和貴の『 以 和 為 貴 』

論語:泰伯第八 〔3〕 戦戦兢兢として、深淵に臨むが如く


論語を現代語訳してみました。



泰伯 第八

《原文》
曾子有疾。召門弟子曰、啓予足、啓予手。詩云、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰。而今而後、吾知免夫。小子。

《翻訳》
曾子〔そうし〕 疾〔やまい〕 有〔あ〕り。門弟子〔もんていし〕を召〔め〕して曰〔い〕わく、予〔よ〕が足〔あし〕を啓〔ひら〕け、予が手〔て〕を啓け。詩〔し〕に云〔い〕う、戦戦〔せんせん〕 兢兢〔きょうきょう〕として、深淵〔しんえん〕に臨〔のぞ〕むが如〔ごと〕く、薄冰〔はくひょう〕を履〔ふ〕むが如し、と。而今〔じこん〕 而後〔じご〕、吾〔われ〕 免〔まぬが〕るることを知〔し〕るかな。小子〔しょうし〕




《現代語訳》


曾先生(=曾参〔そうしん〕がいよいよ、最期のときを迎えようとした日、お弟子さんたちを呼びよせて、次のように仰られました。


わたしの足を見、次にわたしの手を見てみなさい。〈傷ひとつないであろう。〉

ある詩のなかで次のように歌われておる。「戦戦〔せんせん〕 兢兢〔きょうきょう〕として、深淵〔しんえん〕に臨〔のぞ〕むが如〔ごと〕く、薄冰〔はくひょう〕を履〔ふ〕むが如し」とな。

〈わたしはこの詩に従い、父母〔ちちはは〕から頂いたこの肉體〔にくたい〕を、絶対に傷つけてはならないとして、今日〔こんにち〕までに至ったのだ。そして私は最後のときを迎えようとしている。〉

これからはもう、そのような憂〔うれ〕いを伴〔ともな〕わなくてもすむのだ。なあ、お前たちよ…、と。


〈つづく〉



《雑感コーナー》 以上、ご覧いただき有難う御座います。

孔子の意志を引継いで、弟子たちに学問を教え、その傍らで『論語』をもまとめた曾子。そんな彼は孝行心にもすぐれ、『孝経』をもまとめたともいわれています。

そして、この語句をもって、曾子の最期のことばだった、とする内容にしてみました。

このことによって、曾子は弟子たちに対し、「自分の身体を大事にすることが、親孝行としてもっとも大切なことなんだよ。だからお前たちも、くれぐれも自分の身体を大切にし、父母を想うがごとく、いたわってやっておくれよ」とする最期のことばだったのかもしれません。

誰もみな 体は母の 形見なり 傷をつけなよ おのが体に
誰もみな 心は父の 形見なり 恥ずかしめなよ おのが心を

                                   松尾芭蕉



※ 関連ブログ 曾子疾あり
※ 孔先生とは、孔子のことで、名は孔丘〔こうきゅう〕といい、子は、先生という意味
※ 原文・翻訳の出典は、加地伸行大阪大学名誉教授の『論語 増補版 全訳註』より
※ 現代語訳は、同出典本と伊與田學先生の『論語 一日一言』を主として参考


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