漫トラ日記

現実生活空間&脳内妄想空間を日々マンガに浸食される主婦の怠惰な日常

佐藤史生『鬼追うもの』

2008年04月10日 12時34分58秒 | マンガ
今、トオルさんから色々マンガをお借りしてるんですが
その箱の中に入っていたのがこれ

佐藤史生さんの「鬼追うもの」の全コピーです!

これだけのページ数をコピーしてくれたんですよ!
プリントアウトするだけでも大変だったでしょうに。。。
ご苦労様。ありがとうございます~~
そのご好意に報いるためにも、早くレビューを書かなくてはと思ってたんですが
相変わらず佐藤さんの作品は難物でして。。。やっとこさアップしましただ~

この作品、文明が崩壊した未来の日本をを舞台にしたSFであり
鬼や妖怪の出てくる和風ファンタジーでもあります
この辺りの絡ませ方、その独特の世界設定
さすが佐藤史生センセ、これが非常に上手いんですが
あまりにも切り口が多すぎて、かえって書くのが大変でした~!


さて、舞台は先ほど書いたように、何らかの原因で文明が大崩壊した未来の日本
その原因についてははっきり書かれてはいないけど
何百年か前に遺伝子レベルに影響を及ぼす変異ウィルスが流行し、
ありとあらゆる動植物が影響を受けた事が原因のようである
この新型ウィルス流行が人類に多大な影響を与える、って言うモチーフは佐藤作品には良くあります。
例えば、「羅陵王」とか

その中で、町一つを城壁で囲み外界との接触を絶って
文明を保ち生き延びた都市があった
それが、聖都ヒモロギ府である
遺伝子の純血に対して異常にこだわり、人間しか住んでいない都市
ここだけは先進テクノロジーを保ち、宇宙ステーションとの行き来も出来る都市である
その清き都市に怪異が発生し、浄めの儀式(弓を鳴らす)を行った鳴弦師がに殺された!

物語は、ヒモロギ府水干姿の少年がやって来るところから始まる
彼の名は朱楽(あけら)
呪術師(じゅごんし)ギルドの「役(えだち)」(←№1の腕利きのこと)と名乗る
(本当はその代理)
鬼退治を依頼されてカズラギ市からやってきたのだった。。。


と、まぁ、こんな始まり方の表題作なんだけど
車が走りビルが建ち宇宙ステーションまで持つ科学技術と
ケガレを払う鏑矢、直衣姿の鳴弦師、鬼退治とのミスマッチ
これが違和感なく同居している所が佐藤史生SFの魅力です

SFとなれば、鬼にも神にも科学的理由があり
登場人物は、古代人のように恐れ敬うのではなく
観察し推測しきわめて理性的に対処します
特に佐藤さんの作品の登場人物はそうです
驚きはしても、恐怖はありません
に対してもそうです
結局、とは異能者“篁(たかむら)”の左手に取り付いた化生だったわけだけど
その化生、妖怪、異能者たちも、おそらく例の変異ウィルスのせいで生まれた者たちです
彼等はウィルスによる突然変異で、ある種の超能力を身につけたのです


異能者である篁は、純潔を尊ぶヒモロギにはいられない身になり
朱楽とともカズラギに行く
が、ここでも、化生に取り付かれる性質の篁はトラブルを引き起こす
これが、第2作目の『神遣い』
そして、今度の相手は神!
さて、神の正体は?
カズラギの呪術師と葛城山の主との智恵比べが始まります。。。


このように、SFの中に古代日本の神話や伝説をうまく入れ込んで
それがまたとっても魅力的!
その魅力の一つが和風の言葉
ただ、これが「役」=「えだち」のように、
普通の読み方をしないから読みにくいことこの上ない!
でも、それがまたちょっと妖しげな雰囲気をかもし出してるのも確か
ちなみに「えだち」とは、古代、人民に割り当てられた肉体労働のこと
とてもギルドの腕利きのこととは思えない

「ヒモロギ」とは神籬と書き、神の宿る場所の事
よく、榊の枝と〆縄で四角く囲った場所が描かれるでしょ?
あれの事です
ラストで、ヒモロギ府が宇宙への移住を計画している事が明かされるんだけど
(当然、純粋なヒト遺伝子の持ち主だけで行く)
そのことに、「役」の隍(からぼり)は「“鬼の国”どころか“神の国”になったりして・・・」
と、言います
ヒモロギの名がここに繋がるのです
佐藤さん、安易にヒモロギと名付けたわけではないんです!
深いと思いません?

