地域施設計画研究40 2022年7月日本建築学会
建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会
Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022
・・以下検索用文字列…
まち・ひと・しごと創生総合戦略とそのモデル事業の類型化による 認識する課題と解決策パターンの分析 Analysis of issues and solution patterns based on the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and the typology of its model projects Keywords : Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities, Perceived Issues, Types of Solutions, Text Analysis,キーワード:まち・ひと・しごと創生総合戦略,認識する課題,解決策類型,テキスト分析 This paper analyzes the relationship between the geographical conditions of municipalities and cities, the issues they recognize, and the types of solutions (local resources and support methods) based on the texts of the "Comprehensive Strategy for the Creation of New Jobs, Towns and Communities" and its preceding model projects. The relationship between the geographical conditions of the municipality/city, the perceived issues, and the types of solutions (utilized local resources and support methods) is analyzed. In the formulation of the basic plan, the relationship between "geographical conditions and solutions" is more influential than "recognized problems and solutions," and the structure of the concept is easier to understand. On the other hand, it also suggests the need for guidelines in organizing perceived issues. ○山田あすか*,宮崎文夏** YAMADA Asuka and MIYAZAKI Fumika 1.研究の背景と目的 人口急減・超高齢化という大きな課題に直面する日 本では、高齢期のQOLならびに福祉の継続性の観点 から,地域内での自助・共助の仕組みなどを活用しつ つ,高齢者が適切な支援を受けながら地域で生活し続 けられる仕組みの構築が目指されている。これらは地 域包括ケアや共生型社会などのキーワードによって説 明され,それらの基本方針を踏まえて,政府は各自治 体が「まち・ひと・しごと創生総合戦略(以下;総合 戦略)注1,2)1)」として、自治体の地域特性を活かした 自律的で持続的な社会の創生方針を立案することを求 めている。この総合戦略は各自治体によって検討時期・ 決定の時期が異なり,特に早い段階でその立案を行っ ていた自治体は地方創生についての必要性の認識が高 く積極的な取組を行っている自治体といえ,後進のモ デルとして参照もされている。 総合戦略とその記述内容については,その前提方針 1/10 * 東京電機大学未来科学部建築学科 教授・博士(工学) ** 東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻 修士課程(当時),修士 (工学) * Professor, Dept. of Architecture, School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., Dr.Eng. ** Former Student, Master Course, Dept. of Architecture, Graduated School of Science and Technology for Future Life, Tokyo Denki Univ., M.Eng. と位置づけられるコンパクトシティ政策との関係がど のように盛り込まれているかの対応関係を調べて実質 的に70%ほどの自治体がコンパクトシティを明示ま たは関連計画と連携しているとした研究3)や,特に人 口減少社会における人口偏在のさらなる進行を緩和す る定住自立圏構想(ダム機能)としての地方都市の魅 力の顕在化といった価値を整理したレポートがある4)。 また,まち・ひと・しごと創生総合戦略のテキストを 分析し,その施策が大都市から市区町村単位の人口移 動,つまり人口偏在の解消に寄与しているかを分析し た研究5)では,テキストマイニングによって抽出され た単語「連携」が潜在因子として人口移動に効果があ ると示されている。 本研究では,本格的導入が検討されていた当時の「生 涯活躍のまち(旧・日本版CCRC)」を国内の先駆的モ デルとして,そのテキストや取組内容の分析によって これらの全体像を整理することを目的とする。その後 地域施設計画研究40 2022年7月 日本建築学会 建築計画委員会 施設計画運営委員会 地域施設計画小委員会 Regional Community Facilities Planning and Design, AIJ, Vol.40, Jul., 2022 − 169 − 2/10 徴的な類型から,当該類型の典型事例となる自治体や 取組の例を示して,各総合戦略の概要を把握する。 