サラリーマンもそうですが、個人事業主には意外な資格持ちが多かったりします。
雇用先がスキルアップの機会を与えてくれる会社員と違い、外部での研修もOJTもなく、自分で教育投資をせねばなりません。しかし、その分は、事業に関連するものならば、事業経費にできるのです。自己学習が好きなら、いっそ、資格取得を趣味にしてしまえば、やりがいも仕事への張り合いも生まれるでしょう。
個人事業主として開業してそろそろ十年の節目を迎える私は、過去の帳簿を整理していて、自分がかけた資格取得費を再考してみました。なおこの費用は、学習テキストの数量、受験料、振込の簡易書留、受験用写真、交通費なども含むため、個人差があります。また現在は受験料が値上がりしていると思われます。
・測量士補 11,395円
じつは本格的な士業資格勉強の開始の手はじめに興味本位で受験。二箇月ぐらいで合格。三角関数が必要なため高校数学の教科書をおさらいしました。難易度は低い。受験地が関西だったためバス代5000円ほどかかりました。一問間違えただけ。ちなみに当初は土地家屋調査士を狙いたくて、取った資格です。
・宅建士 24,935円
法律系の入門資格。スクールで利用したのは模試受験のみ。4箇月半ぐらいで合格。受験当時はまだ宅地建物取引主任者という名称でしたので、士業という意識がありません。毎年合格点が上下するので、年度によってはラッキーなことも。私は合格点の3点上(全問正解で50点)。受験料7000円ほどは良心的な価格です。
・FP技能士3級 10,704円
テキストはきんざい(金融財政事情研究会)の問題集と市販の基本書だけ。二箇月ぐらいで合格。次の2級もそうですが、学科と実技は両方一発に受けましょう。内容が重複していますから。日本FP協会版はよくわかりません。
・FP技能士2級 16,126円
ひきつづき、きんざいの「個人資産相談業務」で受験。2級の実技から、「中小事業主」「生保」「損保」と実技試験の枠が四分割されます。なので、実技を別枠で再受験する方もいるようですね。四箇月ほどで合格。1級は実務経験がないと受験資格が得られません。初心者でもかなり狙いやすい資格で、年二、三回の受験ができます。税務申告や年金、保険、相続に関する知識が得られます。ちなみに独立開業できる士業資格ではありますが、正式名称は「ファイナンシャル・プランニング技能検定」という民間資格です。
・日商簿記3級 5,593円
古本屋で何気なく手に取った前年の基本テキストが役立ちました。商工会議所で手軽に受験できますし、年二、三回の受験チャンスあり。12桁ぐらいの性能のいい電卓を買いましょう。一箇月半ほどで合格。
・日商簿記2級 11,801円
商業簿記、工業簿記にわかれてすこし難易度あがります。日商簿記は受験料が安い割には、事務系就職に役立つコスパのいい資格です。個人事業主・フリーランスとして独立開業するならばぜひとも取得しておきたいもの。スクールの模試は利用せずに、市販の過去問・予想模試を利用。FP技能士2級と同時並行でしたので、かなり辛かった覚えが。なお、日商簿記はその後、2級に1級の内容がおりてくるなど、難度が高くなった模様。
・行政書士 27,754円
基本書、問題集複数、判例集、すべて同じ出版社で揃えました。六法全書は法律ごとに付箋を貼って書き込みまくりました。宅建と同じく受験料7,000円と良心価格。地元の国立大学が受験会場だったため交通費もかからず。記念受験のつもりでしたが、五箇月で合格。平成29年の民法大改正前だったためラッキーだったのでしょう。なお、学習用ではない法律関連の書籍もいろいろ含んでの価格です。
ちなみに四つ目の士業資格は初回挑戦で不合格。
掛けた費用は3万円ほど。法改正が毎年のように細かくあるので、テキストもわりとかさみます。ただ受験しなくとも知識として活用できるので、役立ってはいるのかも。
このほかにも銀行業務検定の年金アドバイザー3級とか、簡単な資格はもっています。
