きょうは「日刊ゲンダイDIGITAL」に掲載された記事《山田昌弘氏に聞く少子化対策“失敗の本質”「最大の原因は未婚化。低収入の男性は選ばれない」》(3月6日配信)を取りあげる。
このインタビュー記事を掲載する理由について、「日刊ゲンダイDIGITAL」の編集部は次のように書いている。
「『異次元の少子化対策に挑戦する』──岸田首相がそう宣言してから2カ月。昨年の出生数が政府予測より8年早く80万人を切るのが確実となり、慌てて対策に乗り出したものの、具体策は先送り。予算倍増の財源もごまかす無責任だ。そもそも従来の対策に何が足りなかったのか。『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』の著書がある社会学者に『失敗の本質』を聞いた。」
はじめはこのインタビュー記事を私なりにまとめてお目にかけようと思っていたが、きょうはこれからデイサービスへ「出勤」しなければならず、あいにくその時間がない。仕方がないので主要な部分を抜粋して責を果たそうと思ったが、それも芸がないので、山田氏の発言の全文を私なりに噛み砕き、適宜補足しながら紹介することにした。
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岸田首相は「異次元の少子化対策に挑戦する」と大言壮語しましたが、岸田政権がやっていることは、これまでの延長線上で、「次元」は変わらず、とても「異次元」と言えるものではありません。
岸田政権が政策の対象として想定しているのは、「正社員同士の共働き世帯」であって、これは全体の約4分の1に過ぎません。共働き女性の大半はパートなど非正規雇用で、専業主婦世帯も含めるとこれが全体の約4分の3の世帯を占めますが、この4分の3の世帯には対策が行き渡らないのです。フリーランスの女性には育休制度の恩恵は届かず、「育休中のリスキリング」なんて雲の上の話という人もいました。
つまり、岸田政権が政策の対象として想定している女性像は、あくまでも大企業限定、大卒限定、大都市限定で、中小企業、地方、非正規で働く女性は、抜け落ちているのです。政策を練る政治家や官僚は恵まれている人たちだから、こういう人たちのことはあまり目に入らないのでしょう。
それに、岸田首相は肝心の高等教育の学資支援にも言及していませんが、現実はどうかというと、子育てにかかる最大の出費は大学や専門学校の学費なのです。こういった将来の出費への不安から出産を控える人は多いわけで、それこそが日本特有の重要な課題なのですが、岸田首相は、この現実に目を向けようとしないのです。
日本特有の現実ということで言いますと、日本を含む東アジアと欧米諸国では、子育てに関する意識が大きく異なります。欧米では18歳まで育てれば親はお役御免で、子どもは自立を求められます。一方、東アジアでは「子どもに惨めな思いをさせたくない」との意識が強いので、親が高等教育費を出すのは当然とされ、負担が重くなります。それどころか、卒業した後の面倒まで見ている親も多いのが現状です。
社会学者の宮台真司さん襲撃事件が好い例です。この事件の容疑者である41歳の無職男は、老親に年金保険料を払ってもらっていました。年金を受け取って暮らしている親が息子の掛け金を納めるなんて、欧米では考えられません。
米国では家賃を払わず実家に同居する30代の息子を親が提訴し、裁判所が退去を命じたケースもあるほどです。
「ドラえもん」も中国など東アジアでは大人気ですが、欧米での人気は低いのですよ。
なぜか。理由のひとつは、主人公・のび太の自立志向の弱さです。困ったことがあると、すぐドラえもんに頼り、それが自立を奨励する欧米社会では非難の対象になるのです。
これだけ意識が異なるのに、日本政府はスウェーデンやフランスの少子化対策を真似してきた。出産や子育ては、その国固有の文化や家族観に強く影響されます。いつまで経っても「西洋に追いつけ、追い越せ」では、空回りをするだけです。
問題は、より重要な未婚対策にも岸田首相が言及しないことです。日本が少子化に陥った最大の要因は、結婚しない人が増えていることです。これが最大の問題なのです。