3.総合戦略テキストの分析による解決策・課題・地 理的条件等の関係 3.1 認識する課題によるクラスタ 自治体が施策設定のために記述している,認識する 地域の課題のキーワードを,類似した内容をまとめて いく方法により表3のように整理した。このうち,「老 年人口の増加・高齢化」と「年少人口の減少」,つまり 少子高齢化は,すべての自治体に該当した。このため, 以下で説明するクラスター分析の際はこのキーワード は対象から除外する。これ以外では認識する課題の キーワードは大きくは[人口減少・雇用環境・生活環境] の3つに分類できる。 このキーワード整理を元に,各自治体の記述に各 キーワードが含まれているときに「1」,含まれていな いときに「0」とおいて階層型Ward 法クラスター分 析を行うと,キーワードの組み合わせによって8つに の策定事例においては,先行事例を参照して類似の計 画を設けたケースが一定数含まれるため,各自治体の 特性や課題に応じた模索時期の計画の概要を把握する ことがまず,基盤となるモデルとしての理解に対して 妥当であると考えたためである。 本稿の構成として,第3章では,各自治体の総合戦 略の説明テキストから,国内での地域性や各市町村の 創意工夫に応じた解決策の類型化を行う。また第4章 では自治体が認識する課題とそのための解決策,地理・ 人口条件の分析によって,総合戦略の組立傾向を分析 する。5 章では,類型ごとに実例を挙げて居住者の生 活や交流の様子,地域への波及効果の想定などを整理 し,今後の整備や制度利用における「選択」や,効果 的整備のための資料としてとりまとめる。 2.研究概要(表1) 2017 年当時に各都道府県・市区町村が掲げていた 総合戦略のうち,地方創生先行型交付金など政府から 補助金を受けている42 の自治体(図1・表2)を分 析対象とする。 対象自治体の地理・人口条件(表2)と,総合戦略 の内容から「自治体が認識している課題」「解決策」を キーワードとして拾いあげ,類似した語をまとめてい く手法で分類・整理する。各自治体の総合戦略がどの キーワードを擁するかによってクラスタ分析・ロジス ティック回帰分析を用い,自治体を類型化する。 さらに,整理した類型のうち,該当数が多い等の特 凡例:CCRC構想,ひと・まち・しごと創生本部事務局取り組み事例 :ワースト5を表す 高齢化 率[%] 人口/可住 面積[人/㎢] 人口増減率 (H22~27) 可住面積/ 面積[%] 所要時間 (東京) 所要時間 (指定市) 凡例 :東京 :対象自治体 :うち,政令指定都市 表1 研究概要 図1 対象自治体と政令指定自治体,東京の位置関係 研究① 研究② 目的 対象自治体 総合戦略のモデル事業の類型化 地方創生先行型補助金など政府から補助金を受けている自治体 研究方法地理・人口条件と,総合戦略の内容から認識している課題・解決策のキーワ ードによるクラスタ分析,ロジスティック回帰分析より,類型化を行う 目的 対象自治体 今後の整備や制度利用における選択と,効果的整備のための資料づくり 研究①より類型化した事例のうち,参考となる自治体 研究方法対象自治体の取組・構想事例を挙げ,その位置付けを整理する − 170 − 3/10 人手不足 消費の減少 雇用機会 の少なさ 就業者数 の減少 生産活動 の厳しさ 子育てと就 労の両立の 困難 事業所数の減少 雇用の場が必要 安定した雇用の確保 非正規労働者の増加 職業観の連携のなさ 女性の雇用機会の不足 観光業の縮小 観光者数の減少 宿泊施設の不足 税収減 税収減の可能性 生産活動の低下の懸念 介護を理由とした離職の増加 生産年齢人口の負担増の懸念 所得向上の必要性 商工業の小規模事業者の高齢化 ・後継者不足の加速化の懸念 企業の経営継続が難しい 総生産額の縮小 第1次産業の対従業者数 の産出量の低さ 仕事・子育ての環境 が整っていない 雇用の多様 性のなさ 子どもの預け先が足りない 保育ニーズの対応が困難 仕事と子育ての両立が難しい 求人と求職のミスマッチ 多様な働き方を求められている 子育て世代の所得の低下 保育の経済面の負担が大きい 人材不足 後継者不足 人手不足の可能性 就業状況にマイナスの影響 を及ぼす可能性 人材確保の難しさ 消費の縮小 町外での消費傾向 経済規模の縮小の懸念 地域内消費の減少の懸念 経済規模の縮小 行政 地域資源 生活の 不安 地域の 環境 生活利 便性 生活での経済面の負担が大きい 移住の際の経済面の負担が大きい 犯罪・身の回り・防災力の危険性 自主防衛組織の希薄化 共助機能の低下の懸念 エネルギーの安定確保 地域防災機能の低下 都市機能の分散 不法投棄がある のいぬ・のねこ 地域医療環境が不十分 交通利便性・福祉施設入所 による転入 産科医療機関がない 医療・介護需要が縮小する可能性 医療・介護需要が増大する可能性 高齢者福祉の課題 自然環境 雪 無居住地域発生による地域 の保全が困難になる可能性 中山間部の衰退 生活利便性の低下 集落ごとの生活利便性の差 生活利便性に課題が生じる可能性 都市部との生活環境の格差が残る 公共交通の維持管理の困難 公共施設・交通の維持の困難の可能性 買い物環境が悪い 交通整備 の不足 交通の便が悪い 公共交通の整備 役員のなり手不足・高齢化 行政ニーズの対応の困難 移住者が増えた 公営住宅の不足 福祉環境 教育の格差が残っている 教育や文化継承への影響の懸念 大学がない 小学校の統廃合 高校がない 教育環境 観光者数の減少 宿泊施設の不足 認知度が低い 地域の持っている資源 を活かしきれていない 空き家 観光業の縮小 生産年齢 人口減少 就職によ る転出 進学によ る転入 消滅の可 能性 進学によ る転出 生産年齢人口の減少 若い世代の転出 第1次産業就業者数の減少 第2次産業就業者数の減少 第3次産業就業者数の減少 就業率の減少 生産年齢人口の減少の懸念 総人口の減少 大卒者が定着しない 就職による転出 転職期の転出 結婚による転出 東京圏への一極集中 転出超過 若い世代の転出 転入超過 