現代病理に対して今日,「治療」を越えて「癒し」が多く語られるようになったのは,現代医学が構造的に抱え込んでいた矛盾に起因しているとも言われている。疾病構造の変化,つまり現代病理が多くのリスクファクターが原因となり,病気の原因を特定できないものが多くなってきたことにその原因の一端があると言われる。心身医学や行動医学もしくは行動療法などが既に注目を浴びてきているのも一つの証拠である。例えば,死因をみても明治から昭和の初期では「国民病」といわれていた肺炎,気管支炎,結核,赤痢,胃腸炎などの感染症疾患が主な死因であったが,昭和30年頃からは慢性疾患,成人病,生活習慣病といわれる悪性新生物,脳血管疾患,心疾患などの生活様式の現代化が原因とされる死因の増加が目立つ。平成21年の3大死因死亡数は、第1位が悪性新生物34万4000人、第2位心疾患17万9000人、第3位脳血管疾患12万1000人と推計されている(厚生省平成21年人口動態統計参照)。また,厚生統計資料の平成19年度の国民医療費は34兆1360億円、人口一人当たりの国民医療費は26万7200円となり、年々増加しているのは言うまでもない。一般診療医療費を主傷病による傷病分類別にみると、「循環器系の疾患」5兆4 3 5 3億円(21.2% ) が最も多く、次いで「新生物」3兆716億円( 12.0% )、「腎尿路生殖器系の疾患」2兆138 9億円(8.3%)、「呼吸器系の疾患」2兆11 91億円(8. 3%)、「精神及び行動の障害」1兆9 3 7 8億円(7.6%)となっている。これらライフスタイルが原因で起こる疾患は,従来の心理療法や近代科学思想に基づいた西洋医学の技術としての対症療法的な医療・治療モデルよりも、行動療法の方が費用対効果及び治療後の持続性についても優れているとも言われている。このような問題も含め,医療に関連した制度においても従来の医療モデルのその行き詰まりが二十年前より指摘されてはいるが、未だに抜本的な化解決策を見いだせずにいる。それはまた、医学で対処すべきものかは誰も知らない。