きょうの朝日新聞に、以下のような記事が載っていた。
「政府は29日、日本の科学者を代表する組織『日本学術会議』のあり方を検討する有識者懇談会の初会合を開いた。学術会議を国の機関として残しつつ、会員選考に第三者の意見を反映させるのか。それとも、財政支援の見直しも含め、国から切り離す法人とするのか。政府は懇談会の議論などを通じ、学術会議側に迫る構えだ。」
(朝日新聞8月30日)
私がこんな記事についピクリと反応してしまうのは、ほかでもない、今の日本政府の学術行政に危惧の念を懐いているからである。ノーベル物理学賞の受賞者数が端的に示すように、今の日本の自然科学は国際社会で目も当てられないほど他国に後れをとっている。日本の学術のこういう衰退は、学術、ーー特にその基礎的分野への予算配分をケチる日本政府のやり方が元凶なのだ、ーーそう私は考えている。すぐに結果が出る先端的分野にしか目を向けないから、こういう様(ざま)になるのだ。
などと偉そうなことを書きながら、私は、自分の意見が矛盾していることに気づいている。学術は華々しい先端的分野ではなく、目立たない基礎的分野こそ重視すべきだ、ーーこう主張するとき、私は、「学問は、純粋な知的好奇心に基づいてなされるべき、国家社会とは無縁の知的探求である」と考えている。
分かりやすく言うなら、私が「かくあるべし」と考える学問のあり方は、NHKの朝ドラ「らんまん」に登場する主人公・槇野万太郎の植物学に対する取り組み方である。万太郎は、富や名声を求める心からではなく、ただ単に植物が好きだという、その私的関心に従って植物学を極めようとする。学問の原点とも言うべきそういう知的探究心をこそ、政府は大切にすべきだ、ーーそう私は言いたいのである。
他方、今の日本では自然科学が衰退著しい、と嘆き、危惧の念を懐くとき、私は学術を「国威発揚の手段」とみなしている。こういう学術観は、槇野万太郎の植物調査を「台湾統治の手段」にしようとする軍部の見方と通底するもので、邪道と言わなければならないのだが、これが私の頭の一部に根づいてしまっていることも、紛れもない事実なのである。
さて、冒頭に持ち出した「日本学術会議」の問題であるが、学術会議のメンバーが学術を、国家から独立した純粋な知的探求とみなしていることは想像に難くない。この問題を審議する「有識者懇談会」のメンバーは、こうした学者先生たちの学術観に理解を示しつつも、これとは矛盾する学術観ーー学術を「国家に奉仕すべきもの」と捉える政府側の見方ーーにも応えなければならない。「有識者懇談会」が結論を出すまでには、難航が予想される。
「政府は29日、日本の科学者を代表する組織『日本学術会議』のあり方を検討する有識者懇談会の初会合を開いた。学術会議を国の機関として残しつつ、会員選考に第三者の意見を反映させるのか。それとも、財政支援の見直しも含め、国から切り離す法人とするのか。政府は懇談会の議論などを通じ、学術会議側に迫る構えだ。」
(朝日新聞8月30日)
私がこんな記事についピクリと反応してしまうのは、ほかでもない、今の日本政府の学術行政に危惧の念を懐いているからである。ノーベル物理学賞の受賞者数が端的に示すように、今の日本の自然科学は国際社会で目も当てられないほど他国に後れをとっている。日本の学術のこういう衰退は、学術、ーー特にその基礎的分野への予算配分をケチる日本政府のやり方が元凶なのだ、ーーそう私は考えている。すぐに結果が出る先端的分野にしか目を向けないから、こういう様(ざま)になるのだ。
などと偉そうなことを書きながら、私は、自分の意見が矛盾していることに気づいている。学術は華々しい先端的分野ではなく、目立たない基礎的分野こそ重視すべきだ、ーーこう主張するとき、私は、「学問は、純粋な知的好奇心に基づいてなされるべき、国家社会とは無縁の知的探求である」と考えている。
分かりやすく言うなら、私が「かくあるべし」と考える学問のあり方は、NHKの朝ドラ「らんまん」に登場する主人公・槇野万太郎の植物学に対する取り組み方である。万太郎は、富や名声を求める心からではなく、ただ単に植物が好きだという、その私的関心に従って植物学を極めようとする。学問の原点とも言うべきそういう知的探究心をこそ、政府は大切にすべきだ、ーーそう私は言いたいのである。
他方、今の日本では自然科学が衰退著しい、と嘆き、危惧の念を懐くとき、私は学術を「国威発揚の手段」とみなしている。こういう学術観は、槇野万太郎の植物調査を「台湾統治の手段」にしようとする軍部の見方と通底するもので、邪道と言わなければならないのだが、これが私の頭の一部に根づいてしまっていることも、紛れもない事実なのである。
さて、冒頭に持ち出した「日本学術会議」の問題であるが、学術会議のメンバーが学術を、国家から独立した純粋な知的探求とみなしていることは想像に難くない。この問題を審議する「有識者懇談会」のメンバーは、こうした学者先生たちの学術観に理解を示しつつも、これとは矛盾する学術観ーー学術を「国家に奉仕すべきもの」と捉える政府側の見方ーーにも応えなければならない。「有識者懇談会」が結論を出すまでには、難航が予想される。
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