高等教育機関への進学による転入 人口減少の加速化 過疎化の進行 地域コミュニティの維持の困難 消滅可能性都市がある 空き家 空き店舗 空き地・耕作放棄地の増加 過疎化 人口減少の加速化の懸念 平均寿命が短い 社会増減数の減少 自然増減数の減少 高齢期の転出 退職による転出 流出超過 地域の持続性の低下の懸念 老年人口の増 加・高齢化 総人口の減少 地域別高齢化率が高い地域がある 年齢構成バランスの悪化 単身高齢者・要介護者の増加 老年人口の増加 少子高齢化 2020年をピークに老年人口の減少 2025年をピークに老年人口の減少 50歳以上の転入 第1次産業の高齢化 第2次産業の高齢化 要介護認定者率の増加 超高齢化の進行 女性の後期高齢者の増加 年少人口 の減少 総人口の減少 子どもを産む世代の女性の減少 未婚率の増加 初婚年齢の上昇 年少人口の増加 少子高齢化 合計特殊出生率の低下 出会いの機会が不足 若い世代の転出 保育所の過剰状態の懸念 年少人口の大幅減少の見込み 若年層の離別の増加 出生数の減少 初めて出産を迎える年齢の上昇 高校進学による転出 大学進学による転出 東京圏への一極集中 高校がない 大学の選択肢が少ない 1世帯当 たりの人 口減少 核家族化 世帯数の増加 1世帯当たりの人口減少 高齢者の孤立 大学がない 若い世代の転出 転出超過 人口減少雇用環境生活環境 :クラスタ分析をする際に用いる 整理されたキーワード 凡例 クラスタ分析対象外のキーワード(すべての自治体が該当) 表3 認識する課題のキーワードの整理 分類された(表4)。これらの各クラスター(CL)に 共通する項目(60%以上が該当)をグレーに塗り,そ の内容の組み合わせによって3つのグループにまとめ た。グループの内訳を表5に示す。 1)課題が複合的である[少子高齢化複合]:CL8 に一致。 [人口減少・雇用環境・生活環境]のすべてに一致し, さらに[生活環境]のうち,福祉環境についての記 述がある自治体が該当する。 2)雇用機会を重視する[雇用機会]:雇用機会を軸に, 人口減少・生活環境に言及するCL 4,5,7と,人 口減少に言及するCL 6が該当する。 3)人口減少に特化した[人口減少]:人口減少のみ記 述するCL 2と,人口減少・生活環境に言及するCL 1,3が該当する。 総じて,人口減少にはいずれも言及されておりそれ に関連する,人口減少との相互関係的な原因となるこ とがらまでの認識をどの程度整理されているか,すな わち地域の課題を深刻なものとして詳細に整理してい るかの差異と理解することができる。雇用機会に該当 する自治体が最も多く,該当数は合計22 である。地 − 171 − 4/10 域での生業を成り立たせることが人口減少への対策に もなるという関係での課題認識を推察できる。6自治 体が該当する,課題が複合的であるグループは最も認 識する課題を詳細に整理している自治体と言える。 3.2 解決策- 活用地域資源と支援方法によるクラス タとその組み合わせ 記述された解決策を,まず[活用地域資源]と[支 援方法]に分けてから,類似した内容をまとめていく 方法により分類する。 ■[活用地域資源]は,住宅/民間/公共施設の跡地, 福祉施設,教育・公共施設,公共・民間(公共交通や 生活利便施設),産業に分類される(表6)。 このキーワードが各自治体のテキストに含まれてい るかの状況に基づきWard 法クラスター分析を行い, 3つのクラスターを得た(表7,8)。それぞれに,以 下の特徴を持つグループとして整理する。 1)施設および住宅跡地活用:福祉,教育,公共・民 間施設と住宅跡地を活用する。第一次産業と第三次 産業についての記述がある。 2)施設活用:公共・民間施設,第一次産業,第三次 産業についての記述がある。第二次産業についての 記述はない。民間施設/産業寄りの地域資源活用に ついての記述に特徴のあるグループと言える。 行政 administraction 生活の不安 anxiety life 消費の減少 reducation in consumption 結婚・出産による転出 moving out of marriage and birth 生産年齢人口の減少 reducation in working ages population 進学による転出 moving out of admission 老年人口の増加・高齢化 increase in aging population クラスタ Cluster 対象自治体のNO. グループ Group 人口減少雇用機会課題が複合 年少人口の減少 reducation in youth population 消滅の可能性 possibility of annihilation 教育環境 educational environment 1世帯当たりの人口減少 depopulation per household 医療福祉施設 medical and welfare facilities 空き家 vacant house 地域資源 community resouces 地域の環境 environmental of community 生産活動の厳しさ difficult to production activities 雇用の多様性のなさ diversity of employment required 進学による転入 transferred to addmission 人手不足 shortages of man-power 子育てと就労の両立の困難 difficulty of combine work and child-rearing 生活利便性 convenience of life 雇用機会の少なさ less opportunities for employment 就業者数の減少 reducation in number of employed people 交通整備の不足 insufficiency of traffic improvement 人口減少 Depopulation 雇用環境 Employment environment 生活環境 Life environment 認識する課題 recognize problems − 172 − 施設 Facility 跡地 Subsequent land 産業 Industry 施設,住宅跡地活用グループGroup 施設活用少ない
