王力雄は社会ルポルタージュに優れた反体制作家(軟禁されてる)ですが、近未来小説も書いています。
「黄禍」は中国共産党が台湾に侵攻して米中核戦争になる話で、台湾も負けておらずスパイを核基地に潜入させて暴発させます。
中国の大都市はすべて壊滅して数億人の難民が溢れ出し、彼等は生き残る為には手段を選ばずに「黄禍」が世界を覆うストーリーです。
この小説はレビューで「エグすぎる」と批評されていますが、確かに性的な描写が多くてエグいです。
中国はポルノ小説を書くと捕まる国で、「どうせ共産党の崩壊を描いても捕まるんだから、ついでにもう1つのタブーも破ってやれ」と言った作者の気概が伝わって来ます。
このコラムは中国の「性事情」をとても詳しく解説していて、共産党がいかに「理想主義」かが分かります。
しかしこうした偏狭な理想主義は、往々にして弊害をもたらします。
それを見事に描いた映画としては「ショコラ」が挙げられ、こちらも少しストーリーを紹介します。
舞台はフランスの教会に縛られた保守的な田舎町で、そこに流れ付いたチョコレート職人の母と娘が迫害を受ける話です。
それは母子家庭で教会にも顔を出さないせいもありますが、彼女の作るチョコレートには特別な媚薬効果があり、その町は「性」には特に厳格だったからです。
そこに流れ者のジョニー・デップが加わり、圧倒的にカッコいい彼も男達から迫害されますが、二人は苦難を乗り越えて最後には結ばれます。
ストーリー的には単純ですが、この映画のテーマは「人は如何に欲望と向き合うべきか」で深く、主人公の女性も実に賢くて魅力的です。
対照的に「禁欲主義」は偏狭で愚かに描かれ、教会の教えは共産党の教えと全く同じです。
自由を縛るコトは、ある程度は必要なのかも知れませんが、それが余りにも強い「理想主義」による場合、人々は抗えずに洗脳されてしまいます。
それが本能的な「性」の抑圧となると、人々はエネルギーの捌け口を失ってしまい、戦争にそれを求めて中華文明は散華してしまいそうです。