ロト6がなかなか当たらない。
毎週2点買っている。
1点は自分かってに思いつくまま、そのときの気分しだいに、もう1点は機械ランダムまかせ、運まかせ。
当たったときのことは頭の中で何度もシミュレーションしている。
あとは当たるだけだ。
当たった場合、まず、当り券のコピーを5枚とる。
そのコピーを1枚は自宅保管、2枚目は職場保管。
残り3枚は、みずほ銀行に行くときに1枚は胸のポケット、2枚目はズボンのポケットにそれぞれ入れ、最後の1枚は靴の中に入れる。
なぜならば、次のような場合の対策である。
その日、私はみずほ銀行の窓口で受付嬢に言った。
私「ロト6の当り券もって来ました。」
受付「そうですか、ちょっとこの券お借りします。」
そう言って奥に消えた受付嬢は1分ほどのちに現われて、そして言った。
受付嬢「私さん、あのー、これ違うんですけど。」
私「えっ! 何が?」
受付嬢「これ、当ってないんです。」
と言って、この受付嬢は1枚の券を私の前に出した。
やられた、スリカエられた! 2億円がパーになる!
なんの対策をもしてなければここで終わり、ゲームオーバーだろう。
そして、わめき騒ぎ、ことが大きくなり逮捕されるかもしれない。
そんな馬鹿な、2億円ネコババされて、そのうえ刑務所だなんて。
しかし、私はちゃんとコピーをもっている、平然として言った。
私「そんなはずないから良く見て」と。
私と受付嬢のやりとりを見ていた支店長が出てきて、「とりあえず奥へ」ということになった。
支店長室に案内され、支店長と受付嬢と私の3人で話が始まる。
受付嬢は私の勘違いではないかと言う。私はそんなことはないと言う。
支店長は私のことをユスリ、タカリのような目で見ている。
私は、当り券のコピーを出した。
私「これを見てください、当り券のコピーです。これをもっていることが、私の勘違いでないことの証明です。」
テーブルにおいたコピーを支店長が手に取り、しげしげと見ていたが、支店長はコピーをビリビリと破いて、そばにあったシュレッダーに入れてしまった。
シュレッダーがグシャグシャと紙を食べるかのように音をたてている。
支店長「このコピーは何の証明にもなりませんよ。」と言ってニヤリとした。
しまった、支店長もグルだったのか。
私は、警察を呼ぶと言った。支店長たちはどうぞと言う。
私が警察署に電話をして、しばらくののちに1人の警察官が来た。
支店長が警察官に色々話をしている。ある程度の状況を知った警察官は私のそばに来て言った。
警察官「銀行のほうでは勘違いじゃないかと言っていますが、何か根拠でもあるんですか? それともユスリ、タカリですか。」
私「いやいや、そーじゃないんですよ。私がロト6の当り券をもって来たら、受付でスリカエられて、支店長室に連れてこられて、当り券のコピーを証拠に出したら、それをシュレッダーに入れられて、受付嬢と支店長はグルだったんですよ。」
警察官「最初から何の根拠もなく、ただ因縁つけているだけじゃないんですか? それとも何か証拠でもあるって言うんですか? 私さんヨォ!」
私「ありますよ、ここにコピーがもう1枚。」
私が2枚目のコピーを出すと、ムッとした警察官が言った。
警察官「私さん、これはただの紙切れですよ。」と言って、シュレッダーの中に入れてしまった。
ゲッ! ゲゲッ! 警察官もグルなのか、これはかなりやばい。
私はトイレに行き携帯から電話をした。
私「こちら先ほど電話をした、みずほ銀行でトラブッている私です。派遣されて来た警察官は、まっ先に依頼人の私の話を聞くべきところ、銀行支店長の説明を先に聞き、あげく私をユスリ、タカリのように扱い、証拠のものも隠滅しています。しかもここに来た警察官は1名です。すぐに別の警察官を応援に派遣してください。」
数分後、パトカーに乗って2名の警察官が現われた。
新たな2名の警察官に支店長が近づいて行くが、新たな警察官は相手にせず、トイレから出たばかりの私のもとへ来て「依頼人はあなたですね、私さん。」と言った。
私は、証拠のコピーを靴の中から出すと、ちょっと顔をそむけながらコピーを確認した新たな警察官は言った。
新たな警察官A「ほほぉー、これが2億円の当り券のコピーですか。」
そして、新たな警察官2名は、さらなる応援の警察官派遣を本署に依頼した。
さらなる応援の警察官十数名が銀行内を捜索して、受付嬢のバッグの中から当り券を発見した。
受付嬢と支店長と最初の警察官に手錠がはめられ、事件は解決した。
と、このような最悪の場合を考えて、当り券のコピーを取ることを忘れないように、いつも思っているのだが。
はてさて、コピーを取る状況が巡って来ない。
えっ! 自宅と職場のコピーですか?
それはもう用済みだから、シュレッダーにでも掛けてください。
掛けられない?
シミュレーションだから存在しない?
そーかな? そーだったかな?