表8 解決策-活用地域資源のクラスタ分析結果 表7 解決策-活用地域資源の該当項目 第1次 Primary 第2次 Secondary 第3次 Tertiary 住宅 House 民間 Private 公共 Public 福祉 Welfare クラスタ Cluster NO. 公共・民間 Public・ private 教育 Educational 活用地域資源 Conjugate local resources 2, 3, 17, 20, 27, 34, 35, 36, 37, 40 22, 41, 42 該当する自治体のナンバー 29 10 3 凡 例 住:住宅跡地活用 施:施設活用 少:少ない 活用地域資源 住+施施少0 3)活用資源が少ない:活用資源についての記述が見 られない,または他の自治体に比較して少ない自治 体。産業に関する記述はない。 総じて,活用地域資源として事業等の核となる「施 設」をどの程度巻き込んで想定しているかにおいて差 異のあるグループと言える。最も該当が多いのは施設 および住宅跡地活用のグループで,29 自治体が該当す る。これらは,活用できる地域資源についてそれぞれ の自治体の実態に即して記述がなされた群である。 ■[支援方法]は,該当が最も多い定住・移住のほか, 雇用・就労や子育て支援などに分類される(表9)。該 当内容の種類が多いのは生活支援と子育て支援で,そ れぞれの自治体の考え方やケアニーズ等により,選択 的に記述されていると推察される。 このキーワードを元にクラスター分析を行い,3つ のクラスターを得た(表10,11)。それぞれに,以下 の特徴を持つグループとして整理する。 1)移住・福祉・住宅・生活支援:各支援方法が包括 的に記述された群。雇用・就労と多世代交流,住宅 の全てに記述がある。多世代をターゲットにした包 括的支援策が打ち出されている。地域包括ケアシス テムについては記述がある場合とない場合がある。 跡地 生活施設 住宅跡地 民間跡地 文字:クラスタ分析に用いたキーワード 公共跡地 福祉施設 教育・公共 公共・民間 産業 活用地域資源 空き家 空き店舗 公共施設跡地 廃校 住宅跡地 第1次産業(農・林・水産) 第2次産業(建設・製造) 第3次産業(小売り・運送・教育・医療・観光業) 医療・福祉施設 サービス付き高齢者住宅 学校施設(大学・専門学校・高校) 生活利便施設(商店等) 交流施設 公共交通・施設 活用しようと構想している地域資源 表6 解決策-活用地域資源のキーワード整理 住宅 雇用・就労 防災 移住・定住 子育て支援 医療施設 地域包括ケアシステム 支援 企業誘致 高:入所介護 障:入所介護 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 賃貸住宅 共同生活援助(グループホーム) サービス付き高齢者住宅 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム) 店舗(ショップ・売店) 飲食(食堂・カフェ・酒場) ギャラリー 温浴施設 運動場・スポーツセンター 地域包括支援センター 多目的ホール 町内会館 地域交流施設・センター 生活利便 施設 地域交流 施設 保育所 幼稚園 小規模保育事業 事業所内保育事業 認定こども園 放課後児童クラブ 届出保育施設 病児・病後児保育 一時預かり 障碍児通所施設 子育て支援 母子家庭等家庭 協力員派遣事業 障碍児相談支援 子:支援 子:通所 施設入所支援 就労移行支援 通所介護(デイサービス) 通所リハビリ 短期入所生活介護(ショートステイ) 小規模多機能型居宅介護 障:支援 高:通所 訪問介護 訪問看護 高:訪問 居宅介護支援 サービス付き高齢者住宅 配食 診療所 小児初期急病診療所 薬局 高:居宅支援 障:訪問 居宅介護(ホームヘルプ) 障:通所 短期入所(ショートステイ) 障:生活介護 行動援護 多世代 交流 生活 支援 支援方法 表9 解決策-支援方法のキーワードの整理 文字:クラスタ分析に 用いたキーワード − 173 − 6/10 移住・福祉・住宅・生活支援移住・福祉・住宅移住・福祉移住グループ地域包括ケア システム community based integrated caresystems 住宅 house 生活支援 livelihood support 多世代交流 interaction of many generations 医療福祉施設 medical/ welfare facilities 防災 disaster prevention 移住・定住 local migration/ settle クラスタ Cluster NO. 子育て支援 to support rasing a child 雇用・就労 employment/ work 支援方法 support method 凡例 1:該当 0:該当しない :60% 以上が該当 :50% 以上が該当 表10 解決策-支援方法の該当項目 該当する自治体のナンバー 移:移住 福:福祉 住:住宅 生:生活支援 支援方法,40 移・福・住・生 移・福・住 移・福 移 凡例 表11 解決策-支援方法のクラスタ分析結果 2)移住・福祉・住宅:地域包括ケアシステム,生活 支援に関する記述がなく,子育て支援について記述 がある点が特徴。子育て世代〜生産年齢層に特化し た支援方法が記述された群と言える。 3)移住・福祉:住宅と生活支援についての記述がなく, 子育て支援,雇用・就労,地域包括ケアシステムに 記述がある。子育て世代〜要介護年齢層に至る前の リタイヤメント前後の世代に対応した支援方法が記 述された群と言える。 4)移住:移住・定住と雇用・就労が多くの場合で当 てはまる(5/7 自治体,71.4%)が,他の支援方法 についての該当が他の自治体に比べて少ない。 総じて,移住と雇用・就労を軸として,ターゲット とする年齢層によって支援方法の組み合わせに特徴が あるクラスタ,グループが導かれている。