「水の未来」については既に語りましたので、あとはアマゾン-レビューを載せるに留めさせて貰います。
「持続可能な農業」を達成する上で、一番重要なのは石油よりも水を如何に確保するかで、既にアメリカとインドでは地下水が枯れてしまいそうです。
農業発祥の地メソポタミアでは「水争い」が戦争を起しており、中央アジアでもアラル海の水を使い果たしてしまいました。
しかし今回はこうした「水争い」とは無縁の、台湾での「持続可能な農業」について物語ると予告したので、よりシビアな話は次回に致します。
さて、2050年代の台湾農業に話を移しますと、そこではやはり後継者問題が一番「持続可能性」に関わって来ると思えます。
これは今でも問題になっており、台湾の若者の間でも農業は「キツイ、キタナイ、キケン」の3K産業と見なされており、後継者難に喘いでいます。
この3Kに対する見方は概ね正しくもあり、農業で生計を立てて行くのはキツイし、その利権的しがらみはキタナイと言え、現場で農薬散布などを行う仕事はキケンです。
台湾はとくに熱帯気候なので害虫対策が必要で、殺菌剤の百倍も強力な殺虫剤を散くので、マスクをしていてもリスクを伴います。
こうした既存農法の3K的な要素は、'50年代には概ね解決されているとします。
それは微生物環境を善玉に導く技術の向上により、農地の生態系が蘇って善玉の虫(肉食)が増えて害虫(草食)の大発生を抑えてくれ、雑草もクローバーなどの有用なモノにコントロールする技術が進んで、殺虫剤の百倍も強力な除草剤を散布する必要も無くなるからとします。
そうして農業はネガティブな産業から、若者を惹き付ける「ノベルティー産業」へと変身を遂げます。
これは最近ヨーロッパ農業が振興のために力を入れているアプローチで、ノベルティーとは「物語性」という意味です。
若者は仕事にロマンを求めるので、農業にはそれに答える「物語性」があってこそ、後継者問題は解決して「持続可能な農業」は達成されます。
台湾農業のノベルティーな面は、それが元々は対岸の福建省からもたらされた「アクアポリカルチャー」である点だと言えます。
これは湿原に暮らす民族特有の農業で、魚やウナギの養殖と、そのフンを利用した農業を一体化させたモノです。
台湾西岸は曾ては広大な湿原で、そこに大陸から渡って来た漢民族は、原住民にアクアポリカルチャーを伝えて共存共栄しました。
今でも西岸では魚やウナギの養殖が盛んですが、それはもう儲け一辺倒の殺伐とした産業になっており、フンは廃棄物で周りの環境を汚すばかりで、臭いも悪く若者を惹き付ける魅力はありません。
これをノベルティー産業として蘇らせる取り組みは、台湾原住民の間で「富の女神」と讃えらる楽須弥(ラクシュミー)が行い、原住民の暮らしを再現した体験型農場も開きます。
そこでは湿原の沼に葦の小舟で漁に向かい、ウナギや魚を小枝の網でワンサカ捕まえる体験が出来ます。
更には穴場の深さ100mはある淵で、最大3mもある巨大ナマズを捕まえる経験も持て、それは時価で数百万円にもなります。
体験者はいつか自分でも小舟を出して捕まえたいと思い、その気持ちが高じて湿原の部落に住み着く若者も出て来ます。