地の利活用について 2019 年秋 第1 回ワークショップ「集落内の資源の利活用について」 2019/10/19-20 耕作放棄地使用上のルールについて 2019 年冬 A班 B班 C班 D班 C班 D班 第2回ワークショップ「空き家・耕作放棄地の使用上のルール」 2019/11/31-12/01 − 307 − 当然であり,自らの考え方の変容を強要されるようなら ば当地への移住を希望する外来者は少ないと思われる。 また,移住者向けのワークショップ等を行ったとして も,短時間では集落の「常識」のすべてを理解すること は不可能であり,また集落側も自身の「常識」は,常識 であるが故に意識的に捉えたり説明の俎上に載せるこ とは難しいと考えられる。②休耕地の利用は,法人とし ての利用を誘致する場合にはある程度規模のある運営 が想定される。従来の単位である" 休耕地+家" は,そ うした現代的農業経営とは齟齬があり,希望としては有 り得ても,条件とすると受けられるケースをかなり制限 してしまう可能性が高い。③いずれも,例えば大学で応 じた場合には住民の不満につながる可能が高く,共有さ れる要望ないし条件/ルールとして本ワークショップ を閉じることは難しい。  これらの意見交換を踏まえて,住民と使用者・法人の 相互理解が前提として必要であり,また,相互理解の度 合いによりルールの内容が異なることが認識された。こ のため,ワークショップの時点でのルール策定は難し く,使用者・法人を含めた時間をかけた協議が必要であ るという認識を共有して,終了した。共有には至ってい ないが,現在の集落における人口減少や若者の流出,担 い手の不足は,地域や地域での就労・生活のあり方が現 代的ニーズにそぐわない点が大きな要因であることは 明らかである。このため,集落や集落住民の意識の変化 なくして,新しい住民や産業,農業法人等の仕組みの算 入は非常に困難である。集落の「らしさ」を尊重しなが らの地域維持の検討と,集落がなんら変化しないことは 一致しない,などの認識を丁寧に共有していく必要があ る。 4.アンケート調査による住民の意識や過去の活動への 評価  C O V I D -19 の流行とそれに伴う急速なテレワークの拡 大などの社会情勢の変化により,2020 年には地方や郊 外への移住,多拠点居住が再び注目された。同時に,イ ンバウンドや観光業への過度の依存のリスクにも目が 向けられた。地方部では都市部ほどの流行拡大が起きな かったが,外来者に対する排除意識が強く,それらが行 きすぎであるとの報道もあった。  こうした社会情勢下にあった2020 年度は直接訪問は 実施せず,主にこれまでの大学の活動評価,地域内の変 化,2019 年度のワークショップ内容への関心について の個人・世帯アンケート調査を実施して地域の可能性を 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 世帯不明分① 世帯不明分② 世帯不明分③ 世帯不明分④ M・T M・T M・T M・T M・T M・T 世帯主57 男会社員 妻56 女会社員 長男30 男会社員 三男23 男会社員 父84 男無職 母82 女無職 M・S M・S 世帯主94 女農業 三男 58 男 農業 H・T H・T 世帯主72 男無職 無職 妻68 女主婦 K・I 世帯主 81 女 主婦 M・H 世帯主62 男 M・T② M・T② M・T② 世帯主64 女農業 妻60 女会社員 次男32 男会社員 M・M M・M M・M M・M 世帯主65 女主婦 三男33 男会社員 孫7 孫4 M・S② M・S② M・S② 世帯主62 男農業 父82 男無職 母84 女無職 S・T② S・T② S・T② S・T② 世帯主68 男会社員(パート) 妻64 女会社員(パート) 農業 農業 母86 女無職 長男39 男農業 S・T③ 世帯主69 男農業 M・K M・K 世帯主56 男会社員 父83 男農業 M・A M・A M・A M・A 世帯主56 男運転手 妻52 女店員 長女29 女店員 父81 男農業 O・K O・K O・K 世帯主84 