該当自治体 が多いのは移住・福祉・住宅・生活支援(14 自治体) と移住・福祉・住宅(15 自治体)である。 ■解決策における[活用地域資源]と[支援方法]の クロス集計を,表12 に整理した。両者の組み合わせ をA 〜G の7 分類とし,その内容に照らして表13 お よび以下のように解決策の分類を4 分類に整理した。 ①多機能ネットワーク型:A「既存の住宅( 空き家)と 福祉・文教施設(事業終了後,事業継続のいずれも 含む)を複数活用して,移住・福祉・住宅・生活の 包括的支援を行う」が該当する。既往文献5)におけ るテキストマイニングによる抽出単語「連携」は, この類型において最も関連深いと想定される。 ②ネットワーク型:B「既存の住宅と施設を複数活用 して,移住・福祉・住宅の支援を行う」とC「既存 の住宅と施設を複数活用して,移住・福祉の支援を 行う。特に地域包括ケアシステムに言及」が該当す る。生活支援を伴わないことから,子育て世代〜リ タイヤメント前後の世代が対象だと想定される。 ③拠点型:D「特に民間施設を利用して,移住・福祉・ 住宅・生活の包括的支援を行う」とE「特に民間施 設を利用して,移住・福祉・住宅の支援を行う」が 該当する。利用される既存施設の組み合わせが多様 であり,既存住宅の活用によらず,住宅支援を行う ことが特徴的である。 ④拡充期型:F「既存住宅と施設を活用して移住促進」 とG「移住と福祉を支援方法とするが活用地域資源 についての記述が少ない」が該当する。他の自治体 に比べて具体的な解決策の記述が少ない自治体であ り,解決策自体が拡充時期にあると言える。 活用地域資源 多機能ネットワーク型5,8,10,12,13,14,16,23,24,25,28,30 多機能集中型3,17 施設型2,20,27,34,36,40 住宅+施設1,4,9,11,18,19,29,31,32 地域包括ケア推進型6,7,15,21,26 移住型目的先行型22,41,42 ③拠点型 ②ネットワーク型 解決策(4分類) 解決策(7分類) 内訳 ④拡充期型 ①多機能ネットワーク型 住宅+施設施設少ない 移・福・住 移・福 移 凡例 3,17 表12 活用地域資源と支援方法による解決策の分類 表13 解決策の分類 支援方法 ① ③ ② ④ − 174 − 7/10 4.地理・人口条件と認識する課題,解決策の関係 4.1 地理・人口によるクラスタ 各自治体の状況の客観的数値である,表2の人口, 高齢化率,人口/可住面積,可住面積/面積,人口増 減率,指定市からの時間の数値データをもとに各自治 体の地理・人口の状況について,4までと同様のクラ スタ分析を行った。この結果,各自治体はⅠ高齢化・ 過疎化が進行している地域,Ⅱ平均的な地域,Ⅲ人口 密度が高い地域,の3つに分類された。 4.2 地理・人口条件と認識している課題の関係 自治体の地理・人口条件は,自治体が認識している 課題と対応する関係があることが想定される。表14 に,両者の関係を整理した。また,両者の組み合わせ による該当事例の偏りを確認するため,実測値/期待 値を示した。地理・人口Ⅰ(高齢化・過疎)と認識す る課題が複合的である組み合わせでは期待値よりも実 測値が多く(実測値/期待値の比は1.94),同様にⅢ(人 口密度が高い)では認識する課題が人口減少のみであ る組み合わせでも実測値は期待値を上回る(同1.33)。 また,図2に,地理・人口条件のうち人口増減率, 人口密度)人口/可住地面積),高齢化率と認識して いる課題の3類型(少子高齢化,雇用機会,人口減少) との関係をロジスティック回帰分析により示した。な お,これらは地理・人口条件との関係のうち,相関が 見られた組み合わせを抜粋して示したものである。図 から,人口減少率が高く,人口密度が低く,高齢化率 が高い場合に[少子高齢化複合]の割合が高いことが 読み取れる。課題が複合的に認識されるかどうかにつ いて,これらの地理・人口条件との対応関係が明らか である。また[人口減少]の該当割合は人口増減率と, 人口密度による影響が大きく現れるが高齢化率との関 係は明らかには見られない。つまり高齢化率そのもの は人口減少との相関は弱い。これに対して,[雇用機会] の該当割合は,人口増減率と高齢化率による影響を受 けるが,人口密度による影響はそれに比較すると不明 瞭である。雇用機会を課題として認識するかは,生産 年齢人口の減少との関係が影響すると理解できる。 4.3 地理・人口クラスタと解決策の関係 分類の結果と,解決策の分類①〜④の関係をクロス 集計して表15 に示す。 表15 より,Ⅰ高齢化・過疎地域(18 自治体)のうち, ①多機能ネットワーク型が7事例(38.8%)と最も多 く次に②ネットワーク型が5事例(27.7%)である。 また,Ⅱ平均的な地域(15 自治体)のうち②ネットワー ク型が6事例(40.0%),③拠点型が5 事例(33.3%) を占める。Ⅲ人口密度が高い地域(9自治体)では④ 拡充期型が5事例(55.6%)である。その偏り(実測 値/期待値)はⅠ - ①,Ⅱ - ③,Ⅲ - ④において顕著に 見られる。総じて,地理・人口クラスタにおいて高齢化・ 過疎化が進む地域と多くの活用地域資源と支援方法を 記述するネットワーク型の割合が高く,人口密度が高 い自治体では多くの支援策には触れられていない。 地理・人口の数値と解決策①〜④の分類によるロジ スティック回帰分析を行った(図3)。人口減少率が大 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複 実測値 …1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 高齢化率[%] 凡例 認識している課題の3類型 R²:0.0505 p値(Prob>ChiSq):0.1276 R²:0.0799 p値(Prob>ChiSq):0.0385 R²:0.0355 p値(Prob>ChiSq):0.2349 認識している 課題の3類型 :課題が複合 :雇用機会 :人口減少 図2 地理・人口条件と認識している課題のロジスティック回帰分析 − 175 − 8/10 きく,人口密度が低く,高齢化率が高い場合に,①多 機能ネットワーク型の該当割合が高い。