論語を現代語訳してみました。
泰伯 第八
《原文》
舜有臣五人、而天下治。武王曰、予有亂臣十人。孔子曰、才難。不其然乎。唐虞之際、於斯爲盛、有婦人焉九人而已。三分天下、有其二。以服事殷。周之徳、可謂至徳也已矣。
《翻訳》
舜〔しゅん〕に臣〔しん〕 五人〔ごにん〕 有〔あ〕りて、天下〔てんか〕 治〔おさ〕まる。武王〔ぶおう〕 曰〔い〕わく、予〔よ〕に乱臣〔らんしん〕 十人〔じゅうにん〕 有り、と。孔子 曰〔のたま〕わく、才〔さい〕 難〔かた〕し、と。其〔そ〕れ然〔しか〕らずや。唐〔とう〕 虞〔ぐ〕の際〔さい〕より、斯〔ここ〕に於〔お〕いて盛〔さか〕んなりと為〔な〕すも、婦人〔ふじん〕 有りて九人〔きゅうにん〕なるのみ。天下を三分〔さんぶ〕して、其の二〔に〕を有〔たも〕つ。以〔もっ〕て殷〔いん〕に服事〔ふくじ〕す。周〔しゅう〕の徳〔とく〕は、至徳〔しとく〕と謂〔い〕う可〔べ〕きのみ。
《現代語訳》
〈孔先生がその文〔ふみ〕の中から次の一文〔いちぶん〕を、お弟子さんたちに読み聞かせました。〉
舜〔しゅん〕に臣〔しん〕 五人〔ごにん〕 有〔あ〕りて、天下〔てんか〕 治〔おさ〕まる。武王〔ぶおう〕 曰〔い〕わく、予〔よ〕に乱臣〔らんしん〕 十人〔じゅうにん〕 有り、と。
これに対して先生が、次のように仰られました。
才の優れた臣下を得るというのは、なかなか難しいものだな、と。
〈そしてまた先生は、次の一文をお弟子さんたちに読み聞かせました。〉
其〔そ〕れ然〔しか〕らずや。唐〔とう〕 虞〔ぐ〕の際〔さい〕より、斯〔ここ〕に於〔お〕いて盛〔さか〕んなりと為〔な〕すも、婦人〔ふじん〕 有りて九人〔きゅうにん〕なるのみ。天下を三分〔さんぶ〕して、其の二〔に〕を有〔たも〕つ。以〔もっ〕て殷〔いん〕に服事〔ふくじ〕す。周〔しゅう〕の徳〔とく〕は、至徳〔しとく〕と謂〔い〕う可〔べ〕きのみ、と。
〈つづく〉
《雑感コーナー》 以上、ご覧いただき有難う御座います。
今回の語句の語訳については、文の中身とするものついては、翻訳通りにしてみました。
ちなみにその訳については、簡単に次のようにしてみました。
「舜には五人のすぐれた臣下がおり、天下はよく治まった。これについて周の武王は次のように仰った。私にはすぐれた臣下が十人いる」と。
「それもそのはずだ。唐・虞の時代から下って武王が治める盛んな世であったころ、女官を含めて九人のすぐれた臣下があった。そのころの周国は天下の三分の二を治めていながら、のこりの三分の一しか治めていない殷国に対して服従し、君臣の関係を重んじていたのだ。周国の徳性は、至徳といっても過言ではない」と。
ちなみに乱臣の「乱」については、一方から見れば「乱れ」、一方から見れば「治まる」といった相反する用法(反訓)により、「すぐれた臣下」と訳しています。
※ 孔先生とは、孔子のことで、名は孔丘〔こうきゅう〕といい、子は、先生という意味
※ 原文・翻訳の出典は、加地伸行大阪大学名誉教授の『論語 増補版 全訳註』より
※ 現代語訳は、同出典本と伊與田學先生の『論語 一日一言』を主として参考