「――ニンジン」と、後ろ向きに歩いていた叶方が、足を止めた。
「どうしたの」京卦が振り返ると、ビニール袋を下げた男が、目をまん丸くして立っていた。
「お、おう」と、ニンジンと呼ばれた男が、手を上げて言った。「――叶方、だったよな」
「久しぶりだね」と、叶方は元気よく言った。「まだ、あの公園で子供達と遊んでるの」
「前ほどじゃないけどな」と、はにかんだように笑った男が、確かめるように言った。
「目の錯覚だと思うけど、今って、空飛んでなかったか」
叶方と京卦は顔をつきあわせると、二人揃って首を振った。
「だよな」と、ニンジンはごめんごめんと言いながら、二人の横を通り過ぎていった。
「じゃあ、またね――」背中越しに手を振るニンジンに、叶方が言った。
「――誰なの」と、京卦が言った。
「ほんとかどうか知らないけど、探偵だってさ」
「なにそれ」ププッと、京卦が吹き出した。つられて笑った叶方が、京卦に言った。
「こっちじゃ、魔法使いの方が変だと思うよ」
京卦が、怒ったように頬を膨らませた。「早く行かないと、遅刻するわよ」
急ぎ足で歩いていく京卦を見て、叶方が思いだしたように言った。
「その髪、生まれつきなの」
わずかに考えていた京卦が、つまらなさそうに言った。
「おしゃれだけど、文句ある」
首をすくめた叶方が、京卦と並んで歩きながら言った。
「いいや、似合ってると思うよ――」
叶方は言うと、京卦を追い越して駆け出した。
「――あっ、ずるい」
京卦は、なんだかうれしそうに、叶方の後を追いかけていった。
おわり。
「どうしたの」京卦が振り返ると、ビニール袋を下げた男が、目をまん丸くして立っていた。
「お、おう」と、ニンジンと呼ばれた男が、手を上げて言った。「――叶方、だったよな」
「久しぶりだね」と、叶方は元気よく言った。「まだ、あの公園で子供達と遊んでるの」
「前ほどじゃないけどな」と、はにかんだように笑った男が、確かめるように言った。
「目の錯覚だと思うけど、今って、空飛んでなかったか」
叶方と京卦は顔をつきあわせると、二人揃って首を振った。
「だよな」と、ニンジンはごめんごめんと言いながら、二人の横を通り過ぎていった。
「じゃあ、またね――」背中越しに手を振るニンジンに、叶方が言った。
「――誰なの」と、京卦が言った。
「ほんとかどうか知らないけど、探偵だってさ」
「なにそれ」ププッと、京卦が吹き出した。つられて笑った叶方が、京卦に言った。
「こっちじゃ、魔法使いの方が変だと思うよ」
京卦が、怒ったように頬を膨らませた。「早く行かないと、遅刻するわよ」
急ぎ足で歩いていく京卦を見て、叶方が思いだしたように言った。
「その髪、生まれつきなの」
わずかに考えていた京卦が、つまらなさそうに言った。
「おしゃれだけど、文句ある」
首をすくめた叶方が、京卦と並んで歩きながら言った。
「いいや、似合ってると思うよ――」
叶方は言うと、京卦を追い越して駆け出した。
「――あっ、ずるい」
京卦は、なんだかうれしそうに、叶方の後を追いかけていった。
おわり。