不思議そうな顔をしたおばあさんは、老婦人を見るとはっと息を飲んだ。そして、すぐに目を細めると、はにかむように笑みを浮かべて言った。
「あの方の妹さん、ですよね……」
ソラとウミは、隠れるようにそっと玄関の外に出た。
「はじめまして。亡くなった三浦の、妹です」と、老婦人が言ったとたん、出迎えてくれたおばあさんの目から、大粒の涙が音もなく流れ落ちた。「遺品の中にあったあなた宛の手紙を、お届けにまいりました――」
老婦人は、着物の胸にしまっていた手紙を、そっと取り出した。その目には、拭いたくても拭いきれないほどの涙が、さめざめと頬を伝い落ちていた。
二人が笑顔を浮かべるまで、兄妹はじっとその場を離れなかった。そして、誰も知らない話を、自慢げに二人に聞かせた。二人は、兄妹が知らない三浦少尉の話を、楽しげに話し合った。
「じゃあね、さようなら!」
ソラとウミはそろって言いながら、駆け足で家に帰っていった。もうとっくに日が暮れていた。
門の外に車を止めていた運転手が、手を振りながら駆けていく二人に気がつき、車の中から小さく手を振って呼びかけた。
「気をつけて帰るんだぞ」
と、ガラスのように透きとおった影が、おばあさんの家の屋根に止まった。バサバサッと翼を広げた影は、瞬きをするほどわずかの間、どんな空よりも濃い青色をした鳥の姿を、キラリと浮かび上がらせた。
おわり。そして、つづく――。