男無職 妻80 女無職 子49 会社員 M・I M・I M・I 世帯主69 8件1件 3件 2件 2件 6件 7件 1件 1件 4件 2件1件 3件 3件 男パートタイマー農業・区長 妻68 女主婦 長男45 男会社員 M・Y M・Y 世帯主77 男農業元区長 妻67 女主婦・無職 S・Y S・Y S・Y S・Y S・Y 世帯主70 男自営業内装業・農業 妻64 女主婦内装業・農業 長男40 男会社員 義娘36 女主婦 孫0 M・Y② M・Y② M・Y② M・Y② M・Y② M・Y② M・Y② M・Y② 世帯主64 男会社員 妻63 女主婦農業 娘35 女会社員 義息子33 男会社員 孫7 女 孫4 女 祖父84 男 祖母84 女 S・K S・K S・K S・K 世帯主63 男塗装業農業 妻43 女主婦農業 子2 父89 男無職 S・Y③ S・Y③ S・Y③ S・Y③ 世帯主71 男無職 無職 無職 妻71 女農業 長男45 男会社員 次男44 男会社員 S・M S・M S・M 世帯主64 男会社員 妻64 女会社員 母90 女無職 S・S S・S 世帯主68 男大工 妻62 女パート S・M② S・M② S・M② 世帯主66 男土建業農業 妻65 女主婦農業 母90 女無職 S・T S・T 世帯主80 男無職 次女48 女会社員 なし なし なし なし なし なし 個人回答 世帯主 名前続柄年齢性別職業兼業・備考 仕事 :農家民宿実施世帯( 右の回答項目は 18 歳以上を対象 ) 空き家 認知件数 認知件数 耕作放棄 個人アンケート回答率60.5%(46 件/2020 年時点での18 歳以上の住民76 人配布) 世帯アンケート回答率85.2%(23 件/2020 年時点での世帯数27 世帯配布) 回答状況の●は「回答」,空欄は未回答になっている 表4 世帯アンケートで判明した個人アンケート・ 個人アンケート設問への回答者属性 − 308 − 模索した(表3)。 4.1 アンケートへの回答状況   世帯アンケートで判明している家族構成をもとにし た個人アンケート・2019 年度のワークショップのテー マである空き家・耕作放棄地の認知に関する個人アン ケート設問への回答者属性と個人アンケート有効回答 数と表4で判明した農家民宿実施世帯と農家民宿実施 世帯以外の人数と有効回答数を設問ごとに比較した回 答率を表4,表6に示す。表4で判明している農家民宿 実施世帯の個人アンケート対象者(18 歳以上)から15 人中14 人の回答を得た。また,表5に記載がある個人 用アンケートの回答項目では前半項目(宇都宮大学の取 り組み・交流)の有効回答数は全回答数の半数以上を得 ているが,後半項目(空き家・耕作放棄地)の回答数は 全回答数の半数以下であった。各世帯の個人アンケート の有効回答数を農家民宿実施世帯の対象者15 人と農家 民宿実施世帯以外の対象者56 人各々にて除した回答率 では,農家民宿実施世帯の回答率が農家民宿実施世帯以 外より全ての結果において高く,集落への理解が比較的 に高い傾向がある。  また2019 年度の宇都宮大学の活動への参加状況(表 5)は,農家民宿実施世帯とその他住民の参加割合は約 半分ずつになっている。 表7 活動への評価についての個人アンケート結果 民宿の回答 1-1の質問 2-1の質問 1-2 ①大学生の年2回の訪問 ②学祭で農作物やだんご汁の販売 ③看板作成 ④郷土料理レシピ本作成 ⑤パンフレット作成 ⑥水舟集落の歴史冊子 賛成回答→農家民宿世帯の賛成意見 民宿の回答→農家民宿世帯の回答者 1-1 宇都宮大学の取り組みは,水舟集落の活性化につながったと思いますか 1-2 宇都宮大学が行った以下の活動の評価してください 2-1 行った活動で住民の交流は増えましたか 0 25 50 75 100% 賛成意見反対意見わからない 56% 2% 42% 56% 2% 2% 42% 7% 70% 23% 75% 10 32% 19% 49% 賛成意見:活性化した 反対意見:活性化していない  わからない 賛成意見:またやりたい 反対意見:やらなくてもいい わからない 