戸建住宅地における住宅配置と庭の変容過程
-西宮市上甲東園の計画的住宅地を対象に-
山口秀文、上野浩一
日本建築学会計画系論文集 第75巻 第654号,1807-1814,2010年8月
1. 調査目的
住環境マネジメントや空間計画によるコントロールを有効にするのに有益だと考え、上甲東園を例に敷地形状の変化と住宅の増改築・建て替えに着目し、個々の住宅配置と庭の変容過程をそれぞれ「家族の変化」と「住宅とその庭の変化」に合わせて明らかにする。
2. 調査方法
調査方法は現状の目視調査、開発から10年間隔で降雨腔写真と地図を収集
→配置図の作成
→「長期居住者」「敷地形状を維持している」住宅16事例を中心にヒアリングによる図面採取
3. 住宅配置と庭の変容
[全16事例共通]
・広縁と水まわりの増築
・南側の大きな庭を中心にそれ以外の2つ以上の庭をもつ。
・小さな庭は、玄関付近の前庭や水回りにつくられた庭であることが多い。
[建て替えのあった11事例]
・庭の維持がなされていたのは4事例。
[配置を変化した7事例]
・5事例で駐車スペースが新設及び移動されている→駐車スペースが住宅配置に影響を与えている
・南側を中心に2面以上の庭を維持している。
・前庭の位置は保ったまま建て替えを行っている。
4. まとめ
・住宅地全体は、①増改築が多い時期(開発直後~20年)②建て替えと増改築が同数になる時期(20~30年)③変化が少ない時期(30~40年)④建て替えの多い時期(40年~50年)の4時期を経て変容している。
・住宅の増改築・建て替えは家族の変化(家族の人数・子供の成長・2世帯住宅化)と大きく関係している
・西南北様々な方向に増改築が行われつつ、居室の増築方向と合わせて敷地内に南面の大きな庭と小さな庭の2つ以上の庭が造られている。敷地の四隅に倉庫などの付属屋、駐車スペースが造られている。
郊外のニュータウンのような一定の大きさの敷地規模や条件、計画時に造り込まれた建築条件、周辺環境がそろいうる戸建の住宅地においては、応用・発展可能である。
5. 感想
周囲に十分な庭をもち、住民に増改築・建て替えを行う意思があることが条件で、このような結果が現れたが、私はこの論文を読んで人が長く住まうには家族の変化に対応できるある程度の余剰空間としての庭が必要なのではないかと考える。
現社会のニーズとして新築より増改築、長期住宅がはやり始めているので、この内容を掘り下げることにより、長く住むことが出来る住宅が作れると感じた。
(鈴木 志歩)
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