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新コロシミュレーションと対策案

2020年07月31日 | 震災・災害
最終更新 2020.08.02



現在(2020.08.02)までの国内における新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況と非常によく整合する数値モデルができたので、これを用いてシミュレーションし、対策案を考える。


数値モデルによるシミュレーション


現在までの実績推移と、数値モデルによるシミュレーションを重ね合わせたのが次のグラフである。クリックで拡大表示する。


(クリックで拡大)


大枠の考え方としては、次のとおりである。

1)経済のon/offという捉え方で、offが緊急事態宣言相当、onが解除または通常状態とする。この時の実効再生産数Rtは、4月の波における感染拡大期の平均的な値Rt=1.42および収束期のRt=0.73を適用する。

2)厚労省等の「確定陽性者数」は用いず、架空の「真の感染者数」を用いる。その理由は、「確定陽性者数」は検査の網羅性に依存するからである。つまり、無症状者をどれだけ積極的に捕捉しにいくかで「真の感染者数」は同じでも「確定陽性者数」は変化してしまう。
ちなみに、4月の波における厚労省発表での「PCR検査陽性者」に占める「入院治療を要する者」の割合は、8割以上あるいはほとんど、といったところだが、7月の波においては25〜50%程度といったところである。

3)前項までの考え方に基づき、まずは適当に「真の新規感染者数」をおいて(結果的にそれは3/1時点で580人となった)、そこに適当に入院率、重症化率、致死率を当てはめて試行錯誤し、実績推移と整合するパラメータの組み合わせを探り出した。ただし、「真の感染者数」そのものはグラフ上には表示していない。なお、細かい条件は図の下部に書いた。

4)以下の記事に合わせて、致死率を0.6%とする。(ここは8/2改版)

新型コロナの致死率、解明に近づく研究者たち
https://jp.wsj.com/articles/SB10636974917111804565304586520872455773108
- 大半の研究では致死率0.5~1.0%
- ロンドン大学ティモシー・ラッセル氏らはDP号と中国のデータを研究し、致死率を約0.6%と算出
- インペリアル・カレッジ・ロンドンのルーシー・オケル氏ら、中国の感染致死率は0.66%と推定



そこでわかったのは次のような点である。

① 4月の波の感染拡大期には増加率は変動していたが、上図のようにマクロに見ればRt=1.42で安定的に感染拡大していたように見える。そして、今回の7月の波においてもそれは同じである。

② 6月を境に、重症化率と致死率が大きく変化している。具体的には、重症化率が1/4、致死率が1/10に低下したとすると、実績推移とよく整合する。これが巷で言われている「弱毒化」の正体であろうと思われる。その理由については専門家に委ねることとし、ここでは触れない。(上記4項の致死率0.6%は、6月以前の値とする)


なお、上図のグラフにおいては「8月3日から末日まで自粛期間」=off、とおいた。東京都の方針を全国に拡大した、という想定での作図である。



シミュレーションに基づく対策案


まず最初は、なんの対策もしないとすれば(政府も自治体も市民も)どうなるか。


(クリックで拡大)

現状では、重症者数と死者数は抑えられているように見えるが、タイムラグの後に急増することが見込まれる。実際には前項の対数グラフでわかるようにRt=1.42(=増加率 2倍/10日)での指数関数的増加が既に始まっている。

また、図中に示してあるが、入院者数の数倍いるであろう「無症状+軽い軽症者」(=自発的に病院に来ない感染者)の爆発的増加を放置していては、感染拡大は止められないと思われる。ここを減らす対策が必要。



次は対策としてのA案である。3週間のoff(緊急事態宣言相当)と2週間のon(解除相当)を反復していくと、感染者数や入院者数等を漸減し、収束できる。


(クリックで拡大)

私のオススメはこのA案である。図中にも書いたように、最初から決まったスケジュールで実施されるならば、経済活動とも親和性が高い。いつ始まるかわからず、どこまで延長されるかも読みづらい「自粛要請」では事業の計画が立てられない。それは事業者にとっても客にとっても同じであろう。