挫折したのはITパスポート。初級資格ですが、まったく興味が湧かず、挫折しました。昔だったらシスアドとかありましたよね。MOSなどのパソコン関連資格ももっていないので、オフィスソフトの使用は我流です。資格のテキストを買って読んだのに、受験申込までしたのに、仕事が忙しくなったり健康状態が悪かったりで、受験しなかったこともあります。
就職活動をされる方は、まず、その業界のイメージを掴むためにも、その職種で必要とされる資格のテキストを学んでみるのもいいのではないでしょうか。
なお、いちばんコストがかかった資格といいましたら。
実はお恥ずかしながら普通自動車の運転免許。最初に自動車教習所に通い仮免許までスムーズだったのに、卒業検定で3回落とされ、その判定に不信感を抱いたので退所。翌年、別の教習所に通い、そこでは好成績でストレート合格したものの、免許取得までに二年間で60万以上かかってしまいました。教習所は指導員との相性がありますので、慎重に選んだ方がいいです。
コストがかかる資格といえば、大学院進学。
弁護士や税理士の受験資格のために社会人で通う方も多いのですが、働きながら通学するのはかなり大変です。私も税理士さんと付き合いがありますが、正直、学生気分で資格取得して個人開業した方よりも、税理士事務所などで実地経験を踏みながら鍛えられた方のほうが頼りになります。時間とお金に余裕のある方向けですね。
大学院といいましたら、私は国立大学の学部生から授業料減免をうけており、貸与・給付ふくむ奨学金にも恵まれたので、学費としては30万ぐらいといったところ。なので、そこで専攻したことを活かせない生きかたであっても、とくに後悔はしていません。ただし、現在の国立大学の授業料は高騰していますし、私立だとなおさら。現在の学生さんは学ぶのにもお金がかかる。だからこそ、貴重な若い時間を大切に過ごしてほしいものです。
最後に。ご存知かもしれませんが。
社会人で雇用保険の加入者は、厚労省指定の教育訓練(特定の業務独占資格の取得費用や専門職大学への学費など)を修了すれば支給される教育訓練給付金があります。支給条件や機関、上限額がありますが、社会人のキャリア形成に対する国からの支援策です。
高校大学受験と同じく、資格の取得にもまとまった時間とお金がかかります。
高いお金をかけたから、長い時間を費やしたから成果があるとは限らない。資格によっては向き不向きもありますし、資格認定団体の儲けのためにあるような資格もあります。しかし、勉強すると決めたからには、サンクコストを意識し、効率よく知識を習得していくことが大事です。
勉強したからには一発合格を狙いたい。
しかし、私の経験上、すぐ合格すると、すぐに忘れやすいもの。複数年で挑戦し、しっかり知識を身に着けたとしたら、それは何にも勝る自分自身の資産になるでしょう。資格によって勉強時間数が1000時間以上とか、学習期間一年だとか目安がありますが、仕事や家庭の事情などで時間のやりくりが難しいこともあります。うまくリフレッシュしながらペースを整えることです。
ちなみに、誰かにお金を援助してもらって資格を取りたいとおっしゃる方がいますが、あなたの恋人なり、友人なりであったのならば、その人物がどれだけ有言実行できているのか、生活能力があるのか、勉強することで何かを成したつもりになっていないのか、よく見極めてからにしましょう。お金を貸してと言われたら、金銭貸借契約書(署名押印あり)を残しておいたほうがいいです。お金をあげてしまうと、場合によっては贈与税がかかる恐れもあります。あの元内親王さまの夫たる人は、そもそも弁護士を目指しているのになぜそういう措置を取らないのか、私は不思議でなりません。和解金などではなしに、債務が発覚した時点から少額でもいいので母親の元婚約者に返済していれば、もうすこし、お二方は国民に祝福されたのではないでしょうかね。英語だけはできるが法的センスも倫理もないグローバル田舎者にならねばよろしのですが…と最後にいささか余計なことを書いてしまいました。
(2021.11.09)
追記
その後元皇族の配偶者は無事、米国の司法試験に合格されたようです。働きながら資格の勉強をするのは並みなみならぬ苦労があります。おめでとうございました!