賛成意見:はい,増えました 反対意見:いいえ,変わってません わからない 回答数 賛成数 反対数 わからない 賛成回答 アンケート質問内容 回答データ 42 24 1 17 42 42 24 1 17 11 3 28 42 8 5 29 42 10 3 29 42 1 31 42 10 2 30 42 14 8 20 14 14 14 14 14 14 14 14 11 12 744467 26% 7% 67% 18% 12% 70% 23% 23% 5% 72% 全回答数43 件 4.2 宇都宮大学の活動への評価と活動による地域内 交流の変化   7年間の宇都宮大学の活動への評価と,地域内交流の 変化についての意識を表7に示す。宇都宮大学の取り組 み(1-1)で活性化したと感じているという回答が過半 数で(56%),同時に,住民間での交流(2-1)にもつな がっていると感じている回答者は32%であった。  過去の活動内容の再実施への要望(1-2)に関しては, 「わからない」が[①大学生の年2回の交流]以外の項 目で67%~ 75%である。②~⑥の項目では,各設問肢 の回答の有無にばらつきがあるため,単年度実施のイベ ントは参加していない,またはイベントから時間が経ち 記憶にないなどの理由が考えられ,再実施の要望を判断 できなかったと推測できる。  [①大学生の年2回の訪問]では「またやりたい」が 56%と過半数である一方,「わからない」の割合も42% を占め,必ずしも積極的でない層もいる。ただし,この 質問項目の「わからない(是非についての積極回答を避 ける回答)」の比率は,他の項目に比べれば低い傾向が あり,賛成にせよ反対にせよ意見を表明することに心理 的ハードルが低い項目であることは特徴的である。  訪問時の内容は,表1の交流会(昼食会)やグラウン ドゴルフ大会であり,イベントが単年度でなく継続して 活動参加率 47%(20 名) 0 25 50 75 100% 2019 年の活動参加人数・属性 世帯主会社員 世帯主大工 妻会社員 世帯主会社員 世帯主農業 世帯主無職 世帯主農業 農業 世帯主会社員 妻会社員 世帯主会社員 父農業 不明1 不明2 世帯主自営業 義娘主婦 妻主婦 義息子会社員 世帯主パートタイマー農業・区長 世帯主 元区長 内装業・農業 妻主婦 続柄 仕事 職業兼業 農業 続柄 仕事 職業兼業 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 :農家民宿実施世帯(※右の回答項目は 18 歳以上を対象 ) 53%(23名) 表6 個人アンケート有効回答数と表4で判明した農家民宿実施世帯と農家民宿実施世帯以外の人数と有効回答数を比較し た回答率 情9に3棹 93 93 93 93 47 87 87 27 40 47 40 47 27 73 27 27 20 20 20 33 33 53 27 20 27 13 33 7 0 0 20 27 53 20 33 20 52 50 50 46 50 9 45 41 4 2 0 18 5 7 21 7 9 5 4 2 7 7 21 9 5 4 5 7 4 2 2 5 4 23 5 11 4 29 28 28 26 28 5 25 23 2 1 0 10 3 4 12 4 5 3 2 1 4 4 12 5 3 2 3 4 2 1 1 3 2 13 3 6 2 14 14 14 14 14 7 13 13 4 6 7 6 7 4 11 4 4 3 3 3 5 5 8 4 3 4 2 5 1 0 0 3 4 8 3 5 3 43 42 42 42 40 12 38 36 6 7 7 16 10 8 23 8 9 6 5 4 9 9 20 9 6 6 5 9 3 1 1 6 6 21 6 11 56 全回答数 1ー1 1ー2 1ー3 2ー1 2ー2 3ー1 3ー2 記述 3ー3 理由 3ー4 3ー5 理由 4ー1 4ー2 4ー3① 4ー3② 4ー3③ 4ー3④ 地図記入 件数 件数 地図記入 4ー4 4ー5 4ー6* 4ー7 理由 5ー1① 5ー1② 5ー1④ 5ー1③ 5ー3 5ー2 