また、入院者数の数倍いるはずの「無症状+軽い軽症者」の大半がoffの間に感染力を失うことが期待できる。

対策を打つなら、病床逼迫など追い詰められてからでは遅すぎる。相手は指数関数的爆発をする感染症であり、また対処してから反応するまで(入院者数なら感染から3〜4週間程度)のタイムラグがあり、指標を見ながらの逐次対処よりも定常的反復対処の方が適している。

このA案のような反復対処であれば、指標は微増あるいは漸減に抑えられ、追加で別の処置を必要とするとしても実施までの時間的余裕を得られる。



次のB案は、長めのoff(緊急事態宣言相当)一発で収めようとする場合である。


(クリックで拡大)

水際対策、クラスター対策、接触アプリの活用等、併用する手段は他にもあるとは思うが、少なくとも数値モデル上では長めのoff一発では制圧できない。10週間にもわたる(現実的には不可能であろう)長いoffの後ですら、再び感染拡大するというのがこのシミュレーション結果である。したがって、一発で収めようという発想は捨てた方が良い。



次のC案は少し変則的で、まず4週間のoff(東京都が8月いっぱいを自粛期間にする方針と整合)を実施した後に、2週間毎のonとoffを反復するパターンである。


(クリックで拡大)

見てわかるように、4週off→2週毎on/offでは収束できない。しかし、入院者数その他の指標を見ながら適宜4週offを挟んで行けば、長期にわたって安定的制御が可能である。いずれはワクチン等の医学的大成果を期待できるとすれば、このC案もありだと考える。



補足事項


(1) グラフの下部に入院率/重症化率/致死率等の数字を挙げてあるが、これは実績推移と整合する値を求めたものであって医学的に判明した(あるいは、する)数字とは必ずしも一致しない。例えば、一般には、致死率=死者数/確定陽性者総数であるが、この考察での致死率とは架空の「真の感染者数」を分母にしたものである。「真の感染者数」は確定陽性者総数よりずっと多い。

(2) 重症者は30日で退院、としてあるが、医学的実績でいえば「人工呼吸器装着から離脱まで9日、死亡までは10日」(EARL先生)だそうである。なのになぜ30日にしているかというと、実績推移に合致させるためである。恐らくは、実際の重症者は重症化までの期間にもばらつきがあるはずだが、私のシミュレーションでは一律のタイムラグにしてあるため。したがって、ばらつきも考慮するなら、重症者の入院期間(重症者扱いの期間)を実績と同じく10日にした上で、重症化率を3倍にするともっと実態に近くなるのだろうと今は勝手に想像している。

(3) 8/2の更新で、6/1以前の致死率を0.6%(WSJ)とした。その関係で、「真の感染者数」に対する入院率は9%とした。したがって、未捕捉の感染者は入院者数の約10倍いるということになる。ちなみに、6月末での統計上の致死率は5.2%(国内)であった。これはつまり、致死率0.6%(WSJ)との比率で考えると、6月以前は「真の感染者数」の約11.5%しか捕捉できていなかったことになる。なお、4月の感染拡大期において、厚労省発表での「PCR検査陽性者」に占める「入院治療を要する者」の割合は、8割以上あるいはほとんど、といったところなので、「真の感染者数の11.5%を捕捉し、9%が入院」であれば、話は整合的である。

(4) 「真の感染者数」に対する入院率/重症化率/致死率等の数字に関する妥当性については、異論もあるとは思うが、この考察においてはそこは本質ではない。実績推移と整合するパラメータの組み合わせが見つかり、その結果、ある程度未来予測できるようになったことが本質である。必要だったパラメータは極めてシンプルである。「感染拡大期:Rt=1.42」「感染収束期:Rt=0.73」「入院率/重症化率/致死率の比率」「6/1以降は重症化率が1/4、致死率が1/10に低下」「on/off」、これだけである。
ちなみに、「入院率/重症化率/致死率」は比率を保ったまま上下する分には同じシミュレーション結果が得られる。その場合、「無症状+軽い軽症者」が反比例して上下することになる。ただし、「致死率0.6%(WSJ)」が事実であれば、もはやパラメータを動かす余地はあまりないかもしれない。


何か気付いたら、またあとで書き足す。





以上。



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