論語を現代語訳してみました。
学而 第一
《原文》
子禽問於子貢曰、夫子至於是邦也、必聞其政。求之與、抑與之與。子貢曰、夫子温良恭儉譲、以得之。夫子之求之也、其諸異乎人之求之與。
《翻訳》
子禽〔しきん〕 子貢〔しこう〕に問〔と〕いて曰〔い〕わく、夫子〔ふうし〕の是〔こ〕の邦〔くに〕に至〔いた〕るや、必ず其〔そ〕の政〔まつりごと〕を聞く。之〔これ〕を求めしや、抑〔そもそも〕 之に与〔あた〕えしや、と。子貢 曰〔い〕わく、夫子は温〔おん〕・良〔りょう〕・恭〔きょう〕・倹〔けん〕・譲〔じょう〕、以〔もっ〕て之を得〔え〕たり。夫子の之を求むるや、其〔そ〕れ諸〔こ〕れ人の之を求むるに異〔こと〕なるか、と。
子禽〔しきん〕 子貢〔しこう〕に問〔と〕いて曰〔い〕わく、夫子〔ふうし〕の是〔こ〕の邦〔くに〕に至〔いた〕るや、必ず其〔そ〕の政〔まつりごと〕を聞く。之〔これ〕を求めしや、抑〔そもそも〕 之に与〔あた〕えしや、と。子貢 曰〔い〕わく、夫子は温〔おん〕・良〔りょう〕・恭〔きょう〕・倹〔けん〕・譲〔じょう〕、以〔もっ〕て之を得〔え〕たり。夫子の之を求むるや、其〔そ〕れ諸〔こ〕れ人の之を求むるに異〔こと〕なるか、と。
《現代語訳》
さらに、お弟子さんである子禽さんが、生前中の孔先生のことについて、兄弟子である子貢さんに、次のことをお尋ねになりました。
先師(=孔子)が、旅の途中で訪れた国において、必ずといって、その国の君主〔くんしゅ〕であったり、政治家からのご相談がありましたが、それは、先師からお求めになられたのでしょうか。それとも、先方からお求めになられたのでしょうか、と。
子貢さんが、次のように答えられました。
先師は、五徳(温・良・恭・倹・譲)を備えられていたからこそ、先方からお求めになられたのだよ。
もし仮に、先師がお求めになられたとすれば、物欲しげでお求めになることはない。その国にとって、なにかしらの災い事を取り払うために、お求めになられていた、と。
〈つづく〉
※ 関連ブログ 夫子は温良恭倹譲
※ 五徳の「温」は温和、「良」は素直、「恭」は恭敬、「倹」は倹約、「譲」は謙譲。
※ 原文・翻訳の出典は、加地伸行大阪大学名誉教授の『論語 増補版 全訳註』より
※ 現代語訳については、同出典本と伊與田學氏の『論語 一日一言』から参考としている
※ 孔先生とは、孔子のことで、名は孔丘〔こうきゅう〕といい、子は、先生という意味
※ イラストは『かわいいフリー素材集 いらすとや』さんより