5ー4 その他 項目表示数 1 2 3 4 5 民宿実施世帯の個人アンケート 民宿実施世帯の個人アンケート 個人アンケート その他世帯個人用アンケート その他世帯個人用アンケート 有効回答数 有効回答数 回答率*1 回答率*2 有効回答数 有効回答数(件)回答率(%) 個人アンケートの項目(18 歳以上を対象) 1:宇都宮大学の取り組みへの評価 2:大学との交流について3:2020 年の変化 4:空き家について 5:耕作放棄地について 農家民宿実施世帯の対象者15 人 その他対象者56 人(判明分) *1:世帯アンケートの家族構成で判明している, 農家民宿実施世帯の18 歳以上の個人アンケート有効回答数を農家民宿実施世帯18 歳以上15 名で除したパーセンテージ表示になっている。 *2:世帯アンケートの家族構成で判明している, 農家民宿実施世帯以外の18 歳以上の個人アンケート有効回答数を農家民宿実施世帯以外の18 歳以上56 名で除したパーセンテージ表示になっ ている。 *3:個人アンケート項目4-3①~④,5-1①~④に関しては空き家・耕作放棄地の詳細と場所どちらも認知している件数分の回答になる。①,②,③を回答した場合は3 件認知になる。地図記入は アンケートの地図上に空き家・耕作放棄地の場所のみ記入。件数は4-3,5-1, 地図記入とは別に認知件数を数値で聞いているものになる。 表5 個人アンケート・世帯アンケートで判明した2019 年の宇都宮大学の活動参加者 − 309 − 実施され,住民も参加者として楽しめる要素が認知や評 価につながるといえる。一方,反対意見には,[②学祭 で農作物やだんご汁の販売]で,「再実施の意欲はある が高齢化により身体的に活動に限界を感じる」という意 見もあった。このように,地域と共に実施する活動では, 継続性が重要であるとともに,年齢・意欲などの観点か らの配慮が必要と考えられる。 4.3 農家民宿の状況  表7以外の活動として,集落内の滞在場所の役割とし て,集落外部との繋がりを増やすことが期待できる農家 民宿を4世帯が実施している。世帯アンケートで農家民 宿実施世帯を対象に現在の宿泊状況と2019 年のワーク ショップで挙がっていた外部者との「相互理解」をする ための工夫について表8に示す。2020 年の宿泊客は前年 と比較すると,1 割未満になり,収益を落とし休業して いる民宿もある。外部から来る方が少なくなり,関わり ができにくい状況化で,「相互理解」への活動は進んで いない。また,農家民宿実施世帯以外19 世帯に農家民 宿実施への意向に関しての世帯アンケートを実施したと ころ,「実施したい」と回答した世帯は19 世帯中1 世帯 のみであった。 4.4 住民の空き家・耕作放棄地への要望について  2019 年度ワークショップでは,空き家・耕作放棄地 を自分たちではなく「人(法人)に来て使ってもらい たい」という共通意識があり,農地の活用と生活者の呼 び込みが一体化している傾向がわかっている。ワーク ショップでは住民個々人の意見は尋ねていないため,こ の機会に住民の空き家・耕作放棄地に対する認識を再 整理した(表9,表10)。空き家への要望(表9,4-4) として,「取り壊し」の割合が最も多い(32%)。2019 年度では移住者や新規就農者への貸し出しを求める意 見が多く挙がったが,各住民への調査では異なる傾向 が見られた。空き家の管理(表9,4-5)に関しては, 「①県や市役所に管理してもらいたい」が50%であっ 水舟集落周辺地図 0 20km 福島県二本松市 水舟集落 公会堂 体育館 毘沙門堂 鐘つき堂 鉄塔 金つき堂 運動場 ・看板設置(2016) 看板設置(2016) 看板設置(2016) 環境整備(2018) ・東屋設置((22001176)) ・花木300(本2植01木7) (201360~02018) ● ● ● ● ● 人口推移(調査) 2013 2020 104人84人 34世帯27世帯 ●:今住んでいる家 〇:住民把握の空き家 ※2020年アンケート回答分 ▲:過去の大学との活動 N ▲ ▲ ▲ ○ ▲ ○ 0 0.5 1km 