あと、朱楽が使役している半妖怪のクモ
名前がライコウ
当然、この名は鬼退治で有名な源頼光から来てることは間違いないです


漢字の読み方から「記紀」にまで及ぶ知識の深さ
佐藤史生さんの博識と、そこからストーリーを編み出す創造性!
ただただ感服するだけです~~
でも、佐藤作品の中で一番!とまでは言えない
それは、すべての作品がレベルが高くて、とても選べないから!
いや、一番はやっぱり「夢見る惑星」なんだけどね。。。


ところで、『鬼追うもの』はトミーさんもレビューを書いてます
ご参照を~
     ↓
トミーさんのブログ


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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トミーさんへ ()
2008-04-26 00:39:29
亀亀ごめんなさい~~~
そして、わざわざトラバありがとうございます~
私もトラバさせてもらいました

佐藤さんのSF作品はただの感想だけなんて
と~っても無理!
だって、世界設定から分析してかないと
ストーリーの把握すら出来ないんだもん
で、背景を調べていくうちに迷宮に入り込んじゃって
結局感想まで行き着かない。。。って、感じです
もっと文才があったら、論文一つ書けそうなくらいよ~

「イリヤッド」は未読です~~
面白そうなんだけど、なかなか手が回りません~

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す・すみません~。m(_ _)m (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人) )
2008-04-21 13:17:02
 ブログ中にご紹介いただてたり、コメ欄にも何人もの方が言及頂いていたのに、仕事にかまけて一度読んだだけでコメしてませんでした。

 ついでといってはなんですが、遅ればせながら一応トラバもしておきました。リンクされているのにね。

 ほんとに、佐藤さんの作品はちゃちゃっと感想なんて無理・無理で、読んでるときはどっぷり面白く読んでるんですけれど、感想書くのいつも苦労します。
 ほんとの感想になってしまうか、覚悟決めて下調べしてちゃんと書くか、いつも前者になってしまってちらっと背景を書いてお終い、みたいな。でもたくさんの人に読んでもらいたいのよね~。「イリヤッド」 などに劣るとは思えません。

 又機会があったら、短編でもいいので紹介したいところですね。
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満天さんへ ()
2008-04-16 21:30:21
>役の行者
ぎゃ~~!
そのことを書き忘れたわ~~!!
葛城山に住んで一言主と対決したって言う話があるのに!
「神遣い」はそれを元にしてるのよね

佐藤さんのマンガはこういう風に
一々調べないとわからない所が面倒なんだよ~
その代わり、レビューの書き甲斐があるんだけどさ!


>金本
亀亀ですが、ありがとうございます!
でも、でも、テレビ中継が無くて
リアルタイムで見れなかったのが悔しいです~~!
今年の横浜戦はCSでもやってないから。。。
何故~~!!?
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くまさんへ ()
2008-04-16 21:09:26
亀亀レスで、ごめんなさい~~

>ヒモロギ
そうなの!
変な言葉だと思って、辞書検索したら出てきたのよ
佐藤さんは絶対意味の無い言葉は絶対使わないね!

古事記と一言主についてはトミーさんが詳しく解説してくれたので
そっちの方はお任せしました
返信する
記憶に・・・ (満天)
2008-04-14 12:12:01
あるんですが…
かなり微妙~です・・・
多分…途中まで読み最後まで読んでいないな~
ってな感じです
だって…最後がぜんぜん思い浮かばん(笑)

役の行者を彷彿させる内容ですか?
佐藤さんの作品は面白い~
面白いんだが…一度読んだ位では解らん(笑)
そこが難点と言えば難点どす(ハハハハ)

ところで…話は変わるのですが
金本さんオメデトウございます
中々出ないんでヤキモキしましたが
良かったですね~~~
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ヒモロギ (くま)
2008-04-14 11:47:15
という言葉にそんな意味があったなんて、全く知らなかったのでビックリしました!
深いですね~~!!
トミーさんの記事も再読させていただきましたが、一言主についての古事記の記述だとか、色々知ってから読むと、また面白さが発見されるというか…いつもながらありがとうございます。 

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トオルさんへ ()
2008-04-13 17:01:23
たまたまでも、嬉しいです!
トオルさんが宣伝部長なのは重々承知してるけど
あのコピーから、面白いから是非読んで!って言うトオルさんの気持ちが伝わって来たわよ
そしたら、ちゃんと感想を言うのが筋というものだもんね

でも、上手く取っ掛かりがつかめなくて
まず世界観を整理するために
作品の背景から入ったんですわ
佐藤さんのSFは表に出たストーリーより
その前提である社会背景が面白くて、色々想像しちゃうのよね
この作品でも大崩壊としか書いてないけど
それがどんなものだったか、とか
宇宙へ出てったヒモロギは阿呆船みたいになるのかな~?とか
そっちを想像する方が楽しかったりするんだわ
だもんで、感想レビューとしては中途半端だったよな~~
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すずさんへ ()
2008-04-13 16:34:07
>神仏ジャンルミックス
アハハハ。。。上手いネーミングだわ
「ワンゼロ」なんかもそんな感じがするわ

