11
サトルは、円盤ムシが飛び上がってから、ぐんぐんと小さくなっていくドリーブランドを、丸い窓から見つめていました。
冴えるようなグリーンの星が、宇宙の中のぽつんとした点になると、サトルは円盤ムシの部屋の隅っこで、膝に顔を埋めて座りました。
別に、なにが悲しいというわけではありませんでした。せっかく友達になった人達と別れるのは、つらいことでしたが、サトルは、もっと大きな所で、ぽっかりと心に穴が開いてしまったようでした。
ドリーブランドと、地球――。サトルはそう考えると、なぜかドリーブランドに残っていた方がよかったのではないか、と後悔に似た気持ちがするのでした。
地球に帰っても、サトルが本当に帰りたい、と願っていたままか、もしかすると、こんな所になんかいたくない、とがっかりしてしまうのか……。
サトルは、しかしいくら考えても、答えは出ませんでした。
(悲しみが多いところ……)と、確かリリは、そう言っていたように思いました。
そういえば、ドリーブランドで会った人達と、サトルの住む地球の人達は、見た目はそっくりでも、もっと大切な物が、大きく違っているように思いました。
サトルにはそれが、のど元まで出かかっていましたが、がんばってもそこまでで、決して言葉になって出てきませんでした。
パチン……。
サトルは、風博士からもらった機械のスイッチを、探るようにひねりました。
と、キューハハ……ハ……という耳障りな音が出て来たかと思うと、すぐに後から、女の人の声がしてきました――。
“ハァイ! こちら銀河放送局。今回もあなたに送るハートのメッセージ……”
“お送りするのは、あなたの恋人、DJエス……それではまず……”
“ドリーブランドの風博士より、メンタルレター……サトル君へ、私には君が流れ星に見える……いろいろあったが、私は君を異人ではなく、普通の人と――認めるよ……それじゃ、よい旅を”
サトルは、風博士のメッセージを聞いて顔を上げ、くすりと笑いました。そして、窓の外を、ちらりと見ました。
“さぁ! それでは、たった今出たばかりのリリの新曲。夢の彼方に……”
「――リリ?」と、サトルは思わず、驚いて声を上げました。
広く果てない輝く空に
私は翼を広げ飛んでいく
そこは無幻の生命の世界
私は自由になって流れ星を探すの
願いを叶えてくれる私だけの宝物
悲しみを 笑顔に変える私だけの不思議な力
夢の彼方に あなたはいるの――
夢の彼方に 私はいるの――
けれど そこは遠く果てしない所
決して道はない
そう そこは遠い遠い所
でも 心の架け橋は いつまでも繋がっているの
わたしと
あなたと
――――
サトルは、リリの歌を聞きながら、
窓の外を覗き、もう決して行くことのないであろうドリーブランドが、なぜか自分のすぐ近くに、いつでもあるような気がするのでした。
いつでも、すぐにでも会いに行ける。
そう、夢の彼方に……。
サトルは、円盤ムシが飛び上がってから、ぐんぐんと小さくなっていくドリーブランドを、丸い窓から見つめていました。
冴えるようなグリーンの星が、宇宙の中のぽつんとした点になると、サトルは円盤ムシの部屋の隅っこで、膝に顔を埋めて座りました。
別に、なにが悲しいというわけではありませんでした。せっかく友達になった人達と別れるのは、つらいことでしたが、サトルは、もっと大きな所で、ぽっかりと心に穴が開いてしまったようでした。
ドリーブランドと、地球――。サトルはそう考えると、なぜかドリーブランドに残っていた方がよかったのではないか、と後悔に似た気持ちがするのでした。
地球に帰っても、サトルが本当に帰りたい、と願っていたままか、もしかすると、こんな所になんかいたくない、とがっかりしてしまうのか……。
サトルは、しかしいくら考えても、答えは出ませんでした。
(悲しみが多いところ……)と、確かリリは、そう言っていたように思いました。
そういえば、ドリーブランドで会った人達と、サトルの住む地球の人達は、見た目はそっくりでも、もっと大切な物が、大きく違っているように思いました。
サトルにはそれが、のど元まで出かかっていましたが、がんばってもそこまでで、決して言葉になって出てきませんでした。
パチン……。
サトルは、風博士からもらった機械のスイッチを、探るようにひねりました。
と、キューハハ……ハ……という耳障りな音が出て来たかと思うと、すぐに後から、女の人の声がしてきました――。
“ハァイ! こちら銀河放送局。今回もあなたに送るハートのメッセージ……”
“お送りするのは、あなたの恋人、DJエス……それではまず……”
“ドリーブランドの風博士より、メンタルレター……サトル君へ、私には君が流れ星に見える……いろいろあったが、私は君を異人ではなく、普通の人と――認めるよ……それじゃ、よい旅を”
サトルは、風博士のメッセージを聞いて顔を上げ、くすりと笑いました。そして、窓の外を、ちらりと見ました。
“さぁ! それでは、たった今出たばかりのリリの新曲。夢の彼方に……”
「――リリ?」と、サトルは思わず、驚いて声を上げました。
広く果てない輝く空に
私は翼を広げ飛んでいく
そこは無幻の生命の世界
私は自由になって流れ星を探すの
願いを叶えてくれる私だけの宝物
悲しみを 笑顔に変える私だけの不思議な力
夢の彼方に あなたはいるの――
夢の彼方に 私はいるの――
けれど そこは遠く果てしない所
決して道はない
そう そこは遠い遠い所
でも 心の架け橋は いつまでも繋がっているの
わたしと
あなたと
――――
サトルは、リリの歌を聞きながら、
窓の外を覗き、もう決して行くことのないであろうドリーブランドが、なぜか自分のすぐ近くに、いつでもあるような気がするのでした。
いつでも、すぐにでも会いに行ける。
そう、夢の彼方に……。