1 3 4 5 6 7 8 9 2 ②⑮15 ②1⑮0 ②1⑮1 ②⑮12 ②⑮13 ②⑮14 父農業 世帯主パートタイマー農業・区長 世帯主農業元区長 世帯主自営業内装業・農業 世帯主会社員 妻主婦農業 世帯主無職 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨ 続柄 仕事 空き家位置の地図番号と回答状況 職業兼業⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ :農家民宿実施世帯( 回答項目は18 歳以上を対象) 回答状況の●は「回答」,空欄は未回答になっている 約150㎡ 約150㎡ 5年前程度から 介護施設入居のため 約80~140㎡ 5年前程度から 介護施設入居のため 約70㎡ 5年前程度から後継者いないため 約80㎡ 10年前程度から外へ転出したため 80年前程度から 隣町へ引っ越すため 【空き家面積】【空き家になってからの年数】【空き家になった理由】 ABCDE 表11 空き家位置関係の個人アンケート結果と世帯アン ケートから判明した回答者属性 表12 認知している空き家詳細・理由についての個人ア ンケート結果 0 25 50 75 100% 県, 市役所 移住者へ 4-4 あなたは空き家をどうしたいですか 4-5 4-4 で1,2,3,5 回答者。今のところ空き家を誰が管理をしたらいいと思いますか 新規就農者へ貸し出し観光者へのコテージ 住民の集まる場所にする 取り壊しをする その他 NPO法人 所有者 集落全員 民生委員 , 区長 その他 4-6 4-4 で4 回答者。取り壊しの場合,誰が主体となって動いたらよいと思いますか 4-4の質問 4-5の質問(取り壊し以外) 4-6の質問(取り壊し) ※複数回答者に関しては%表示, の回答数には複数反映 回答数 回答データ 6 0 7 0 0 2 0 20 5 6 2 0 4 2 23% 8 5 1 0 1 2 1 27% 32% 18% 50% 10%10% 20% 10% 34% 33% 33% アンケート質問内容 全回答数43 件 0 25 50 75 100% 自分で農業再開住民と協力して集団営農農業法人に委託その他 農業再開放牧農業以外その他 5-2 あなたはどのように耕作放棄地を活用したいですか 5-3 5-2 農業と答えた方にお聞きします。どんな農業をしたいですか 5-2の質問 5-3の質問(農業再開のみ) ※複数回答者に関しては%表示, の回答数には複数反映 回答数 回答データ 21 77 5 6 2 2 3 4 0 31% 30% 22% 17% 28% 29% 43% アンケート質問内容 全回答数43 件 表10 耕作放棄地活用についての個人アンケート結果 表9 空き家活用についての個人アンケート結果 表8 世帯アンケートで判明した農家民宿世帯情報 営業している 2019 年度の 1 割の収益 2019 年度の 0.25 割の収益 2019 年度の 7 割の収益 2019 年度の 0 割の収益 営業している営業している営業していない 当分の間, 営業をしない 対応をとる。 M・I宅 M・Y宅 S・Y宅 M・Y②宅 開業時期 のべ人数 2019 年宿泊客 2020 年宿泊客 2020 年営業状況 2020 年収入状況 宿泊客との相互 理解するための 工夫 コロナ禍での 工夫や心配こと 2015 年7 月~ 70 名 15 名 1 名 130 名20 名 6 名10 名 1 名 0 名 40 名 2016 年7 月~ 2014 年4 月~ 2013 年4 月~ 無理しないでコ ロナが終息し体 調が万全な時に 来てほしい。 検温,アンケー ト消毒をチェッ クイン・アウト 時に実施や洗面 所などに設置し ている。 記入なし特になし。いま まで通りで困ら ない。 料理程度の工夫 はしている お断りしている 農業体験対応, 経営者本人の 気力,体力など 特になし 約163 ㎡ 7 部屋 築37 年 約148.5 ㎡ 8 部屋 築45 年 約200 ㎡ 20 部屋 築128 年 約60 ㎡ 12 部屋 築120 年 農家民宿実施世帯情報 *1:M・Y 宅の2019 年・2020 年宿泊客に関しては記入なしのため, 斜線で表記。 *2:世帯アンケートで判明している世帯は, 農家民宿実施世帯4 世帯, 農家民宿実施 世帯以外19 世帯になっている。 − 310 − た。耕作放棄地(表10,5-2)は農業再開と放牧を希望 する回答者が61%であった。農業再開に関して(表10, 5-3)は農業法人への委託を希望する回答者の割合が 43%を占める。これは,中山間地域の過疎化・高齢化に よる人手不足や身体的負担が大きいためと,現実的な問 題として個人で今から農地の利用や管理を希望する者 が移住してくることが期待できないと考えられている ため,などの理由が推察できる。 4.5 住民の空き家と耕作放棄地に対する認識  空き家・耕作放棄地が集落内にどの程度存在している かは,その全貌が把握・認識されていなかったため,住 民が認識している空き家と耕作放棄地の位置と回答状 況を整理した。アンケートの回答を整理すると,住民が 空き家であると認知している集落内空き家の総数は15 件であった。所有の状況や,例えば法要の時には使わ れるので放棄されてはいない,等の詳細な情報は問わ ない。空き家の位置についての有効回答者は8名である (表11)。回答者の属性は世帯主で区長経験者2名,世 帯主3件,その他3名であり,農家民宿実施の世帯主は 全員回答している。回答者の理解による空き家の詳細・ 空き家化の理由(表12)として,家主の介護施設への 入居や,家主死去後の後継者不足が目立つ(3件)。 約5000㎡ 30年前くらいから養蚕農業の衰退 約3500㎡ 約8000㎡ 10年前くらいから転出,不便さから 約7000㎡ 10年前くらいから会社員で農業をやらないため 約1500㎡ 30年前くらいから旧桑園,養蚕を止めたから 【耕作放棄地面積】【放棄地になってからの年数】【放棄地になった理由】 約1000㎡ 1年前くらいから 高齢化でできない abcdef 水舟集落周辺地図 0 20km 福島県二本松市 水舟集落 0 0.5 1km 公会堂 体育館 毘沙門堂 鐘つき堂 鉄塔 金つき堂 運動場 ・看板設置(2016) 看板設置(2016) 看板設置(2016) 環境整備(2018) ・東屋設置((22001176)) ・花木300(本2植01木7) (201360~02018) ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ● ● ● ● ● 人口推移(調査) 2013 2020 104人84人 34世帯27世帯 ●:今住んでいる家 ■:住民が所有してる土地 □:住民把握の耕作放棄地 ※2020年アンケート回答分 ▲:過去の大学との活動 □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ N ▲ ▲ ▲ ▲ 1 8 7 5 6 4 2 3 4 世帯主パートタイマー農業・区長 世帯主農業元区長 世帯主自営業内装業・農業 妻主婦農業 世帯主会社員 1 2 34 5 6 7 8 続柄 仕事 地図番号と回答状況 職業兼業 :農家民宿実施世帯(回答項目は 18歳以上を対象 ) 回答状況の●は「回答」,空欄は未回答になっている 表14 認知している耕作放棄地詳細・理由についての個 人アンケート結果 表13 耕作放棄地の位置関係の個人アンケート結果と世  帯アンケートから判明した回答者属性 アンケートの回答を整理すると,住民が認知している 耕作放棄地の総数は8件であった。ここでの耕作放棄地 は,元々は農地として利用されていたが数年間耕作に利 用されていないなど,住民の認知・意識による。具体的 に何年以上かや,計画的に休耕しているか否かなどの実 情は問わない。耕作放棄地の位置関係の有効回答者は6 件である(表13,表14)。回答者は,世帯主で区長経験 者2名,世帯主2名,その他2名(農業をしていない会 社員1 名,不明1 件)である。空き家の方が耕作放棄地 よりも認知数は多いが,農業を行っていない住民の方が 多くの耕作放棄地を認知している。