新規投稿 2020.08.16
新型コロナウイルス感染症の、春の第1波分について、日本とスペインを比較考察してみた。
《グラフの簡単な説明》
・起点を揃えるために両国の累積確定陽性者数が約270人のところで時間軸を合わせた。
・左軸は陽性者数または死者数の人数。右軸はスペイン/日本での倍率。ただし、右軸の倍率には両国の人口比(2.69倍)も加味してある。
《わかったこと》
(1) 陽性者数でいうと、感染爆発の立ち上がりで両国に70倍の差がついた。その後、日本の方がダラダラと長く増え続けたので、40倍差で落ち着いた。
(2) 死者数でいうと、立ち上がりで170倍差、その後80倍差で落ち着いた。ちなみに、両国の致死率は5月末時点でちょうど2倍差。
(3) 日本の日別確定陽性者数のピークから15日遡ると、3/31。感染者数急増を受けて、政府と有識者がバタバタし始めた頃。(=結果論で「4/7の緊急事態宣言は不要だった」と主張する一派の論拠にされた)
(4) スペインの日別確定陽性者数のピークから15日遡ると、3/6。この時点では3/14ロックダウン発令前で、日別陽性者が7日平均で750人に近くなっていたが、累積死者数はまだ数人。従って、スペインで感染拡大を止めたのは、ロックダウンでもなければ死者数急増でもない。「新規陽性者数1,500人/日」(←7日平均でなく、記録ベース)という報道ではなかっただろうか。(ただし、ピーク越え後の感染再拡大を阻止したのはロックダウンであろう。それは日本も同じ。)
(5) 陽性者増加率で比較すると、変動が大きいので確定的には言えないが、1以上の区間の平均を取ると日本が2.3倍/10日(38日間継続)、スペイン6.6倍/10日(31日間継続)となる。ここは印象よりも差が少なかった。ちなみに、(Sp 6.6^3.1)/(日 2.3^3.8)=14.65。つまり、人口比を無視して立ち上がりだけ比較すればスペインは日本の14.65倍。
(6) 前項の14.65倍に人口比2.69倍を加味すると、39倍。(1)項の70倍との違いは、感染拡大阻止の初動の差。市民が行動自粛に移ったのは、日本が新規陽性200人弱/日くらい、スペインは新規陽性1,500人/日くらい。
《まとめ》
(A) 感染拡大阻止の初動はロックダウン(または緊急事態宣言)ではなく、報道を通じた市民の行動変容であったと思われる。(詳細を省くが、これはイタリアも同じ)
(B) 初動での感染拡大阻止に重要なのは早期の行動変容。日本とスペインの比較で言えば、心配性の日本人の気質が有利に作用した可能性。
(C) 前記(5)項の、日本2.3倍/10日(38日間継続)、スペイン6.6倍/10日(31日間継続)の差が両国民の生活習慣または人種の差に起因する差分。漠然とした印象よりは小さい。
(D) 5月末時点での両国の致死率は、日本が5.29%、スペインが10.60%。ちょうど2倍。その理由については医療関係者に任せる。
《感想》
…というわけで、日本とスペインを死亡率(死者数/人口)で見ると70倍も違うのだけど、その要因を分解していくと、妙な珍説をひねり出さなくても勝利の方程式が見えてくるのである。
だけど、今回の7月の波については、経済的事情もあるのはわかるのだが、勝利の要因のひとつである前記(B)項を自ら放棄したのはちと残念。
以上。