東北にはそんなに色々怪しげな伝説があるの?
義経伝説と藤原三代の事しか知らなかったよ~
ヘブライ語って?。。。初耳だ~
でも、西日本には大和政権の神々がいて
東北にはそれ以前の神々が棲まうって感じ?
アイヌの自然信仰がDNAに刷り込まれているのかも~~
朱楽がブナに木にお願いして水を分けてもらうあのシーンなんか
とっても縄文的だったもの~~
返信する
見覚えのある映像が!(^o^)。 (tooru_itou)
2008-04-11 16:05:21
 コピーを贈ったものとして、まず一言訂正を(笑)。
(夜)さんの為に全コピーしたんじゃなくて(笑)自分が読む為に
(つる)さんから借りた時に全スキャンしてPCに取り込んでた
のをプリントアウトしたのです。それがたまたま在ったから
贈ったんデス~(^o^)。

 さすが、(佐藤史生)お好きで、歴史好きの(夜)さんのレビュー
ですよねー♪(^o^)。作品の背景にまで及んでる!!。
>書くのが大変でした~!
~うんうん♪、あまりにも良く解かります(笑)。正攻法で真正面から
アプローチして語ってますもの。私も正攻法で書こうかとも思ったけど
大変なんで、避けたもの(笑)。

>面白そうとは思うのだけど、すごく読むのに時間がかかりそう・・
~(アガサ)さん、面白いんで、ストーリーを追いかけるから、
読むのに時間はかかりませんでしたよ。但し、LOVE要素が無いのが、
(アガサ)さんが読む最大のネックでふ(笑)。

(すず)さんのコメントを読んで、私がこの作品が好きな訳が良~く解かりました。
(すず)さん、有難う御座います(礼)。
>東北人って今でもこんな感覚をみんな持っているんじゃないかな?と思います。
~東北人の感覚の点で言えば、(佐藤史生)さんも自分も東北人だものねー♪(^o^)。

 最後にこの(佐藤史生)「鬼追うもの」を貸してくれた
(つる)さんの拙BBSへのコメントを・・こぴぺします。

朱楽があくまで朱楽、篁があくまで篁、ライコウはあくまでライコウ、みたいな
キャラが頑固にそのキャラたりえんところがいつも好きだな~、佐藤さん。
「自分が自分であることを知っている」キャラって魅力的ですよね。かなり多くの場合
主人公の強烈な個性や運命にまわりが引きずられる。それはそれでドラマチックだけれども。

発想もオモシロイ。ありそ~な話よね、自分たち「純血種」だけ守ろうとする・・・
特に日本という土壌は。・・・知らんけど、ヨソの国。
朱楽の雄々しい開けっぴろげな性格が好き~。篁のどこか生真面目な性格が好き~。
年齢サバ読みするばあさんも好きだわ。
汚された地球で悲愴にならずに生きていく人間のたくましさが好き~。
返信する
「やおろずの神々」に対する畏敬を作品に感じます。 (すず)
2008-04-11 09:20:01
 あぁ!なんと懐かしい作品でしょう。私これ何で読んでるんだろう?連載かしら、コミックかしら、記憶さっぱりです・笑)

 とにかく、佐藤さん特有の「神仏ジャンルミックス(←勝手に命名)」な設定が好きで、読んでいてワクワクしたのを覚えています。なんというか、東北人って今でもこんな感覚をみんな持っているんじゃないかな?と思います。イエス・キリストのお墓(と言われる)やヘブライ語(と言われる)の歌とお祭りがあったり、源義経が落ち延びて中国へ渡った(と言われる)場所があったり、藤原三代の御遺骸(ミイラですね)を大切に守っていたりと、超自然的なモノを受け入れちゃう土壌があるんですよ。たぶん、SFが現実になっちゃう未来でも、伊達政宗が朝鮮から持ち帰った(と言われる)「子平町の藤」は、培養ポッドで咲いているんじゃないかしら?(笑)

 なので、一神教も多神教もそれを大切に想う人がいるのなら、畏敬の念を持って扱うべしという懐広いお考えが、作品を読んでいると感じられるます。
返信する
アガサさんへ ()
2008-04-10 23:01:47
そう、面白いんだけど、奥深いのよ~
佐藤さんの作品は頭使うんだわ~~
だから、読み応えがあるんだけど。。。
でもアガサさんの好きなラブは全然ありませんから
お好みじゃないかも~~


日本神話の神々はキリスト前のギリシャ神話とかケルト神話の神々と似てると思う
古代の宗教って、どこも八百万の神々がいて
人間の考える事って同じだ~と思うのよね
だから、キリスト教みたいな一神教が異質なのさ
返信する
難しそう・・ (アガサ)
2008-04-10 19:30:57
ほんとに佐藤作品は難しいですね。
夜さんの記事を読むと面白そうとは思うのだけど、
すごく読むのに時間がかかりそう・・

トミーさんのブログを読んで
日本の神に対するとらえ方とキリストに対するとらえ方の違いっていうのに
そうだったんだ~と納得しました。

私も「夢みる惑星」が好きです。
終わり方が明るめなんで・・
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