(つづく)
このインタビュー記事を掲載する理由について、「日刊ゲンダイDIGITAL」の編集部は次のように書いている。
「『異次元の少子化対策に挑戦する』──岸田首相がそう宣言してから2カ月。昨年の出生数が政府予測より8年早く80万人を切るのが確実となり、慌てて対策に乗り出したものの、具体策は先送り。予算倍増の財源もごまかす無責任だ。そもそも従来の対策に何が足りなかったのか。『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』の著書がある社会学者に『失敗の本質』を聞いた。」
はじめはこのインタビュー記事を私なりにまとめてお目にかけようと思っていたが、きょうはこれからデイサービスへ「出勤」しなければならず、あいにくその時間がない。仕方がないので主要な部分を抜粋して責を果たそうと思ったが、それも芸がないので、山田氏の発言の全文を私なりに噛み砕き、適宜補足しながら紹介することにした。
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岸田首相は「異次元の少子化対策に挑戦する」と大言壮語しましたが、岸田政権がやっていることは、これまでの延長線上で、「次元」は変わらず、とても「異次元」と言えるものではありません。
岸田政権が政策の対象として想定しているのは、「正社員同士の共働き世帯」であって、これは全体の約4分の1に過ぎません。共働き女性の大半はパートなど非正規雇用で、専業主婦世帯も含めるとこれが全体の約4分の3の世帯を占めますが、この4分の3の世帯には対策が行き渡らないのです。フリーランスの女性には育休制度の恩恵は届かず、「育休中のリスキリング」なんて雲の上の話という人もいました。
つまり、岸田政権が政策の対象として想定している女性像は、あくまでも大企業限定、大卒限定、大都市限定で、中小企業、地方、非正規で働く女性は、抜け落ちているのです。政策を練る政治家や官僚は恵まれている人たちだから、こういう人たちのことはあまり目に入らないのでしょう。
それに、岸田首相は肝心の高等教育の学資支援にも言及していませんが、現実はどうかというと、子育てにかかる最大の出費は大学や専門学校の学費なのです。こういった将来の出費への不安から出産を控える人は多いわけで、それこそが日本特有の重要な課題なのですが、岸田首相は、この現実に目を向けようとしないのです。
日本特有の現実ということで言いますと、日本を含む東アジアと欧米諸国では、子育てに関する意識が大きく異なります。欧米では18歳まで育てれば親はお役御免で、子どもは自立を求められます。一方、東アジアでは「子どもに惨めな思いをさせたくない」との意識が強いので、親が高等教育費を出すのは当然とされ、負担が重くなります。それどころか、卒業した後の面倒まで見ている親も多いのが現状です。
社会学者の宮台真司さん襲撃事件が好い例です。この事件の容疑者である41歳の無職男は、老親に年金保険料を払ってもらっていました。年金を受け取って暮らしている親が息子の掛け金を納めるなんて、欧米では考えられません。
米国では家賃を払わず実家に同居する30代の息子を親が提訴し、裁判所が退去を命じたケースもあるほどです。
「ドラえもん」も中国など東アジアでは大人気ですが、欧米での人気は低いのですよ。
なぜか。理由のひとつは、主人公・のび太の自立志向の弱さです。困ったことがあると、すぐドラえもんに頼り、それが自立を奨励する欧米社会では非難の対象になるのです。
これだけ意識が異なるのに、日本政府はスウェーデンやフランスの少子化対策を真似してきた。出産や子育ては、その国固有の文化や家族観に強く影響されます。いつまで経っても「西洋に追いつけ、追い越せ」では、空回りをするだけです。
問題は、より重要な未婚対策にも岸田首相が言及しないことです。日本が少子化に陥った最大の要因は、結婚しない人が増えていることです。これが最大の問題なのです。
(つづく)
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