これと④拡充 期型の該当割合の傾向は真逆で,人口減少率が小さく, 人口密度が高く,高齢化率が低い場合に④拡充期型の 割合が高い。比較的課題が深刻でなく,予防的な措置 に留まる段階であると理解できる。②ネットワーク型 と③拠点型は①と④の間にあって,その合計の割合が 一定である特徴を読み取れる。②ネットワーク型は人 口減少率が大きく,高齢化率が高い場合に該当割合が 高い。子育て世代〜リタイヤメント前後の世代を対象 に呼び込みや引き留めを図り,人口バランスのさらな る偏倚を防ごうとする意図を推察できる。そのとき, 人口密度は決定要因とはならない。③拠点型は,人口 減少率が小さく,人口密度が低く,高齢化率が低い場 合に該当割合が高い。人口減少は緩やかだが人口密度 が低く高齢化率が高い地域において,公共交通や商店 等の生活利便性を担う民間施設の活用を主に多様な施 設を拠点とした支援策を展開し,既存住宅の利用によ らない居住支援を行う自治体の取組と説明できる。 4.4 認識する課題と解決策の関係 認識する課題と解決策の類型(表16)には,線形相 関に類する関連性はみられない。[雇用機会]と②ネッ トワーク型,[人口減少]と④拡充期型には期待値より も実測値が多く,後者は上述の傾向とも一致する。つ まり,人口減少が主たる課題である地域では,分析対 象時点では支援策の記述は比較的少なく,いわば予防 的段階と捉えられる。一方,課題が複合的である[少 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 4,5,19,33,36 地理ク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 図3 地理・人口条件と解決策のロジスティック回帰分析 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 -12 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 人口増減率(H22~27 人口/可住面積[100人/k㎡] 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 15 20 25 30 35 40 45 ① ① :課題が複合 :雇用 :人口減少 ② ② ③ ④ ③ ④ ② ④ 高齢化率[%] 凡例 課題の分類 ① ② ③ ④ ① 解決策による分類 R²:0.0930 p値(Prob>ChiSq):0.0143 R²:0.0628 p値(Prob>ChiSq):0.0678 R²:0.0831 p値(Prob>ChiSq):0.0239 解決策に よる分類 :多機能ネット ワーク型 :ネットワーク 型 :拠点型 :拡充期型 ③ 表14 地理・人口クラスタと認識している課題の関係 雇用機会 人口減少 課題 課題が複合 地理・人口 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 表16 認識している課題と解決策の関係 ①:多機能ネットワーク型 ②ネットワーク型 ③拠点型 ④拡充期型 実測値 51 計 18 15 895 5 6 22 14 42 54 9 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 期待値 0.85 1.15 1.06 0.83 1.00 1.33 雇用機会 人口減少 課題 複合 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 期待値 実測値 期待値 期待値雇用機会 人口減少 課題 実測値 複合 2202 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 741 計 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口 実測値 5.14 4.29 2.57 9 計 ② ③ ④ 解決策 ① Ⅰ Ⅱ Ⅲ 地理・人口9 解 決 策 ① ③ ② ④ 計 雇用機会 人口減少 課題 複合 解 決 策 ① ③ ② ④ 1.17 1.11 1.64 0.43 0.95 0.75 1.07 0.42 1.67 1.17 0 1.56 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ Ⅰ:高齢化,過疎地域 Ⅱ:平均的な地域 Ⅲ:人口密度が高い,地方都市 解決策 Ⅰ Ⅱ Ⅲ 5,12,13,14, 24,25,30 1,4,6,7,19 33,36,37,39 :参考事例 18,21,31 22,35,38,41, 42 9,11,15,26, 29,32 8,16,23,28 10 表15 地理・人口クラスタと解決策の関係 ②ネットワーク型 2,27 3,17,20,34, 40 ①多機能 ③拠点型 ④拡充期型 ネットワーク型 地理・人口 実測値/期待値が… 0.75以下の組み合わせ…1.25以上の組み合わせ 認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 認識している課題 課題が複合雇用機会人口減少 地理・人口条件 ③拠点型④拡充期型 ①多機能ネッ トワーク型 ②ネットワ ーク型 Ⅰ高齢化・過疎地域 Ⅱ平均的な地域 Ⅲ人口密度が高い, 地方都市 ■実数で表記 ■地理・人口条件と認識している課題の組み合わせに対する解決策類型の該当割合 20.0% 50.0% 12.5% 40.0% 25.0% 12.5% 20.0% 22.2% 33.3% 20.0% 44.4% 20.0% 20.0% 20.0% 40.0% 100.0% 100.0% 60.0% 40.0% 40.0% 60.0% 図4 地理・人口条件と認識している課題,解決策の関係 − 176 − 9/10 子高齢化複合]の自治体は①,②,④に該当し,課題 が整理されていても解決策が必ずしも多機能で相互連 携に意欲的とは限らない実態は,解決策の具体化や実 践における課題が現れたものと理解できる。 