耕作放棄地は空き家 と比べて近隣を通るときなど視覚的にそれと推察しや すいため,区長等の住民の代表者が把握する住宅や住民 の動向とは異なる認知のされかたをしていると考えら れる。回答者の理解による耕作放棄地の詳細・発生理由 (表14)としては,所有者の高齢化・産業の衰退化が目 立つ(3件)。 5.総括  本研究では,中山間地域住民と都市部出身の大学生の ワークショップ,交流などを踏まえた,住民の意識調査 による実態を報告した。  2019 年度の問題解決型ワークショップでは,地域の 関係人口を増加させ,集落を活性化したいとの意見が あったが,ただ人を求めるだけではなく,第一義的に住 民側と来訪者や法人の相互理解が必要であり,空き家使 用のルール策定には,集落住民と外来者には生活・職業 歴などによって常識の差異があるため,相互理解の程度 に合わせた,使用する当事者を含めた時間をかけた協議 が必要と結論に至った。また,住民自身へも変化への受 容を促すが必要である。  また,2019 年度の活動を踏まえて2020 年度のアンケー ト調査を行った。これまでのワークショップでの意見収 集では,集落活性化に意欲がある住民の意見が耳目を集 める傾向にあるが,アンケートでは各個人の集落活動へ の認識・意向には,ばらつきがみられた。アンケート結 果では,住民の約3 割が集落の活性化に関する活動への 継続意欲があった。イベントの実施には住民も参加者と して楽しめる内容と継続性が重要である一方で,実施に は高齢化による身体的負担の高さが再実施できない要 因として挙げられた。  住民の空き家と耕作放棄地に対する認識では,ワーク ショップでは,空き家ヘの要望は,使用者・法人による 空き家・耕作放棄地の利用が意見として挙がったが,各 − 311 − 個人の要望では[取り壊し]が最も高いなど,個人の集 落内での活動状況によって要望の傾向に差異があった。  今回の調査では,空き家・耕作放棄地が地域の身近な 問題と認識されていても,実際に実態を把握しているの は農泊などの活動を主催している住民と一部住民であ る9人のみ(空き家と耕作放棄地の有効回答者)であっ た。これらより,住民側と来訪者や法人が目標や問題解 決を共有するためには地域活動に意味があり,そのため に,地域ごとに,様々な観点から地域の特性や住民の意 向,関心を把握しながらの活動の継続的な実施が,各住 民の地域理解と可能な将来像の共有のために重要と考 えられる。 今後,地域外部との関係を築ける農家民宿のような滞 在場所を空き家・耕作放棄地を絡めて検討するなどの拠 点形成も重要と考えられる。その際,こうした拠点の立 地,相互の距離と連携の形態,一時的〜中長期の利用を しやすい建物のあり方,そしてそれらが住民の活動や意 向にどのように反映され,地域に影響をもたらしていく かを追求していきたい。 謝辞    本研究にご協力いただきました皆様に,篤く御礼申し 上げます。なお,本研究は,科学研究費補助金(基盤B) 「「利用縁」がつなぐ福祉起点型共生コミュニティの拠 点のあり方に関する包括的研究(研究代表者:山田あす か)」の一環として行われました。 [参考文献] 1) 国土交通省,中山間地域等総合対策委員会,「中山間地域におけ る喫緊の課題をめぐる情勢と対策の方向について」取りまとめ, 平成19 年11 月21 日,https://www.maff.go.jp/j/study/other/ cyusan_taisaku/zyosei_taisaku/pdf/matome.pdf 2 ) 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター 環 境・エネルギーユニット,調査法億書『中山間地域の持続可能性 の維持・向上に向けた課題検討』 ,2019.06,https://www.jst. go.jp/crds/pdf/2019/RR/CRDS-FY2019-RR-01.pdf − 312 −

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