陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

野の味を口にして、地に生かされていることを知る

2024-12-08 | 家庭菜園・庭仕事・ガーデニング

スギナ収穫にハマったのは数年前。
空き家のご近所の農家さんに教えられて食べられると知ってから。

一時期、兼業会社員の業務が多忙すぎて空き畑の世話をする時間が確保できずに、けっきょくもとどおりの除草剤散布にしていたのですが。土地が痩せてきた気配があったので、除草剤をやめて時間をかけて草刈りを行いました。そうすると、ほかの大きな雑草は駆除されてふたたび生えてきたのがスギナ。

この空き畑はすでに十数年以上、私が観察しており、除草作業のやり口をその年に応じての時間の余裕などによって変えているのですが。
数年間は農耕地用の除草剤を撒いたせいなのか、以前はしつこかったはずのカヤが群生しなくなり、かわりにそこらの公園でも見かけるような野草や、背丈の低いはびこりやすい草が増えるようなりました。

スギナもそのひとつですが。
背が低く、あるいはつる草のように横へと広がりやすい雑草は、土地が酸性に傾いているのであまり作物を育てるのには向いていません。苦土石灰などのアルカリ成分を撒いて、土壌改良する必要があります。

将来的にはそこそこな規模の家庭菜園ができるように、現在、腐葉土をつくったり、生ごみを発酵させたりして、土の有機成分を増やすようにしています。雑草対策になりますし、景観維持、そして自分の運動がてらにもなります。鍬を振るのは結構な重労働なのですが、さいわいなことに空き家に農作業道具がかなりそろっているので助かります。

この下準備をするのがもってこいなのが草が枯れやすい秋口なのです。
刈ったのは猛暑のさなかでしたが、庇の深い帽子と長袖で暑さ対策。適度に川風の吹く日でしたので何とか乗り切りました。

スギナは他の草を取り払ったあとに出てきたものですが。
5センチぐらいまでの柔らかい若草を摘んで、茹でればスギナ茶にもなりますし。十分に水にさらしてアクを抜いて刻んで、おひたしにしてもよし。マヨネーズと鰹節で味付けするばなかなかおいしい。

うっかり収穫しすぎてしまっても、元がタダの食材。
畑に埋めれば堆肥になって、土を豊かにしてくれて、また宝ものを産んでくれます。数年前は摂りすぎて大量に大鍋で煮込んで冷凍していたのですが、現在は必要分だけ摘むようにしています。新鮮な方が体に良さそうですよね。

スギナは薬草としても認知されるほど栄養があり、肌艶がよくなるなどの美容効果もあるとされています。
スギナのゆで汁をお茶にすると、カフェインがないので、健康にもよし。コーヒーなどのカフェインの過剰摂取はうつ病を悪化させるとの報告もあるので。ただし、スギナには多少の毒性もあるのでお茶にすれば一日一杯ていど、おかずにするにしても一掴みほどで済ますのがよさそうです。

自分の土地なので一年以上除草剤を中止し、他の草などを生やして土の状態を様子見してから収穫しているのですが。
都会に住まわれている方は、近所の公園や道路沿いなどの野草は除草剤がかかっていたり、排気ガスなどで汚染されているので避けた方がよさそうですね。市販で販売されていたりもするようです。




夕暮れ時にたった一人、きれいに均した土地を見渡すと気分がよくなります。農民画家ミレーの「晩鐘」を思い出します。
私は田も畑もあまりないような市街地に育ってきたので、まさか自分がこうした土地いじりをするようになるとは思ってもいませんでしたし、正直、わずか数年前まではこうした汚れ作業は大きらいの、テキストばかりにらめっこ、パソコンの画面ばかり眺めている、引きこもり気味なインドア派でしたから。

本格的な農業ではなくてもいいので、雑草抑え対策に、四季折々の簡単な野菜でもつくってみたらどうですか? と進言してくれたのは、県の農業会議のとある方でした。そこから興味が湧いて、少しずつ情報集めをしてできそうなことからチャレンジしていくことにしました。最初は雑草刈りや木の伐採ばかりでしたが、土や植物と向き合うこうとでわかってきたこともあります。

私はまだ本格的に何かを栽培したことがなくて、自然に生えたものを摂るしかできませんが。それも土を払ったり、食べられる部分をより分けたりするのも結構手間で。お店できれいに袋詰めして売られている野菜は生産者さんがかなり丁寧に作ってくださっているのだと感じますね。指先ひとつで完了したり、ただくっちゃべっているだけのデジタル仕事よりも、こういった仕事の価値は評価されるべきだと思います。私自身がこうした食を生み出す仕事の価値を軽んじていたのでお恥ずかしい限りです。


(2024.10.21)


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