これら地理・人口条件と認識している課題の組み合 わせに対して,解決策が対応しているかを図4で確認 すると,同様にⅠ高齢化・過疎地域で認識している課 題の類型が分散しており(複合,雇用機会,人口減少 に広く分布する),客観的指標では課題が多いと推察さ れる地域でも,認識している課題やその解決策の複合 化において差異があることが読み取れる。 5.類型ごとの参考事例 表15 で組み合わせが多く,地理・人口条件と解決 策の典型的事例の概要を図5と以下に説明する。 ①多機能ネットワーク型:南魚沼市(A,雇用機会)「グ ローバル・コミュニティ」の形成:市内にある国際大 学を核とし,グローバルな異文化交流と,地域資源の 活用・福祉の整備・移住促進による多世代交流の場づ くりを行う。また,福祉・住宅を整備し,若者に対す る雇用の創出を目指している。 ②ネットワーク型:南伊豆町(A,少子高齢化)「アク ティブシニアお試し移住プロジェクト」:杉並区と連携 し都市部と地方の互いの強みや魅力を活かし課題を補 完しあい,地域の持続性を図る。お試し移住では移住 コンシェルジュによる住まい・仕事・子育て支援の紹 介を行い,短期だけではなく本格移住の促進を図る。 ③拠点型の事例:姶良市(B,雇用機会)「医療・福祉・ 都市機能誘導地域 居住誘導地域 市街化区域等 歩いて暮らせるまちづくりとして,公共交通 を軸に都市機能を誘導しまとめることで,コ ンパクトシティの形成を図る。厚生年金福祉 施設サンピアあいらの跡地を利用し,病院の 建て替えを行う。それに伴い,介護,予防, 教育,住まい,交流スペースなど機能を一体 的に整備したJOYタウン構想では,住み慣 れた地域で多職種・多世代,住民同士が互い に支え合いながらその人らしく暮らせる環境 「ヒューマンライフライン」の構築を目指す。 「社会保険」「民間事業」「ボランティア」といっ た制度の垣根を超え,「ひとがひとを支える 仕組み」を「ひとつ」につなぐワンストップ 窓口をつくり,わかりやすく親しみやすい生 活サポートを実現。 「世代を超えたつながり」「多様な人・団体の つながり」「地域や産業を超えたつながり」 に着目し垣根を超えた取り組みを進め,「自 分らしいライフスタイルを選択し,自己実現 できるまち」を目指す。 千葉県 新潟県 静岡県 鹿児島県 「福祉の街」として子育て支援から高齢者福 祉まで「未来の見える街づくり」を目指す。 学童とグループホームの幼老複合施設や,ダ イバーショナルセラピーといった多世代交流 の場も設置している。 NO.13 南魚沼市NO.19 南伊豆町 NO.40 姶良市 姶良市のコンパクトシティ化ヒューマンライフラインの構築新たな交流や価値を生み出す取組福祉の街 グローバル・コミュニティ アクティブシニアお試し移住プロジェクト NO.41 佐倉市 地理・人口:B平均的な地域 解決策:③拠点型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:医療法人玉昌会 基本理念:病院の建て替えと併せた一体的な整備によるC CRCの実現可能性の検討と,地域包括ケアシ ステムを基盤とした「コンパクトシティ姶良」 の構築をし,災害時の対応も想定した拠点づく りを目指す。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:①多機能ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会 推進主体:南魚沼市,国際大学,知多座と大学保健衛生専 門学院,市内外企業,金融機関,市内関係者等 基本理念:国際大学との連携を核とした国際文化あふれる 「グローバル・コミュニティ」の形成を目指す。 また,移住希望の高齢者への住み替え支援によ り,地方移住の促進を目指す。 地理・人口:C地方都市 解決策:④拡充期型 認識する課題:人口減少 推進主体:山万株式会社 基本理念:ユーカリが丘の開発を手掛けている山万株式会社 が主体となり,文化の発信,安心・安全の街づく り,少子高齢化対策,環境共生への取組,高度通 信技術の導入という5つのコンセプトに沿って街 づくりを推進する。 地理・人口:A高齢化,過疎地域 解決策:②ネットワーク型 認識する課題:人口減少,生活支援,雇用機会,福祉環境 推進主体:南伊豆町,杉並区 基本理念:自治体連携により,アクティブシニアお試し移 住プロジェクトの実施とともに,都市部と地方 が互いに強みや魅力を活かし課題を補完しあう ことで,地域の持続性を高め,将来的に安定な 人口構造の維持を目指す。 基本情報基本情報 基本情報基本情報 ヒューマン ライフライン 家事 保育 若者 高齢者 子ども 子育て 世代 市民 ゆかりの 来訪者 著名人 転出者農業 商業・サー 工業 ビス業 観光 業等 医療 JOY タウン 教育 介護学び 観光 予防 教育 介護 医療 住まい 災害時 対応 見守り習い事 ボラン ティア ランニング フィット ネス こども お年 寄り 公共 交通 サー クル 温浴 岩盤浴 子育て 仲間ができる 様々な過ごし方 時間ができる 様々な支え合い 多世代 →新たな発想 多様な人・団体 →新たな交流 多様な産業 →新たな価値や循環 旧来から佐倉に根付く 歴史・自然・文化 新たなモノ・イベント ライフスタイルの創造 首都圏・都市部 移住交流総合窓口 ふるさと回帰 センター 移住・交流情 報センター 生涯活躍のまち移 住促進センター 杉並区役所 移住コンシェルジュが住 まいや仕事,子育て環境 等について支援・紹介 東京での窓口として移 住・お試し移住を紹介 ・空き家バンク事業 ・リフォーム等助成事業 ・不用品,リユース事業 ・移住促進住宅の検討 住まいの紹介 仕事の 支援 子育て環境 の紹介 シーズンステイ (1 週間から数か月) 物産展,アンテナショップ による魅力の発信 ワープステイ (最長5 年) 本格移住 高齢者向けの仕事や活躍の場を設け,生涯健康で元気に暮らせる地域社会を創出することで, 後期高齢者の転出を抑える。同時に,若者世代の雇用機会の創出につながる。 国際大学を核とし,グローバルコミュニティの形成を目指す。地域資源である自然や文化, また多国籍の文化の交流を通じて多世代,異文化交流の場づくりを行う。