蒲生海岸は長浜の波打ち際。打ち上げられた魚が一匹。
*
七北田川が太平洋に注ぎ込む姿を見たさに長浜側に行った。河口には羽を休めるカモの群れ。しばし眺める。
太平洋側の砂浜を歩き出してすぐのこと。波打ち際に打ち上げられた魚が一匹。タチウオだ。体長は約1メートル。
「かわいそうな姿になって・・・」と思いつつ、カメラのファインダー越しに覗いて見たら、赤い背びれが波打っている。そう波打って、陽の光に輝いている。エラもかすかに動いているのだ。
「生きている!生きている!」
つい、嬉しくなってしまった。そして、静かに持ち上げて海に帰してやった。
「今宵は、海の底で静かに眠れ!!」
月夜の浜辺
中原中也 『在りし日の歌』
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向つてそれは抛(はふ)れず
浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁(し)み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
*
七北田川が太平洋に注ぎ込む姿を見たさに長浜側に行った。河口には羽を休めるカモの群れ。しばし眺める。
太平洋側の砂浜を歩き出してすぐのこと。波打ち際に打ち上げられた魚が一匹。タチウオだ。体長は約1メートル。
「かわいそうな姿になって・・・」と思いつつ、カメラのファインダー越しに覗いて見たら、赤い背びれが波打っている。そう波打って、陽の光に輝いている。エラもかすかに動いているのだ。
「生きている!生きている!」
つい、嬉しくなってしまった。そして、静かに持ち上げて海に帰してやった。
「今宵は、海の底で静かに眠れ!!」
月夜の浜辺
中原中也 『在りし日の歌』
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。
それを拾つて、役立てようと
僕は思つたわけでもないが
月に向つてそれは抛(はふ)れず
浪に向つてそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁(し)み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
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