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日米同盟を個人の従属または依存関係に置き換えて情緒的に評論する傾向がありますけれど、外交や同盟は本来的にはビジネスのようのドライに利害関係で考えるべきと思います。日米同盟は日本にとっては国防の根幹であり、米国にとっては安全保障と太平洋戦略の重要拠点だと思います。
日本にとって国防の根幹というのは、戦後ながらく自衛隊だけでは防衛能力の不足をどうすることもできない現実があったわけで、原状では中国の軍事的脅威が自衛隊の能力向上以上の速度で増していますから、まだまだ日本にとっても日米同盟は必要です。ますます重要性を増したと言ってもいいでしょう。
米国にとって日米同盟が安全保障というのは、米国の国家戦略として台頭を阻止すべき要監視国家が、露・中・日・独の4カ国ですから、日本を野放しにするよりは子飼いにした方が危険が減るということです。大東亜戦争を通じて、日本は良くも悪くもそれだけ高く評価されているということです。
米国の太平洋戦略というのは、仮想敵が露(ソ連)、中国であるわけですから、その敵に近く、米国から見て太平洋の対岸に位置する日本に、原子力空母を常駐でき、いつでも使える空軍基地があることは価値があります。事実として、朝鮮戦争やベトナム戦争でも米軍は日本からも出撃しました。
さらに言えば、米中が軍事的に対立するにあたっては日本が最前線の一翼になりますから、在日米軍基地の価値だけでなく、戦力向上しつつある自衛隊という面でも、日米同盟は米国にとっても重要です。北朝鮮ミサイルからのハワイ・グアム防衛(迎撃)でも自衛隊が一部を担当できます。
このように日米の利害が一致しているから日米同盟がこれほど長く続いているわけですし、これに情緒的に反発するのは少なくとも合理的ではありません。仮に日米同盟を打ち切るなら、日本の国防費は4倍必要との試算もありますし、この場合は米国をも敵に回すリスクを考えねばなりません。
しかし、日米同盟さえあれば安心ということではなく、日本の国家戦略も考えなければなりません。安保法案で野党が言う懸念以外にも、将来に中国系の米国大統領が登場したらどうなる?というようなリスクもあるでしょう。現に、米国務省には親中派が多いとされています。だから依存は危険です。
軍事力というのは外交交渉力に直結しますから、日米同盟堅持であっても自衛隊や日本の防衛産業の増強は意味があります。田母神さんが言うように日本に国産ステルス戦闘機の開発能力があることが、次世代ステルス戦闘機を米国から買うにしても価格交渉力になるわけです。
従って、日本が軍事力を増強することはあらゆる日米政府間交渉において日米間格差を解消する方向に働くでしょう。TPP交渉において、あれだけ甘利大臣が突っ張れるのも、日本の防衛力増強が効いてるのではないかと私は思っています。昔なら一方的に承諾させられていたのではないでしょうか。
だから、日米同盟は両国が合理的価値を見出す限り永続的にでも続ければいいわけです。ただ、その場合でも日本の防衛力増強(防衛産業も含めて)は日本の立場を向上させますし、なんらかの事情で日米同盟打ち切りという事態に直面した場合でもリスク回避につながります。