柚子のがらくた箱

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夏の庭

2011年01月17日 | 
                   夏の庭        

                 著者     湯本香樹実さま


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 そんなにたくさんの思い出が、このふたりの中にしまってあるなんて驚きだった。
もしかすると、歳をとるのは楽しいことなのかもしれない。歳をとればとるほど、
思い出は増えるのだから。そしていつかその持ち主があとかたもなく消えてしまっても、
思い出は空気の中を漂い、雨に溶け、土に染みこんで、生き続けるとしたら ・・・・・
いろんなところを漂いながら、また別のだれかの心に、ちょっとしのびこんでみるかもしれない。
時々、初めての場所なのに、なぜか来たことがあると感じたりするのは、
遠い昔のだれかの思い出のいたずらなのだ。そう考えて、ぼくはなんだかうれしくなった。