彼女は額の「第三の眼」をターコイズのティアラで覆っていたので、奇跡的に銃弾は頭蓋骨で止まりましたが、先端が僅かに前頭葉に達して脳内出血を起こしました。
そのせいで意識が回復してからもずっと目が回った状態で、歩くコトが出来るまで快復するのには2週間を要しました。
その間、最初の3日間に闇っ子女子達は怒り狂って「壁を引き裂け!」運動を北京で展開し、この重機によって政府系建物の周りの壁を引き裂き、入り口にガレキの山を築いて使用不能にする運動は、全国的な広がりを見せました。
続いて起こった、北京での革命運動に共鳴する東北軍満洲派による「労働改造所」の解放運動は、「輝けるカルマの騎士」愛新覚羅傑が立ち上がったコトにより、命知らずのモンゴル人、満洲人、朝鮮人の古強者達が結集し、彼等に感化された若者達も加わって馬賊となり勢いを増して行きます。
この「労働改造所」の解放運動は、即座に西の果ての僻地アリとホータンに飛び火し、これはアメリカ-チベット-インドの共同戦線であるSFF(スペシャル-フロンティア-フォース)による本格的な軍事侵攻で、西の果てを守っていた人民解放軍は衛星兵器「神の杖」によって全員降伏させられました。
これには党(ドン)も度肝を抜かし、アリ-ホータン地区を占拠した革命軍の駆逐に最大勢力を注がざるを得ず、満洲での馬賊の勢を止めるコトは後回しにされました。
傑(ジェ)はこの機を捉え、勢力を拡散させつつ一気に北京へと軍を進めます。
これは既にドンに包囲されて兵糧攻めが行われていた、「北京中枢占拠運動」を助けるタメで、その作戦案が傑から流河に届けられたのは、ちょうど彼女が歩ける様になった頃とします。
流河は100万人強の革命軍が北京中枢を占拠し続ければ、ドンの軍隊との衝突は避けられず、その場合の悲惨な情景を思い描いていました。
これは彼女の計算通りで、国際世論に訴えられる学生や闇っ子達を「生み、育て、殺す」コトで、革命は成就するだろうと読んでいました。
しかし流河はこうした「惨」を避けられるかも知れない道を選択し、新たな「斬」の作戦を展開して行きます。