どうも3月から4月にかけてのこの季節は苦手だ。
大学に通っていたころから、春めいてくると決まって憂鬱になる。
そうなると仕方なく部屋にこもり、兄から譲られたそれこそ安いレコードプレーヤー(もちろんスピーカーは手作りのごついやつ)でポール・サイモンのキャシーの歌(Kathy's Song)を聞くか、本を読むかしていた。
歌の内容は知らなくても、フィンガーピッキングで演奏されるこの静かな歌には、こころ引かれたものだ。
しかし、十分に歳だけを重ねてしまった今では、いじけた感性のもとで涙腺だけがやたらゆるくなっていくようだ。
中性脂肪は人一倍付いても、それは怠惰な生活を変える燃料にはなりえない。
「よし、もう一度がんばろうか」という気力もわいてこない。
濁った感受性と憂鬱、そんな毎日を繰り返している。
「こういう日には、この詩を。」と、久しぶりに茨城のり子詩集を取り出し、読んでみた。
やはり名作。
『自分の感受性くらい』にはガツンとやられてしまった。
「そうか、ばかものか。しからば、もう一度。」と自分に言い聞かせ、朝を迎えることにした。
自分の感受性くらい
茨木のりこ
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ
大学に通っていたころから、春めいてくると決まって憂鬱になる。
そうなると仕方なく部屋にこもり、兄から譲られたそれこそ安いレコードプレーヤー(もちろんスピーカーは手作りのごついやつ)でポール・サイモンのキャシーの歌(Kathy's Song)を聞くか、本を読むかしていた。
歌の内容は知らなくても、フィンガーピッキングで演奏されるこの静かな歌には、こころ引かれたものだ。
しかし、十分に歳だけを重ねてしまった今では、いじけた感性のもとで涙腺だけがやたらゆるくなっていくようだ。
中性脂肪は人一倍付いても、それは怠惰な生活を変える燃料にはなりえない。
「よし、もう一度がんばろうか」という気力もわいてこない。
濁った感受性と憂鬱、そんな毎日を繰り返している。
「こういう日には、この詩を。」と、久しぶりに茨城のり子詩集を取り出し、読んでみた。
やはり名作。
『自分の感受性くらい』にはガツンとやられてしまった。
「そうか、ばかものか。しからば、もう一度。」と自分に言い聞かせ、朝を迎えることにした。
自分の感受性くらい
茨木のりこ
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ
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