「あれ? ボス、ぜんぜん見当違いのところに出てきちまったみたいです」
と、黒いアスファルトの下からザップン――と、浮かび上がってきたのは、大きさこそ少し大きめのトラックほどだったが、どう見ても絵に描いたような黄色い潜水艦だった。
円筒形のような形をした胴体から、大きな帆を張ったように突きだしたハッチのドアが開き、中から出てきたのは、地下の空間でジロー達を追い詰めた四人組の一人だった。
周りの状況がすぐには飲みこめなかったのか、その場に集まっていた警官や機動隊員達の姿を確認すると、一瞬凍りついたように肩をすぼめた男は、あわててハッチのドアに手を掛け、大声で下にいる仲間達に言った。
「大変だ、ボス。速く逃げてください。警察に囲まれてます」
急いでハッチを閉めようとした男の手が、途中で止められた。
おびえた顔が見たのは、伊達の手から逃れて潜水艦に飛び移ったジローの、怒りに充ち満ちた形相だった。
「――おい、ラッパ。早くハッチを閉めて降りてこい。このまま地面に潜るぞ」
と、仲間達からボスと言われている男は、丸い舵を操作しながら、後ろに半分顔を向けて言った。
「ああ。早いところここから離れてくれ」
と、聞き覚えのない声が艦内に響き、潜水艦の中にいた三人が、ぞっと肩を脅かして振り向いた。
「――また会ったな」と、言って姿を現したのは、ラッパと呼ばれた男の襟首をつかみながら、ギロリとした目で一人一人の顔をうかがう、ジローだった。
「なんで、あんたがここにいるんだ」と、舵を持つ手を思わず離したボスが、驚いて言った。「――ラッパ、なんでこいつを中に入れたんだよ」
襟首をつかまれて歩かされていたラッパは、どんと突き放されてよろめき倒れ、ボスの手を取ってかろうじて立ち止まると、弱々しい声で言った。
「ごめんよ、ボス。またやっちまった」
「謝ったって遅いぜ――」と、ボスは舌打ちをすると、慌てたように言った。「なにしに来たんだ。おれ達は頼まれて、あんた達を追いかけただけなんだ」
「仕方なかったんだよ。わかるだろ」
と、ボスはジローに手を合わせながら言った。「――おれ達が悪かった。このとおり謝るから、見逃してくれ」
「見苦しいぞ」と、ジローは吐き捨てるように言った。「自分たちのやったことに、責任を持つんだ。おまえ達が何者かは知らないが、このままおれを連れて行ってくれないか」
「――」と、互いに顔を見合わせた男達は、声をそろえて言った。
「どこへ?」