ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

稲田発言に読売新聞は

2017-06-30 12:03:03 | 日記
あまりにもお粗末。あまりにもレベルが低すぎて、論評に値しない。――な
どと書くと、なにかエラ〜い評論家先生にでもなった気分だが、呆れ果てて
書く気にもなれない、というのが正直なところである。

稲田防衛相の発言のことだ。かといって、このことについて何も言わないで
いると、このアホ大臣をかばって口をつぐんでいるのではないかと勘ぐられ
かねないので、この件についてふれる機会を待っていた。

ただ、これをどういう形で取り上げたら良いか、うまいアイデアが浮かばな
かったのである。巷にあふれる凡庸な批判なら、老生などがしゃしゃり出る
までもない。そう思っている。

きょうの読売新聞は、次のようなタイトルの社説を掲げている。

《稲田防衛相発言 政治的中立に疑念持たれるな》

私はこれを見て、稲田発言についてふれる好い機会が来たと思い、膝を打っ
た。あの読売新聞が――安倍政権の広報誌に成り下がった読売新聞が、安倍
首相の寵愛を受ける稲田女史――グッドルッキング(だったかも知れない)
稲田女史――の失言を、どういうふうに取り上げ、どういうふうに批判するの
か、あるいは擁護するのか、とくと吟味してみたいと思ったのである。

読売の社説は、次の一文から説き起こしている。

「あまりに軽率で、不適切な発言である。自衛隊の指揮官としての自覚を欠い
ている。」

激しく同意するしかない。読売が言うように、防衛相は公務員であり、公
務員であるからには、「公職選挙法で地位を利用した選挙運動を禁じられ
ている」。ごもっともな話で、認知症にはまだ縁がなさそうな現職の閣僚
が、そんなイロハのイも知らなかったのかと、唖然とするばかりだ。

イロハのイと言えば、読売新聞は防衛相経験者から、「自衛隊が政治的中立
であるのはイロハのイ。稲田氏の意識が低すぎる」との批判の声が出ている
ことを紹介している。自衛隊の側からしても、我が方に累が及びかねないこ
の発言は、迷惑千万な話なのだ。「実力組織として政治から一線を画し、抑
制的な振る舞いに徹する自衛隊員にも迷惑な話だろう」と読売は述べてい
る。

このように見ていくと、読売の社説には、自衛隊側の立場に立った批判の姿
勢が目立つ。自衛隊は国家の防衛を本務とするから、読売のこうした姿勢
は、突きつめれば、「稲田発言は国家の安全保障にとって障害になる」とい
う見解に結びつく。

「北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進み、尖閣諸島周辺では中国の挑発行為
が続く。7月中旬には、日米外務・防衛閣僚協議(2プラス2)も控えてい
る。
そうした中で、防衛相への批判が強まるのは、日本の安全保障にとって好ま
しいことではない。」

読売らしい、実にうまい論じ方である。「国家の安全保障のため」という大
義名分には、だれも反論できない。読売の社説は、この大義名分を持ち出し
て、その観点からアマゾネス稲田氏個人を批判し、安倍政権のあり方を批判
の俎上にのせているわけではない。この論じ方には(勘ぐれば)、安倍首相
の顔に泥を塗るまいとする底意が隠されていると読み取れなくもない。

問題は、読売の社説が「その先」を論じようとしないことである。稲田氏が
国家の安全保障にとって障害になる存在なら、このような人物は即座に罷免
すべきではないのか。また、このような人物を防衛相のポストに就けた安倍
首相の短慮と任命責任も問われるべきではないのか。

まあ、「その先」までの「あと一歩」へと踏み出せないところが、今のこの
新聞の有り様をよく象徴しているんだけれどね。
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