また,住宅と福祉 の整備を行うことで移住促進につなげ,若者の魅力ある雇用の創出を目指す。 ・雪を楽しむ ・登山,トレッキング ・まつり ・地酒,山菜,漬物など ・留学生家族寮 ・英語サロン ・公開講座 ・英語保育園 ・多国籍レストラン・移住者向け住宅 ・シニア向け住宅 ・お試し居住 地域資源の活用グローバルコミュニティ ・特別養護老人ホーム ・ケアハウス ・グループホーム ・介護老人保健施設 ナーシングケア ・子育て支援センター ・認可保育所 ・駅前保育所 子育て環境 ・リタイアメント ハウス ・有料老人ホーム リタイアメント ・ゴルフコース ・テニスコート ・ショッピング マーケット ・アスレチック コース アクティブ ・在宅支援センター ・デイサービス ・高齢者福祉生活センター ・図書館 ・園芸セラピー インキュベーションセンター 若者の魅力ある雇用の創出 移住促進 ・介護施設,診療所の整備 ・健康,活動マイレージの導入 ケア 図5 参考取り組み・構想事例 +障碍者福祉 学童 − 177 − 10/10 教育・住まい・災害時の対応を想定した拠点づくり」: 拠点をつくり,公共交通を核としたコンパクトシティ の形成を目指す。また制度の垣根を超えてひととひと が支えあうヒューマンライフラインを構築し,住み慣 れた地域でその人らしく暮らせる環境をつくる。 ④拡充期型ー佐倉市(C,人口減少):ニュータウンと 福祉の街の形成による,自分らしいライフスタイルを 選択し,自己実現できるまちを目指している。 6.まとめ 総合戦略を最初期に掲げ先行的なモデルとなった都 市・自治体の計画を対象にテキスト分析によって認識 している課題と解決策(活用地域資源,支援方法)と 自治体の地理・人口条件を整理した。 いずれの自治体も人口減少を課題と認識し,かつ雇 用機会を課題と認識する群に該当する自治体が最も多 く,地域での生業が人口減少への対策にもなるという 関係での課題認識を推察できた。解決策における[活 用地域資源]と[支援方法]の組み合わせ整理では, 最も包括的な策が言及された①多機能ネットワーク型 から,現役世代までにフォーカスする②ネットワーク 型,民間生活利便施設を活用する③拠点型,具体的な 支援策の記述が比較的少ない④拡充期型に分類した。 各自治体の地理的条件と認識している課題と解決策 の関係では,地理・人口Ⅰ高齢化・過疎化と課題が複 合的である[少子高齢化],Ⅲ人口密度が高いと[人口 減少]には対応関係がある。人口減少率が高く,人口 密度が低く,高齢化率が高い場合に課題認識が最も複 層的で具体的な[少子高齢化複合]の割合が高い。地理・ 人口条件による課題と解決策には関連性があり,高齢 化・過疎化が進行した自治体では①多機能ネットワー ク型,人口密度が高い自治体では④拡充期型,③拠点 型は人口密度の低い地域で該当割合が高い。人口減少 が主たる課題である地域では予防的段階の計画と言え る。一方[少子高齢化複合]には,解決策にバラツキ があり,課題が整理されていても必ずしも解決策が複 合的に立案されていない。地理・人口条件と認識して いる課題の組み合わせに対して,解決策が対応してい るかを確認すると,Ⅰ高齢化・過疎地域で認識してい る課題および解決策の類型が分散しており,客観的指 標では課題が多いと推察される地域でも認識している 課題やその解決策の複合化に差異がある。 解決策のパッケージがどの地理的条件の自治体でも 適応される関係にはなく,また自治体が置かれた状況 が類似していると思われる場合でも,各自治体におい て選択的に計画が組み立てられている。言い換えれば, どこにでも応用可能な解決策パッケージのような構想 とはなっていない。モデル化においては,「認識してい る課題と解決策」ではなく,「地理的条件と解決策」の 関係に基づくとより構想しやすいと想定できる。逆に, 課題認識の整理ガイドラインの必要性も示唆される。 謝辞 本稿は,第二著者・宮崎文夏氏の修士論文としてまと められた研究成果に,第一著者が大幅な加筆修正を 行って発表するものです。なお本研究は,科学研究費 補助金(基盤B)「「利用縁」がつなぐ福祉起点型共生 コミュニティの拠点のあり方に関する包括的研究(研 究代表者:山田あすか)」の一環として行われました。 注釈 注1)「まち・ひと・しごと総合戦略」は,平成26(2014)年7月18 日閣僚懇談会 での総理による「まち・ひと・しごと創生本部」設置指示を受けて平成26 年9月 3日に本部が設置(閣議決定)され,審議を経て,平成27(2015) 年度中に、地 方自治体において、中長期を見通した「地方人口ビジョン」と5か年の「地方版総 合戦略」を策定することとなったもの。第一期として,成果指標を2020 年とする 総合戦略(2015 〜2019 年度の5か年)が立案された。 注2)まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」「総合戦略」「基本方針」では,以下 の理念を掲げている。 人口急減・超高齢化という我が国が直面する大きな課題に対し、政府一体となっ て取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生 することを目指す。人口減少を克服し、将来にわたって成長力を確保し、「活力 ある日本社会」を維持するための政策として,以下6つの目標を置く。 [基本目標] *【】は筆者による要約キーワード 1)【就労/経済】稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする 2)【関係人口・交流人口】地方とのつながりを築き、地方への新しいひとの流 れをつくる」 3)【少子化】結婚・出産・子育ての希望をかなえる 4)【地域継続居住】ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域を つくる」 [横断的な目標] 5)【人材活用(生産年齢人口減への対応)】多様な人材の活躍を推進する 6)【社会の変化への対応】新しい時代の流れを力にする
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